【速報】令和7年度 経済産業省 原子力関連支援事業
2050年カーボンニュートラル達成と、半導体工場やデータセンター需要増による電力需要の増加。この二つの大きな課題に対応するため、政府はGX(グリーン・トランスフォーメーション)戦略の中核として原子力の活用を強力に推進しています。経済産業省 資源エネルギー庁が発表した令和7年度概算要求では、次世代革新炉の開発からサプライチェーン強化まで、民間事業者が活用できる大規模な支援策が盛り込まれました。本記事では、その中でも特に注目すべき3つの支援事業を徹底解説します。
事業概要一覧
事業名 | 令和7年度 概算要求額 | 主な対象者 | 支援形態 |
---|---|---|---|
次世代革新炉の研究開発支援事業 | 829億円 | 民間事業者等 | 委託 |
原子力の安全性向上・革新的技術開発支援事業 | 33億円 | 民間事業者、研究機関等 | 補助、委託 |
原子力産業基盤強化事業 | 33億円 | サプライチェーン関連企業等 | 補助、委託 |
1. 次世代革新炉の研究開発支援事業(高速炉・高温ガス炉)
脱炭素社会の実現とエネルギー安定供給の切り札として期待される「次世代革新炉」。その実用化に向けた研究開発を国が強力に後押しする、国家レベルのプロジェクトです。
ポイント:超大型予算で未来のエネルギーを創る
令和7年度の要求額は829億円、さらに複数年度にわたる国庫債務負担行為要求額は1,152億円に上ります。国の本気度がうかがえる規模であり、関連技術を持つ企業にとっては非常に大きなビジネスチャンスとなります。
支援内容
本事業は、主に2つの革新炉開発を支援します。
- 高速炉実証炉開発事業: 資源の有効利用や高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減に貢献する高速炉の実証炉開発。概念設計や研究開発、国際連携(日米・日仏)を活用した効率的な開発を支援します。
- 高温ガス炉実証炉開発事業: 鉄鋼や化学産業の脱炭素化に不可欠な「水素」を安価かつ大量に製造できる可能性がある高温ガス炉の開発。HTTR(高温工学試験研究炉)を活用した水素製造試験や、実証炉の設計等を支援します。
対象者
高速炉・高温ガス炉に関する高度な技術や知見を持つ民間事業者、研究機関などが対象となります。委託事業として実施されるため、国の仕様に基づいた研究開発を担うことになります。
2. 原子力の安全性向上・革新的技術開発支援事業
既存の軽水炉のさらなる安全性向上や、再生可能エネルギーとの共存など、新たな時代の要請に応えるための革新的な技術開発を幅広く支援する事業です。
ポイント:多様な技術シーズが対象となる補助事業
令和7年度の要求額は33億円。補助事業が中心のため、民間企業が主体となった自由な発想での技術開発提案が可能です。補助率は事業内容により1/2、2/3、3/4、定額と手厚い支援が設定されています。
支援内容
- 安全性向上に資する技術開発: 過酷事故時に損傷しにくい「事故耐性燃料」の開発、長期運転に向けた「高経年化対策」技術、新たな安全メカニズムを組み込んだ「革新軽水炉」に関する技術開発などを支援します。
- 社会的要請に応える革新的技術開発: SMR(小型モジュール炉)など、多様な社会的要請に応える原子力技術のフィージビリティスタディや開発、イノベーションに必要な共通基盤技術の開発を支援します。
3. 原子力産業基盤強化事業
原子力の安全・安定利用を足元から支えるサプライチェーン全体の維持・強化と、次世代を担う人材の育成を目的とした事業です。特に、優れた技術を持つ中小企業にとって大きなチャンスとなります。
ポイント:サプライヤー支援と人材育成を一体的に推進
令和7年度の要求額は33億円、複数年度の国庫債務負担行為要求額は47億円。サプライチェーンの技術開発、事業承継、デジタル化から人材育成まで、幅広い取り組みを支援します。補助率は1/2、定額などが想定されています。
支援内容
- サプライチェーン強化: 原子力関連機器・サービスの信頼性向上に資する技術開発、事業撤退を余儀なくされる事業の継承、製造プロセスのデジタル化(技能継承など)を支援します。
- 原子力人材の育成支援: 現場技術者の技能向上や事故対応能力強化のための講義・実習など、産業の未来を支える人材育成プログラムを支援します。
申請に向けたステップ
- 公募情報の確認
経済産業省や資源エネルギー庁、関連執行団体(NEDOなど)のウェブサイトで公募開始情報を定期的にチェックします。 - 公募要領の熟読
公募が開始されたら、公募要領を精読し、自社の技術や事業が対象となるか、申請要件を満たしているかを確認します。 - 事業計画書の作成
事業の目的、技術的な優位性、実施体制、資金計画などを具体的かつ説得力のある事業計画書としてまとめます。 - 電子申請
多くの場合、政府の補助金申請システム「jGrants」等を利用した電子申請となります。事前にアカウント(GビズID)を取得しておくとスムーズです。
ご注意ください
本記事の情報は、令和7年度概算要求時点のものです。実際の公募内容、スケジュール、予算額は変更される可能性があります。必ず公募開始後に公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。また、専門性の高い事業であるため、申請にあたっては専門家への相談もご検討ください。
まとめ
今回ご紹介した経済産業省の原子力関連支援事業は、GX時代の新たなエネルギー政策を支える重要な取り組みです。次世代革新炉という壮大なプロジェクトから、既存技術の安全性向上、サプライチェーンの足腰を鍛える支援まで、多岐にわたるメニューが用意されています。自社の技術力や事業戦略と合致する事業を見つけ、積極的に活用を検討してみてはいかがでしょうか。