1. 「無人自動運転等のCASE対応実証・支援事業」とは?
経済産業省が推進する「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業」は、自動車業界の大きな変革であるCASE(Connected, Autonomous, Shared & Services, Electric)、特に電動化に対応するための重要な補助金です。この事業は、蓄電池のライフサイクル全体における環境負荷低減と持続可能なサプライチェーン構築を目指し、以下の4つのテーマに関する実証事業を支援します。
- ① カーボンフットプリント(CFP):蓄電池製造時のCO2排出量の算定・見える化
- ② 蓄電池のリユース・リサイクル:使用済み蓄電池の再利用・資源循環
- ③ データ流通:サプライチェーン全体での安全なデータ連携基盤の構築
- ④ デュー・ディリジェンス(DD):人権・環境への配慮に関する調査・対応
事業の目的と背景
世界的なカーボンニュートラルの潮流の中、特に欧州では2023年8月に欧州電池規則が施行され、蓄電池のライフサイクル全体での環境情報開示が義務化されつつあります。本事業は、こうした国際的なルール形成に対応し、日本の自動車・蓄電池産業の国際競争力を維持・強化することを目的としています。
2. 補助金の概要(令和4・5年度実績)
過去の公募情報を基に、補助金の主要な要件をまとめました。今後の公募の参考にしてください。
項目 | 内容 |
---|---|
補助対象事業 | ①カーボンフットプリント、②蓄電池のリユース・リサイクル、③データ流通、④デュー・ディリジェンスに関する実証事業 |
補助率 | 2/3以内 |
補助金上限額 | 事業により異なる(最大1億5,000万円/年度) 【R4年度実績】①3,000万円 ②7,000万円 ③1億5,000万円 ④1,000万円 【R5年度実績】①8,000万円 ④2,000万円 |
補助対象経費 | 人件費、諸経費(旅費・交通費等)、事業費、委託費など |
対象者 | 電動車や蓄電池のサプライチェーンに関連する国内の民間事業者等 |
3. 申請プロセス(参考)
令和5年度の公募では、電子申請システム「jGrants」が利用されました。申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必須でした。今後の公募に備え、早めに準備しておくことをお勧めします。
- GビズIDプライムアカウントの取得
申請に数週間かかる場合があるため、事前の取得が不可欠です。 - 公募要領の確認・書類準備
公式サイトで公開される公募要領を熟読し、事業計画書や経費明細書などの必要書類を作成します。 - jGrantsでの電子申請
公募期間内にjGrantsにログインし、必要事項の入力と申請書類のアップロードを行います。 - 審査・採択
事務局による審査が行われ、採択事業者が決定・公表されます。
4. 事業成果:NTTデータによるプラットフォーム提供開始
本補助金を活用した成果として、株式会社NTTデータは2024年5月16日より「バッテリートレーサビリティプラットフォーム」の提供を開始しました。これは、本事業で実証された機能を基に開発されたもので、業界横断での安全なデータ連携を実現します。
プラットフォームの主な特徴
- 欧州電池規則対応:バッテリーのライフサイクル全体のCO2排出量(CFP)やリサイクル率の開示義務に対応。
- データ主権の確保:ブロックチェーン技術を活用し、企業が自社のデータを管理・コントロールしながら安全に情報連携が可能。
- ウラノス・エコシステム準拠:経済産業省が推進する官民連携のデータ連携基盤「ウラノス・エコシステム」のファーストユースケースとして構築。
このプラットフォームの実現は、本補助金が単なる資金援助に留まらず、日本の産業競争力強化に直結する具体的な社会実装へと繋がった好例と言えます。
5. まとめ
「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業」は、カーボンニュートラル社会の実現と国際的な環境規制への対応という、現代の産業界が直面する重要課題に取り組むための補助金です。公募は終了していますが、その目的や成果は、今後の事業戦略を考える上で非常に有益な情報となります。同様の趣旨を持つ後継事業が開始される可能性もあるため、経済産業省や関連機関の発表に引き続き注目していきましょう。