令和5年度CASE対応実証・支援事業とは?
経済産業省が推進する「令和5年度 無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業」は、次世代自動車技術CASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)の社会実装を加速させるための重要な国家プロジェクトです。特に、電動車の心臓部である蓄電池のライフサイクル全体に焦点を当て、持続可能なエコシステムの構築を目指しています。
欧州の「電池規則」など、世界的に環境規制が強化される中、本事業は日本の自動車・蓄電池産業の国際競争力を維持・強化するために、以下の4つの重点分野における取り組みを支援しました。
- データ連携: サプライチェーン全体の情報を繋ぐ基盤構築
- リユース・リサイクル: 資源循環型社会の実現
- カーボンフットプリント(CFP): CO2排出量の見える化
- デュー・ディリジェンス(DD): 人権・環境への配慮
この補助金の重要ポイント
- ✔国のGX戦略に直結: 日本のグリーン成長戦略の中核を担うプロジェクトです。
- ✔大規模な補助上限: 事業内容によっては最大11億円という破格の補助額が設定されました。
- ✔未来の業界標準を形成: 「ウラノス・エコシステム」構想のもと、業界横断のデータ連携基盤構築に貢献します。
【公募終了】補助金 概要まとめ
本事業は、令和5年度中に複数のテーマで公募が行われました。現在はすべての公募が終了していますが、来年度以降の参考情報として概要をまとめます。
公募テーマ | 主な公募期間(令和5年) | 補助上限額/年度 | 補助率 |
---|---|---|---|
①データ流通(トレーサビリティ管理システム) | 7月21日~8月2日 | 11億円 | 2/3以内 |
①データ流通(アプリケーション) | 7月21日~8月2日 | 7,500万円 | |
②蓄電池のリユース・リサイクル | 7月21日~8月2日 | 4,000万円 | |
③カーボンフットプリント(CFP) | 11月8日~11月22日 | 8,000万円 | |
④デュー・ディリジェンス(DD) | 11月8日~11月27日 | 2,000万円 |
申請プロセスと必要書類(参考)
本事業の申請は、補助金申請システム「jGrants」を通じて行われました。今後同様の事業が公募された場合も、同様のプロセスが想定されます。
- 1GビズIDプライムの取得: jGrantsを利用するための必須アカウントです。取得には数週間かかる場合があるため、事前の準備が不可欠です。
- 2事業計画の策定: 公募要領を熟読し、事業の目的、実施体制、スケジュール、資金計画などを詳細に記載した事業計画書を作成します。
- 3jGrantsでの電子申請: 作成した事業計画書や経費明細書、決算書などの必要書類をjGrants上で提出します。
- 4審査・採択: 事務局による審査が行われ、採択・不採択が決定します。
- 5事業実施と実績報告: 採択後、計画に沿って事業を実施し、期間終了後に詳細な実績報告書と経費の証憑を提出して補助金額が確定します。
採択事例から見る事業のインパクト
本事業は、具体的な社会実装へと繋がっています。代表的な採択企業の取り組みを紹介します。
株式会社ゼロボード:CFP算定アプリケーション開発
GHG排出量算定・可視化ソリューション「Zeroboard」を提供する同社は、「データ流通(アプリケーション)」分野で採択されました。本実証事業を通じて、蓄電池のカーボンフットプリントやデュー・ディリジェンス情報を収集・算定するアプリを開発し、国のデータ連携基盤「ウラノス・エコシステム」との接続実証を行いました。これは、欧州電池規則への対応を具体化する重要な一歩です。
株式会社NTTデータ:バッテリートレーサビリティプラットフォーム提供開始
NTTデータは、令和4年度および5年度の本事業での実証成果を踏まえ、2024年5月に「バッテリートレーサビリティプラットフォーム」の提供を開始しました。これは、ウラノス・エコシステムの最初の商用ユースケースとなり、バッテリーのライフサイクルに関わる企業間での安全なデータ連携を実現します。補助金事業が、具体的なサービスとして社会に実装された好例と言えます。
まとめ:今後の動向と次年度への期待
「CASE対応実証・支援事業」は、単なる個別企業への支援に留まらず、日本の産業構造そのものを変革し、国際的なルール形成に主体的に関与していくための戦略的な補助金です。公募は終了しましたが、本事業の成果は今後の業界標準となり、様々なビジネスチャンスを生み出すことが期待されます。
脱炭素化やサーキュラーエコノミーへの対応は、今後ますます重要になります。令和6年度以降も同様の趣旨を持つ事業が公募される可能性は高いため、関連企業の皆様は、経済産業省や執行団体である低炭素投資促進機構(GIO)の発表に注目しておくことをお勧めします。