再生・細胞医療・遺伝子治療の社会実装を加速!最大15億円の環境整備事業費補助金とは?
経済産業省は、令和4年度第二次補正予算として「再生・細胞医療・遺伝子治療の社会実装に向けた環境整備事業費補助金」の公募を実施しました。この補助金は、再生医療等の優れた製品・技術が直面する「実用化後の壁」を乗り越え、持続可能な産業として社会に実装されることを目的としています。本記事では、この大型補助金の概要、目的、申請要件などを詳しく解説します。
補助金の概要(基本情報)
補助金名 | 再生・細胞医療・遺伝子治療の社会実装に向けた環境整備事業費補助金 |
実施機関 | 経済産業省(事務局:株式会社シード・プランニング) |
公募期間 | 令和5年3月2日(木)~ 令和5年3月31日(金)正午まで ※公募は終了しました |
補助上限額 | 最大15億円/件 |
補助率 | 補助対象経費の2/3以内 |
対象者 | 再生医療等の社会実装を目指す共同体(医療機関、製薬企業、研究機関等) |
なぜ今、再生医療等の「社会実装」が重要なのか?事業の目的と背景
再生・細胞医療・遺伝子治療は、これまで根治が難しかった疾患への新たな希望として期待されています。しかし、優れた技術が承認されても、社会実装の段階で多くの課題に直面します。
優れた技術が直面する「実用化後の壁」
薬機法下で承認されても患者数が限定的で収益が得られなかったり、自由診療下で治療効果の検証が不十分なまま提供されたりと、「実用化」の後のフェーズで社会実装が進まないケースが存在します。本事業は、こうした現状を打破し、治療効果を科学的・客観的データによって確立することで、優れた再生医療を国内外に適切に展開していくことを目指します。
どのような事業が対象?5つの役割を担う共同体を支援
本事業では、単独の機関ではなく、事業全体の運営管理を行う「代表機関」と、以下の5つの課題を担う「課題分担機関」から構成される共同体(チーム)による申請が前提となります。
対象となる5つの課題
- 課題1(臨床): 治験、臨床研究、診療行為を行うための臨床拠点を整備する医療機関等
- 課題2(製品・技術提供): 有望な再生医療を開発・提供する製薬企業等
- 課題3(受託): 製品の製造・品質評価、改善・高度化を行うCMO/CDMO、CRO等
- 課題4(検証): 治療効果を第三者的に評価・検証する研究機関・学会等
- 課題5(活性化): 拠点の持続的運用に必要な業務(連携促進、広報等)を行う企業等
申請方法とプロセス:jGrantsを活用した電子申請
申請は、原則として補助金申請システム「jGrants」を通じて行われました。申請にはGビズIDプライムアカウントが必要となるため、事前の準備が重要でした。
- GビズIDの取得: 申請に必須のGビズIDプライムアカウントを取得します。取得には2~3週間かかる場合があるため、早めの準備が推奨されました。
- 必要書類の準備: 公募要領で定められた申請書や提案書など、多数の書類を準備します。
- jGrantsでの申請: jGrantsにログインし、必要事項を入力、作成した書類を添付して期間内に申請を完了させます。
- ヒアリング(該当者のみ): 審査の過程で必要と判断された応募者は、オンラインでのヒアリングが実施されました。
提出が必要な書類一覧
書類名 | 提出形態 |
---|---|
様式1 公募申請書 | ● 必須 (共同体で1部) |
様式2 機関の概要 | ● 必須 (共同体で1部) |
様式3 提案書 | ● 必須 (共同体で1部) |
様式4 事業収支計画書 | ○ 必須 (機関毎に1部) |
様式5 積算内訳書 | ○ 必須 (機関毎に1部) |
様式6 課題分担機関承諾書 | ○ 必須 (機関毎に1部) |
様式7 暴力団排除に関する誓約書 | ○ 必須 (機関毎に1部) |
様式8 賃上げ及び取引適正化に関する取組 | △ 任意 (機関毎に1部) |
様式9 事前着手承認申請書 | ▲ 任意 (共同体で1部) |
国の大きな後押し:関連する研究開発支援事業
本事業は、経済産業省が進める再生医療分野における一連の支援策の一つです。国は、基盤技術開発からベンチャー支援、そして社会実装のための拠点整備まで、多角的な支援を行っています。
- 基盤技術開発支援:製造や品質評価の技術開発を後押しする「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤整備事業」。
- ベンチャー企業支援:VCと連携して創薬ベンチャーの実用化開発を支援する「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」。
- 医工連携の推進:中小企業やベンチャーの医療機器分野への参入を促進するAMEDの「医工連携イノベーション推進事業」。
これらの事業と連携することで、日本の再生医療分野全体の競争力強化が図られています。
まとめ:未来の医療を創るための重要な一歩
「再生・細胞医療・遺伝子治療の社会実装に向けた環境整備事業費補助金」は、革新的な医療技術を研究開発フェーズから社会実装フェーズへと力強く押し進めるための重要な国の支援策です。採択された事業者は、未来医療国際拠点などを中核として、日本の再生医療産業の発展に大きく貢献することが期待されています。公募は終了しましたが、今後の動向や関連事業にも注目が集まります。
お問い合わせ先
経済産業省「再生・細胞医療・遺伝子治療の社会実装に向けた環境整備事業」事務局
株式会社シード・プランニング
〒113-0034 東京都文京区湯島3-19-11 湯島ファーストビル 4F
E-mail: rm_cgt@seedplanning.co.jp