この記事のポイント
経済産業省が推進する「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業」は、次世代自動車の中核である蓄電池のサプライチェーン全体での環境対応・データ連携を目指す重要な補助金です。本記事では、令和4年度・5年度に実施された本事業の概要、目的、そしてNTTデータによるプラットフォーム開発といった具体的な成果までを詳しく解説します。(※本事業の公募は既に終了しています)
「CASE対応実証・支援事業」の概要と目的
本事業は、電動化を含む「CASE」技術の社会実装が進む中、特に重要となる蓄電池の健全なエコシステム構築を目的としています。世界的にカーボンニュートラルへの要求が高まり、欧州では「EU電池規則」が施行されるなど、蓄電池のライフサイクル全体での環境負荷低減や人権配慮が国際的な競争力の源泉となりつつあります。
この背景を踏まえ、本事業では以下の4つのテーマに関する実証・支援を行い、日本の自動車・蓄電池産業の国際競争力強化とCO2排出量削減の促進を目指しました。
支援対象となる4つの事業テーマ
- ① カーボンフットプリント(CFP): 蓄電池の製造から廃棄までのCO2排出量を見える化する仕組みの実証。
- ② 蓄電池のリユース・リサイクル: 使用済み蓄電池の再利用・再資源化を促進する技術や仕組みの開発支援。
- ③ データ流通: サプライチェーン上の企業間で、CFP情報などを安全に連携するためのプラットフォーム構築。
- ④ デュー・ディリジェンス(DD): 蓄電池材料の調達における人権・環境への配慮(デュー・ディリジェンス)を実践するための仕組みの実証。
補助金の詳細(参考:令和5年度公募実績)
以下は、令和5年度に実施された公募の概要です。今後の同様の事業の参考としてご覧ください。
項目 | 内容 |
---|---|
公募期間 | 令和5年11月8日~11月27日(公募終了) |
補助率 | 補助対象経費の2/3以内 |
補助金上限額 | ①CFP:8,000万円/年度 ④DD:2,000万円/年度 (※令和4年度は③データ流通で最大1億5,000万円) |
補助対象経費 | 人件費、諸経費(旅費・交通費等) |
申請方法 | 補助金申請システム「jGrants」による電子申請 |
申請時の注意点
本補助金の申請には、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須でした。アカウント発行には数週間かかる場合があるため、同様の電子申請が求められる補助金に応募する際は、事前の準備が重要です。
事業成果:NTTデータ「バッテリートレーサビリティプラットフォーム」
本事業の大きな成果の一つとして、NTTデータが開発し、2024年5月16日より提供を開始した「バッテリートレーサビリティプラットフォーム」が挙げられます。これは、本補助金を活用した実証事業の成果を社会実装したものです。
このプラットフォームは、経済産業省が提唱するデータ連携基盤「ウラノス・エコシステム」の最初の実用例であり、以下のような特徴を持っています。
- EU電池規則への対応: バッテリーのライフサイクル全体のCO2排出量(CFP)やリサイクル率の開示義務に対応。
- 安全なデータ連携: ブロックチェーン技術などを活用し、データ主権を確保したまま、企業間で機密情報を含むデータを安全に流通させることが可能。
- 業界横断での拡張性: 自動車業界だけでなく、様々な産業への展開が期待される次世代の情報インフラ。
このように、本補助金は単なる資金支援に留まらず、国の政策と連携し、具体的なデジタルプラットフォームとして社会実装されるという、非常にインパクトの大きい事業であったことがわかります。
まとめ
「無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業」は、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった世界的潮流に対応し、日本の産業競争力を維持・強化するために不可欠な取り組みを支援するものでした。公募は終了しましたが、本事業の成果は今後の日本の産業DX・GXを牽引していくことでしょう。
今後も、こうした国の重要政策に連動した大規模な補助金・助成金が公募される可能性があります。関連分野の事業者は、公式サイトなどで最新情報を常にチェックしておくことをお勧めします。