この記事では、災害時のエネルギー供給の安定化と再生可能エネルギーの普及を目指す「地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業費補助金(地域マイクログリッド構築支援事業)」について、その概要から具体的な採択事例までを詳しく解説します。※本補助金の公募は既に終了していますが、今後の同様の事業計画の参考としてご活用ください。
地域マイクログリッド構築支援事業とは?
事業の目的
この補助金は、災害などによる大規模停電(ブラックアウト)が発生した際にも、特定の地域内でエネルギーの自立供給を可能にする「地域マイクログリッド」の構築を支援することを目的としています。再生可能エネルギーを最大限活用し、平時はエネルギーの地産地消、非常時には防災拠点や避難所、重要なインフラへ電力を供給することで、地域のレジリエンス(強靭性)向上に貢献します。
主な支援対象事業
本補助金は、主に以下の2つの事業フェーズを支援していました。
- 地域マイクログリッド構築事業:
再生可能エネルギー発電設備、蓄電池、自営線、エネルギーマネジメントシステム(EMS)など、マイクログリッドを構築するための具体的な設備導入を支援します。 - 導入プラン作成事業:
マイクログリッド構築に向けた詳細な事業化計画(フィージビリティスタディ)の策定にかかる費用を支援します。
補助金の基本情報(過去実績)
項目 | 内容 |
---|---|
補助金名 | 地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業費補助金(地域マイクログリッド構築支援事業) |
実施機関 | 一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII) |
公募期間 | 公募終了(令和3年度〜令和4年度にかけて実施) |
対象者 | 地域マイクログリッドの構築・運営を行う民間事業者、地方公共団体等で構成されるコンソーシアム(共同事業体) |
補助率・補助額 | 事業内容や要件により異なる(例:補助対象経費の1/2、2/3など)。事業規模は数億円から数十億円に及ぶ場合もありました。 |
対象経費 | 設計費、設備費(再エネ発電設備、蓄電システム、自営線、監視制御システム等)、工事費、事務費など |
採択事例:北海道釧路市阿寒町の挑戦
本補助金を活用した具体的な事例として、北海道釧路市阿寒町での「メタン発酵バイオガス発電設備を活用する地域マイクログリッド構築事業」をご紹介します。
事業の背景:ブラックアウトの教訓
地域の主産業である酪農は、搾乳ロボットの導入などで電力への依存度が高まっていました。そのような中、2018年の北海道胆振東部地震による全域停電(ブラックアウト)で多くの酪農家が甚大な被害を受けたことから、非常時における安定的な電力供給が喫緊の課題となっていました。
構築されたシステムと特徴
この事業では、以下の設備を組み合わせてマイクログリッドを構築しました。
- バイオガス発電設備 (166kW): 家畜排せつ物を利用した地域の特性を活かす電源。
- 太陽光発電設備 (160kW): 再生可能エネルギーの主力。
- 蓄電システム (272kW / 1,087kWh): 発電量の変動を吸収し、夜間や悪天候時にも電力を供給。
これにより、災害による大規模停電時には系統から独立し、避難所や酪農施設、民家などへ約3日間(72時間)の電力供給を継続することが可能になりました。
コンソーシアム体制
この事業は、株式会社阿寒マイクログリッドを事業統括とし、北海道電力ネットワーク株式会社、釧路市、JA阿寒などが連携する強力なコンソーシアムによって推進されました。地域の課題解決に向けた官民連携の好事例と言えます。
まとめと今後の展望
「地域マイクログリッド構築支援事業」は公募を終了しましたが、この事業が目指した「災害に強く、環境にやさしいエネルギーシステムの構築」というテーマは、今後ますます重要になります。
激甚化する自然災害やエネルギー情勢の変化に対応するため、国や自治体から同様の趣旨を持つ補助金が今後も公募される可能性は高いでしょう。今回の事例を参考に、自社の事業や地域が抱える課題と結びつけ、次なるチャンスに備えることが重要です。
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