海外での模倣品被害や、商標の不正出願(冒認出願)、権利侵害の警告など、知的財産に関するトラブルでお悩みの中小企業様へ。日本貿易振興機構(ジェトロ)が実施する「中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外侵害対策支援事業)」は、そんな海外での知財リスク対策を強力にサポートする制度です。本記事では、この補助金の3つの支援メニューについて、対象者、補助額、申請方法などを分かりやすく解説します。
JETRO海外侵害対策支援補助金とは?
本補助金は、中小企業が海外で直面する知的財産権の侵害問題に対し、その対策にかかる費用の一部を補助する制度です。海外ビジネスを展開する上で避けては通れない模倣品や権利侵害のリスクに対し、専門家の力を借りながら戦略的に対抗するための経済的支援を行います。事業内容に応じて、以下の3つの支援事業が用意されています。
- ① 模倣品対策支援事業:海外での模倣品・海賊版の調査や摘発を支援
- ② 防衛型侵害対策支援事業:海外現地企業から権利侵害で警告・提訴された場合の対抗措置を支援
- ③ 冒認商標無効・取消係争支援事業:第三者に不正に先取りされた商標の無効・取消手続きを支援
補助金の基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
補助額 | ①最大400万円 / ②③最大500万円 |
補助率 | 補助対象経費の2/3以内 |
申請期間(令和7年度) | 令和7年4月21日~(予算上限に達し次第終了) |
実施機関 | 日本貿易振興機構(ジェトロ) |
対象者 | 海外で知財侵害の被害を受けている中小企業者等 |
3つの支援事業の詳細
① 模倣品対策支援事業
海外での模倣品・海賊版による被害に対し、調査から摘発までの一連の対策費用を支援します。支援方式は2種類あります。
- サポート型:ジェトロが調査会社等との契約主体となり、費用を立て替えて支援する方式。事業者は後から自己負担分(1/3)を支払います。
- セルフ型:事業者が自ら選定した調査会社等と契約し、かかった費用の一部(2/3)を後から間接補助金として受け取る方式。
補助対象経費の例
- 侵害疑義品の販売・流通・製造状況の調査費用
- サンプル購入、鑑定、公証調査費用
- 権利侵害者への警告状作成・送付費用
- 行政機関・警察等による行政・刑事摘発、取締り費用
- 侵害ウェブサイトの削除申請費用
- 税関登録および差止請求費用
② 防衛型侵害対策支援事業
海外の現地企業から「権利を侵害している」との警告を受けたり、訴訟を起こされたりした場合の防御・対抗措置にかかる費用を支援します。不当な権利行使から自社事業を守るための補助金です。
補助対象経費の例
- 弁護士・弁理士への相談費用、代理人費用
- 鑑定費用、証拠収集費用
- 訴訟・審判等にかかる手続き費用
③ 冒認商標無効・取消係争支援事業
自社の商標やブランド名が、海外で悪意のある第三者に先取りして出願・登録されてしまった(冒認出願)場合に、その商標権を取り消すための係争費用を支援します。
補助対象経費の例
- 冒認商標に対する異議申立、無効審判、取消審判の請求費用
- 上記手続きに要する弁護士・弁理士等の代理人費用
補助対象者の要件
本補助金の対象となるのは、中小企業基本法に定められた「中小企業者」です。業種ごとに資本金と従業員数の要件が定められています。
業種分類 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
---|---|---|
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
【重要】「みなし大企業」は対象外です
中小企業の定義を満たしていても、以下のいずれかに該当する「みなし大企業」は補助対象外となりますのでご注意ください。
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額の1/2以上を同一の大企業が所有している
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2/3以上を複数の大企業が所有している
- 大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の1/2以上を占めている
- 資本金5億円以上の法人に100%の株式を保有されている
- 直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える
申請から支援までの流れ
申請手続きは、以下のステップで進みます。特に、申請前のジェトロとの面談が必須となっている点が特徴です。
- STEP 1: ジェトロへの事前相談・面談
まずはジェトロの担当者に連絡し、支援を希望する内容について相談し、面談の機会を設けます。 - STEP 2: 申請書類の準備・提出
事業計画や被害状況を証明する資料、見積書など、指定された様式と添付書類を準備し、提出します。 - STEP 3: 審査・選定
ジェトロ及び特許庁にて、申請内容の妥当性や事業の有効性などが審査され、支援対象企業が選定されます。 - STEP 4: 交付決定・契約
支援対象として決定されると、交付決定通知が届きます。その後、ジェトロや調査会社等と契約を締結します。 - STEP 5: 対策事業の実施
契約に基づき、海外での調査や警告、係争活動などを開始します。 - STEP 6: 実績報告・精算
事業完了後、実績報告書と経費の証拠書類を提出し、審査を経て補助金額が確定・支払われます。(サポート型の場合は自己負担分を支払います)
まとめとお問い合わせ
JETROの海外侵害対策支援事業は、海外での知的財産トラブルという経営リスクに立ち向かう中小企業にとって、非常に心強い制度です。専門的な知識が必要な分野だからこそ、このような公的支援を積極的に活用し、自社の貴重なブランドや技術を守り抜きましょう。
まずは自社の状況が支援対象になるか、ジェトロに相談することから始めてみてはいかがでしょうか。
本補助金に関するお問い合わせ先
日本貿易振興機構(ジェトロ)知的財産課
〒107-6006 東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル6F
Tel:03-3582-5198
E-mail:SHINGAI@jetro.go.jp