【公募終了】総務省「地域課題解決のためのスマートシティ推進事業」とは?
総務省が実施していた「地域課題解決のためのスマートシティ推進事業」は、デジタル技術やデータを活用して地域課題を解決する「スマートシティ」の取り組みを支援する補助金です。特に、複数のサービスやデータを連携させるための基盤となる「都市OS」の整備や改良に重点を置いていました。
デジタル田園都市国家構想総合戦略の一環として、地域活性化や地方創生を目指す地方公共団体や関連事業者にとって重要な制度でしたが、令和5年度の公募は既に終了しています。本記事では、本事業の概要や要件を振り返るとともに、財務省の調査結果から見える今後の動向について詳しく解説します。
この補助金のポイント
- 地域課題解決のため、都市OSや関連サービスの整備・改良経費を補助。
- 補助率は事業費の1/2以内、事業費の下限は300万円。
- 地方公共団体のほか、自治体と連携する民間事業者も対象。
- 事業完了後5年間の運用状況報告が義務付けられている。
補助金の概要(令和5年度公募情報)
令和5年度に公募された内容に基づき、本事業の基本情報をまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
事業名 | 令和5年度 地域課題解決のためのスマートシティ推進事業 |
実施機関 | 総務省 |
公募期間 | 令和5年4月5日~令和5年5月10日 ※公募終了 |
補助率 | 事業費総額の1/2以内 |
補助額 | 補助事業に係る事業費の下限額は300万円(上限の定めはなし) |
対象者 | 都道府県、市町村、法人格を有する組織(地方公共団体との連携が必須) |
誰が対象?申請できる事業者の詳細
本事業の対象となる実施団体は、以下の通りです。
対象となる実施団体
- 都道府県
- 市町村(一部事務組合又は広域連合を含む)
- 法人格を有する組織(株式会社、一般社団法人、NPO法人など)
⚠️ 民間事業者の重要要件
法人格を有する組織(民間事業者等)が申請主体となる場合、関連する都道府県または市区町村との間でガバナンスが確立されていることが必須条件です。具体的には、出資、包括連携協定、コンソーシアム組成などが求められ、それを証明する資料の提出が必要となります。
何に使える?補助対象となる経費
補助対象は、スマートシティの推進に直接必要な経費に限られます。具体的な範囲は以下の通りです。
補助対象経費の例
- 物品費:事業に必要な設備備品(PC、サーバー等)や消耗品の購入費
- 人件費・謝金:事業に直接従事する担当者の人件費や、専門家への謝金
- 旅費:事業遂行に特に必要な出張旅費(交通費、宿泊費等)
- 外注費:システム構築や開発などを外部に委託する費用
- その他:印刷製本費、会議費、通信運搬費など事業に直接必要な経費
- 一般管理費:直接経費の合計額の10%を上限とする額
補助対象にならない経費の例
注意:以下の経費は対象外です
- 建物等施設の建設、不動産取得に関する経費
- 既存システムの純粋な維持費用(ランニングコスト)
- 借入金の支払利息や遅延損害金
- 公的な資金の使途として社会通念上、不適切と認められる経費(接待費等)
- 交付決定日より前(事前)に発注・契約した経費
申請から交付までの流れ
令和5年度の一般的なスケジュールは以下の通りでした。
- 提案書の提出:所定の様式を作成し、管轄の総合通信局等またはJグランツで提出。(~5月10日)
- 審査:合同審査会による書面審査及びヒアリング。(6月中)
- 採択候補先の選定・交付決定:審査結果に基づき採択候補先が選定され、内容調整を経て交付が決定。(8月以降)
- 事業実施:交付決定日から事業を開始。
- 実績報告:事業完了後、1ヶ月以内等に実績報告書を提出。
- 補助金額の確定・支払い:実績報告書の審査後、補助金額が確定し、精算払いにて支払われる。
事業の課題と今後の展望|財務省の調査結果から
本事業については、財務省が令和6年6月に公表した予算執行調査において、いくつかの課題が指摘されています。今後の事業のあり方を考える上で重要な視点です。
財務省による主な指摘事項
- サービスの利用状況の低さ:防災や健康増進分野で提供されているサービスの住民利用率が、平均して年に1回にも満たないなど、ニーズとの乖離が指摘されています。
- データ連携の停滞:スマートシティの核となる「地域間・分野間のデータ連携」が十分に進んでおらず、調査対象の半数近くがどちらの連携も行っていない実態が明らかになりました。
- 事業継続性への懸念:これらの状況から、調査報告では「本事業を継続してもスマートシティは実現されない」とし、事業の廃止を提言しています。
この提言を受け、令和6年度以降、本事業が同様の形で継続されるかは不透明な状況です。後継事業や、デジタル田園都市国家構想交付金など、他の関連制度との統合・再編が行われる可能性も考えられます。スマートシティ関連の支援を検討している事業者は、今後の政府の動向を注視する必要があります。
まとめ
総務省の「地域課題解決のためのスマートシティ推進事業」は、都市OSの整備を通じて地域のDXを推進する重要な補助金でした。しかし、住民ニーズの把握や実質的なデータ連携の推進といった点で課題も浮き彫りになっています。
令和5年度の公募は終了しましたが、スマートシティや地域DXの流れは今後も続きます。本事業の成果と課題を踏まえ、より効果的な支援制度が登場することが期待されます。関連情報の収集を継続し、次の機会に備えましょう。
公式情報・お問い合わせ先
最新情報や詳細については、必ず公式サイトをご確認ください。
【問い合わせ先】
総務省 情報流通行政局 地域通信振興課
電話:03-5253-5756