2050年のカーボンニュートラル実現に向け、経済産業省が推進する「GXサプライチェーン構築支援事業」。これは、日本の製造業が国際競争力を強化し、脱炭素社会への移行(GX)を加速させるための超大型補助金です。補助限度額は設けられておらず、中小企業であれば最大で補助率2/3という破格の条件で、大規模な設備投資を支援します。本記事では、過去の公募情報をもとに、この重要な補助金の全貌を分かりやすく解説します。
GXサプライチェーン構築支援事業とは?
GXサプライチェーン構築支援事業は、カーボンニュートラル実現に不可欠な特定分野の国内製造基盤を強化することを目的とした国の事業です。具体的には、水電解装置、燃料電池、ペロブスカイト太陽電池、浮体式等洋上風力発電設備などの生産に関わる大規模な設備投資を支援します。これにより、中小企業を含むサプライチェーン全体の強みを活かし、世界に先駆けてGX分野の国内製造拠点を構築することを目指しています。
この補助金のポイント
- 補助限度額なし:事業規模に応じた大規模な投資計画が可能。
- 高い補助率:中小企業は最大2/3、大企業でも最大1/2の補助。
- 幅広い対象経費:設備機械だけでなく、工場の新設や改修に関わる建物取得費も対象。
- 事前着手が可能:交付決定前の発注も、届出により補助対象となる場合があります。
補助金 概要(第二回公募実績)
※下記は過去の公募情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
項目 | 内容 |
---|---|
事業目的 | GX分野の国内製造サプライチェーンを世界に先駆けて構築し、2050年カーボンニュートラル実現と国際競争力強化に繋げる。 |
予算額 | 4,212億円(令和10年度までの国庫債務負担含む) |
補助率 | 【原則】 ・大企業: 1/3以内 ・中小企業等: 1/2以内 【特定要件を満たす場合】 ・大企業: 1/2以内 ・中小企業等: 2/3以内 |
補助限度額 | なし |
事業期間 | 交付決定日 〜 令和11年3月31日(最長) |
公募期間(第二回) | 令和6年9月17日(火) ~ 令和6年10月31日(木)正午 ※募集終了 |
補助対象となる事業
本事業では、公募回ごとに支援対象となる製品分野が設定されています。
第二回公募の対象製品
- ペロブスカイト太陽電池:完成品(フィルム型太陽電池)、レーザー加工装置
- 浮体式等洋上風力発電設備:ブレード、タワー、ナセル、係留索・チェーン、アンカー、浮体基礎など
第一回公募の対象製品(参考)
- 水電解装置:完成品、膜、電極、触媒など
- 燃料電池:完成品、膜、触媒、ガス拡散層など
補助対象経費
対象製品を製造する工場(日本標準産業分類における製造業)で使用する以下の経費が対象です。
- 設備機械装置費:製品の製造に必要な機械装置の購入、据付、改造費用など。(必須要件)
- 建物等取得費:工場の新設、建て替え、リフォーム費用。
- システム購入費:設備機械の稼働に直接必要となるソフトウェアの購入費用。
※土地の取得費や汎用品(PC等)、人件費(一部除く)などは対象外です。詳細は公募要領をご確認ください。
申請手続きの流れ
申請は、政府の補助金電子申請システム「jGrants」を利用して行います。手続きの概要は以下の通りです。
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1
GビズIDプライムの取得
jGrantsの利用に必須のアカウントです。取得には2〜3週間かかる場合があるため、早めの準備が必要です。
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2
公募要領・申請様式の確認
公式サイトから最新の公募要領と申請様式をダウンロードし、要件や必要書類を詳細に確認します。
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3
事業計画書等の作成
事業戦略、排出削減への貢献、財務状況、経営層のコミットなど、審査項目に沿った詳細な事業計画書を作成します。
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4
jGrantsでの電子申請
作成した書類一式を、公募期間内にjGrantsから提出します。
【重要】事前着手届出制度について
通常、補助金の対象経費は交付決定日以降に発注したものでなければなりません。しかし、本事業では緊急性・必要性が認められれば、公募開始日以降かつ交付決定前に発注した経費も補助対象とできる「事前着手届出」が可能です。この制度を利用する場合も、jGrantsからの届出が必要です。ただし、届出が受理されても採択を約束するものではない点にご注意ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 公募は終了していますが、次回の募集はいつ頃ですか?
A1. 記事執筆時点で、次回の公募スケジュールは発表されていません。本事業は令和10年度まで続く大規模なものですので、今後も公募が行われる可能性があります。公式サイトのお知らせを定期的に確認することをおすすめします。
Q2. 中小企業の定義を教えてください。
A2. 中小企業基本法で定める中小企業者に加え、一般社団法人、NPO法人、大学なども含まれます。ただし、資本金5億円以上の法人に100%株式を保有されている場合や、直近3年間の課税所得の年平均額が15億円を超える場合などは大企業として扱われます。詳細は公募要領でご確認ください。
Q3. 申請にはGXリーグへの加入が必須ですか?
A3. GXリーグへの加入、またはそれに準ずる温室効果ガス排出削減のための取組を実施することが要件となっています。ただし、CO2排出量が一定未満の企業や中小企業については、その他の排出削減の取組の提出で代替可能です。
まとめ
「GXサプライチェーン構築支援事業」は、日本の製造業が未来に向けて大きく飛躍するための、またとない機会を提供する補助金です。補助限度額がなく、高い補助率で大規模な設備投資を後押しする内容は、GX分野への参入や事業拡大を検討する企業にとって非常に魅力的です。
公募は既に終了していますが、今後も同様の支援が続く可能性があります。次回のチャンスを逃さないためにも、今のうちから事業計画を練り、GビズIDの取得など準備を進めておくことが重要です。最新情報は公式サイトで随時確認しましょう。
お問い合わせ先
GXサプライチェーン構築支援事業 事務局コールセンター
TEL: 03-6734-7766
受付時間:平日9時~17時(土日祝日、年末年始を除く)