2050年のカーボンニュートラル実現に向け、建物の省エネ性能向上が急務となっています。特にエネルギー消費の大きい大規模建築物のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化は、脱炭素社会への移行における重要な鍵です。この記事では、経済産業省が主導する「令和7年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業」について、その目的、対象者、申請のポイントを専門家の視点から詳しく解説します。
令和7年度 ZEB実証事業の概要
本事業は、ZEB設計ノウハウがまだ確立されていない民間の大規模建築物を対象に、先進技術を組み合わせたZEB化を支援するものです。これにより、設計ノウハウや運用実績を蓄積・公開し、今後のZEB普及を加速させることを目的としています。
項目 | 内容 |
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事業名 | 令和7年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業 |
実施機関 | 経済産業省 資源エネルギー庁 (執行団体:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)) |
対象事業者 | 民間の大規模建築物の所有者等(地方公共団体は対象外) |
対象建築物 | 【新築】延べ面積10,000㎡以上 【既存】延べ面積2,000㎡以上 |
補助対象経費 | 設計費、設備費、工事費などZEB化に要する費用の一部 |
補助率・補助額 | 補助対象経費の2/3以内など(公募要領で詳細が発表されます) |
公募期間(予定) | 未定(公式サイトにて発表予定) |
事業の目的と社会的背景
政府は「2030年度以降に新築される建築物についてZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」という高い目標を掲げています。しかし、特に延べ面積10,000㎡を超える大規模建築物では、パッシブ技術の利用難度や搬送動力の課題からZEB Readyの実現さえも難しく、認証事例が少ないのが現状です。
本事業は、この課題を克服するため、先進的な技術を導入する大規模ZEB建築の実証を支援し、その知見(掛かり増し費用、設計ノウハウ、運用実績など)を広く共有することで、社会全体のZEB化を推進することを目的としています。
補助対象となる事業者と建築物
対象となる建築物の要件
本事業の対象となるのは、以下の要件を満たす民間の建築物です。
- 新築建築物:延べ面積が 10,000㎡以上
- 既存建築物:延べ面積が 2,000㎡以上の改修
【重要】補助対象外となる建築物
本事業は環境省の関連事業との連携で行われます。そのため、以下の建築物は本事業の補助対象外となりますので、十分にご注意ください。
- 地方公共団体(地方独立行政法人、公営企業を含む)が所有する建築物
- 環境省が実施する「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」の対象となる建築物(例:延べ面積2,000㎡未満の業務用建築物など)
※詳細は環境省事業の執行団体(一般社団法人静岡県環境資源協会)へお問い合わせください。
申請から交付までの流れ(想定)
公募開始前のため、一般的な流れを想定して記載します。実際の申請にあたっては、必ず公開される公募要領をご確認ください。
- 1公募要領の確認・ZEBプランナーとの連携
- 2事業計画書・必要書類の準備
- 3電子申請システムによる申請
- 4審査委員会による審査
- 5交付決定・事業開始
- 6事業完了・実績報告書の提出
- 7補助金額の確定・支払い
申請のポイント:ZEBプランナーとの連携が成功の鍵
ZEBの実現には、建築設計、設備設計、省エネ計算など高度な専門知識が不可欠です。本事業の申請においても、SIIに登録された「ZEBプランナー」との連携が極めて重要となります。事業計画の初期段階から信頼できるZEBプランナーに相談し、実現性の高い計画を策定することが採択への近道です。
まとめ
「令和7年度 ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業」は、大規模建築物の脱炭素化を目指す事業者にとって、大きなチャンスとなる補助金です。補助額が大きい一方で、専門的な知見が求められるため、早期の情報収集とZEBプランナーとの連携が成功の鍵を握ります。公募開始に向けて、自社の建築物が対象となるかを確認し、準備を進めていきましょう。
お問い合わせ先
一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) ZEB担当
電話番号: 03-5565-4063
受付時間: 平日10:00~12:00、13:00~17:00
※お問い合わせの前に、公式サイトの公募要領および「よくあるご質問」を必ずご確認ください。