近年、脱炭素社会の実現と災害時のエネルギー確保(レジリエンス強化)の両面から注目を集めている「地域マイクログリッド」。この記事では、その構築を支援する経済産業省の重要施策「地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業費補助金(地域マイクログリッド構築支援事業)」について、過去の公募情報を基にその概要、目的、採択事例を詳しく解説します。次回の公募に備え、今から準備を進めましょう。
この記事のポイント
- 地域マイクログリッド構築補助金の目的と概要を理解できる
- 「構築事業」と「導入プラン作成事業」の2つのメニューがわかる
- 釧路市阿寒町や鳥取市などの具体的な採択事例を知れる
- 次回の公募に向けた準備のヒントが得られる
地域マイクログリッド構築支援事業とは?
本事業は、経済産業省 資源エネルギー庁が主導し、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が執行する補助金制度です。その主な目的は、再生可能エネルギーの導入を促進しつつ、災害などによる大規模停電時にも特定の地域内でエネルギーの自立供給を可能にすることで、地域のレジリエンス(強靭性)を強化することにあります。
平常時は再生可能エネルギーを最大限活用してエネルギーの地産地消を進め、環境負荷を低減。非常時には系統電力から切り離され、地域の重要施設(避難所、病院など)へ電力を供給し続ける、まさに地域社会の生命線となるシステム構築を支援します。
補助金の概要(過去の公募情報)
令和4年度の公募は既に終了していますが、今後の参考として概要をまとめました。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。
項目 | 内容 |
---|---|
補助金名 | 地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業費補助金(地域マイクログリッド構築支援事業) |
実施機関 | 経済産業省 資源エネルギー庁(執行団体:一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)) |
対象者 | 民間事業者、地方公共団体、協同組合、大学等で構成されるコンソーシアム |
補助対象経費 | 再生可能エネルギー発電設備、蓄電池、エネルギーマネジメントシステム(EMS)、自営線等の設備費、設計費、工事費など |
補助率・補助額 | 事業内容により異なる(例:補助対象経費の1/2、2/3以内など)。事業規模は数億円から数十億円に及ぶこともあります。 |
公募期間(参考) | 令和4年度は2022年5月25日~6月24日でした。※公募は終了しています。 |
2つの支援事業メニュー
本補助金は、事業フェーズに応じて2つのメニューが用意されていました。
1. 地域マイクログリッド構築事業
実際にマイクログリッドを構築するための設備導入や工事を支援する事業です。具体的な事業計画が固まっているコンソーシアムが対象となります。
2. 導入プラン作成事業
マイクログリッド構築に向けた実現可能性調査(FS: Feasibility Study)や、詳細な導入計画の策定を支援する事業です。構想段階のプロジェクトを具体化するための第一歩として活用されます。
採択事例の紹介
本補助金を活用して、全国で先進的な取り組みが進められています。ここでは2つの事例を紹介します。
事例1:釧路市阿寒町地域マイクログリッド(構築事業)
株式会社阿寒マイクログリッド、阿寒農業協同組合、釧路市、北海道電力ネットワーク株式会社などがコンソーシアムを組み、令和3年度の補助金を活用してマイクログリッドを構築。2023年5月から運用を開始しています。災害時のレジリエンス強化はもちろん、再生可能エネルギーの導入拡大による地域経済発展への貢献を目指しています。
事例2:鳥取市における導入プラン作成事業
鳥取ガス株式会社、協同組合鳥取鉄工センター、鳥取市などが連携し、令和4年度の「導入プラン作成事業」に採択されました。鳥取鉄工センターを拠点に、エネルギーの地産地消と災害時のエネルギー供給確保を両立するプランの検討を進めています。地域の持続的発展に繋がるモデルとして期待されています。
申請から採択までの流れ(一般的なプロセス)
今後の公募に備え、一般的な申請プロセスを把握しておくことが重要です。
- 公募情報の確認:SIIのウェブサイトで公募要領が公開されます。目的、対象者、要件などを熟読します。
- コンソーシアムの組成:事業の核となる民間事業者、地方公共団体、地域の需要家、エネルギー関連企業など、最適なパートナーと連携体制を構築します。
- 事業計画・導入プランの策定:事業の目的、導入する設備の仕様、資金計画、エネルギー需給シミュレーション、費用対効果などを詳細に盛り込んだ計画書を作成します。
- 申請書類の作成・提出:公募要領で定められた様式に従い、申請書類一式を準備し、指定された方法(電子申請など)で提出します。
- 審査・交付決定:学識経験者等で構成される審査委員会による審査を経て、採択・不採択が決定されます。
- 事業実施・実績報告:交付決定後、計画に沿って事業を実施し、完了後に実績報告書を提出して補助金額が確定します。
まとめ:次回の公募に向けて今からできること
地域マイクログリッド構築支援事業は、脱炭素と防災の両面で地域に大きな価値をもたらす重要な補助金です。公募は終了していますが、同様の事業は今後も継続される可能性が高いと考えられます。
次回公募への3つのアクション
- 1. 情報収集の継続:SIIや資源エネルギー庁のウェブサイトを定期的にチェックし、最新の公募情報を見逃さないようにしましょう。
- 2. パートナー探し:自社の強みを生かし、連携できる地方公共団体や地元企業、技術を持つ企業などとの関係構築を今から始めておきましょう。
- 3. 事業構想の具体化:どの地域で、どのような課題を解決したいのか。事業のコンセプトや大まかなエネルギー需給バランスなどを検討し、構想を練っておくことが重要です。
最新情報や過去の公募詳細は、公式サイトをご確認ください。