再生可能エネルギーの導入拡大に不可欠な「系統用蓄電池」。その導入を後押しする国の補助金に注目が集まっています。本記事では、「令和5年度 系統用蓄電池等導入支援および実証支援事業」の概要を振り返るとともに、2024年以降の市場動向や関連する補助金、そして事業を成功させるための重要なポイントを専門家の視点で分かりやすく解説します。
令和5年度 系統用蓄電池等導入支援事業とは?【公募終了】
【ご注意】
本事業の公募は、2023年9月29日をもってすべて終了しています。本記事では、今後の動向を予測するための参考情報として概要を解説します。
「令和5年度 系統用蓄電池等導入支援および実証支援事業」は、経済産業省の管轄のもと、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が執行した補助金事業です。再生可能エネルギーの導入を加速させるため、電力系統に直接接続する大規模な蓄電池システム(系統用蓄電池)の導入を支援することを目的としていました。
事業概要まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
事業名 | 令和5年度 系統用蓄電池等導入支援および実証支援事業 |
実施団体 | 一般社団法人 環境共創イニシアチブ (SII) |
公募期間 | 2023年9月29日にて公募終了 |
目的 | 再生可能エネルギーの出力変動調整や余剰電力の有効活用を通じて、再エネ導入を加速させること |
対象者 | 系統用蓄電池を導入・運用する民間事業者等 |
公式サイト | https://sii.or.jp/chikudenchi05/ |
なぜ今、系統用蓄電池が注目されるのか?
脱炭素社会の実現に向け、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入が急務となっています。しかし、これらの電源は天候によって発電量が大きく変動するという課題があります。そこで重要な役割を果たすのが系統用蓄電池です。
- 電力の安定化:発電量が多すぎる時に電気を貯め、足りない時に供給することで、電力の需給バランスを安定させます。
- 余剰電力の活用:晴天時などに余ってしまい、本来捨てられるはずだった電力を有効活用できます。
- 新たなビジネス創出:電力を安価な時に充電し、高価な時に放電することで収益を得る「アービトラージ取引」など、新たな電力ビジネスが生まれています。
国や自治体もこの重要性を認識しており、2022年以降、国と東京都だけで合計400億円以上の補助金交付が決定されるなど、積極的な導入支援が行われています。
【重要】2024年以降の市場環境と補助金の動向
令和5年度の事業は終了しましたが、系統用蓄電池への投資機会は今後も続くと予想されます。特に2024年以降は、事業の収益性を判断するための重要な市場環境が整い始めます。
2024年以降の主要な市場変化
- 需給調整市場の全メニュー開設(2024年4月〜):これまで未開設だったメニューが始まり、応答速度の速い蓄電池が活躍できる場が拡大。実際の取引価格や運用状況を基にした、より精緻な投資判断が可能になります。
- 容量市場の運用開始(2024年4月〜):電力の供給能力(キャパシティ)を取引する市場が本格始動。蓄電池も供給力として対価を得られるようになり、収益源の多様化が期待されます。
- 長期脱炭素電源オークションの結果公表:蓄電池などの脱炭素電源の固定費回収を支援する制度。オークション結果から、今後の落札価格や市場規模が推測可能になります。
また、令和6年度の経済産業省予算でも、系統用蓄電池の導入を支援する事業が予定されており、今後も補助金を活用した投資が活発に行われる見込みです。SIIのウェブサイトでも、関連する後継事業や新規事業の情報が公開される可能性があるため、定期的なチェックが欠かせません。
系統用蓄電池ビジネスを成功させる3つのポイント
補助金を活用し、系統用蓄電池ビジネスを成功させるためには、精緻な事業計画が不可欠です。特に以下の3つのポイントが事業判断の重要な論点となります。
事業検討 3つのポイント
- ① ユースケース(利用用途)の選択
- 卸電力市場での裁定取引、需給調整市場、容量市場など、複数の収益源をどう組み合わせるか。期待収益と運用の難易度のバランスを見極めることが重要です。
- ② 電力市場価格の推計
- 燃料価格や政策動向など、様々な要因で変動する市場価格を、15〜20年という長期的な視点で見通す必要があります。精度の高い価格推計が事業計画の根幹を支えます。
- ③ 蓄電池制御ロジックの検討
- 刻々と変化する市場価格や蓄電池の充電状況を考慮し、どの市場で充放電するのが最も収益性が高いかを判断する最適な制御ロジックの構築が、収益最大化の鍵となります。
まとめ:最新情報をキャッチアップし、次なるチャンスに備えよう
「令和5年度 系統用蓄電池等導入支援事業」は終了しましたが、脱炭素化の流れは加速しており、系統用蓄電池の重要性はますます高まっています。2024年以降は市場環境が整備され、より事業性を評価しやすい状況が生まれます。
今後発表されるであろう令和6年度以降の補助金情報を見逃さず、市場動向を正確に捉え、精緻な事業計画を立てることが、この大きなビジネスチャンスを掴むための鍵となるでしょう。まずは公式サイトで最新情報を確認し、次なる公募に備えることをお勧めします。