国土強靱化とは?国家レベルで推進される防災・減災戦略
近年、激甚化・頻発化する自然災害に対応するため、国は「国土強靱化」を重要政策として推進しています。これは、大規模な自然災害等に備え、人命保護、社会・経済への被害最小化、迅速な復旧・復興を実現するための国家的な取り組みです。
特に「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき、計画的かつ集中的な予算が投じられており、関連事業を行う事業者にとっては大きなビジネスチャンスが生まれています。この記事では、令和5年度の概算要求と令和4年度の第2次補正予算の概要を基に、その内容と事業機会について詳しく解説します。
この政策のポイント
- 大規模な予算確保:「経済財政運営と改革の基本方針2022」に基づき、必要・十分な予算が確保されています。
- 5か年加速化対策:中長期的な目標の下、対策をさらに加速・深化させるための計画が進行中です。
- ハード・ソフト一体の推進:インフラ整備(ハード)だけでなく、人材育成や官民連携(ソフト)も重視されています。
国土強靱化関連予算の規模
国土強靱化には、国家レベルの非常に大きな予算が割り当てられています。以下は、令和5年度概算要求と令和4年度第2次補正予算案の概要です。
予算項目 | 令和5年度 概算要求額 | 令和4年度 第2次補正予算案 |
---|---|---|
国土強靱化関係予算(国費) | 約5兆7,148億円 | 約1兆8,925億円 |
うち公共事業関係費 | 約4兆6,640億円 | 約1兆3,536億円 |
うち5か年加速化対策分(国費) | (事項要求) | 約1兆5,341億円 |
※これらの予算は、各府省庁を通じて様々な補助金、交付金、公共事業として執行されます。
【分野別】注目すべき主要施策とビジネスチャンス
この大規模な予算は、具体的にどのような分野で活用されるのでしょうか。事業者にとってチャンスとなる主要な施策分野を解説します。
1. 風水害・大規模地震等への対策
気候変動による水害リスクの増大や、南海トラフ地震・首都直下地震への備えが急務となっています。
- 流域治水対策:河川、ダム、下水道、砂防、海岸堤防の整備など。
- 津波・高潮対策:粘り強い構造の防波堤や海岸防災林の整備、避難路・避難施設の確保。
- 耐震化促進:住宅、学校、病院、社会福祉施設、インフラ(道路橋、水道管等)の耐震補強。
- 火山・土砂災害対策:砂防堰堤の整備、危険な盛土への対策支援。
➡️ チャンスのある事業者: 建設・土木業、測量・設計コンサルタント、建材メーカー、防災シェルター関連企業など。
2. 予防保全型インフラメンテナンス
高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化が深刻な問題となっており、予防保全への転換が加速されています。
- インフラ長寿命化:道路、橋梁、トンネル、港湾、空港、上下水道施設等の戦略的な維持管理・更新。
- 農業・漁業インフラ:農業水利施設や漁港施設の老朽化・耐震対策。
- 公共施設の老朽化対策:公立小中学校や都市公園などの施設改修。
➡️ チャンスのある事業者: インフラ点検・診断技術を持つ企業、補修・補強材料メーカー、ドローンやAIを活用したメンテナンスサービス提供企業など。
3. デジタル化(DX)の推進
国土強靱化に関する施策を効率的に進めるため、デジタル技術の活用が強力に推進されています。
- インフラ管理のデジタル化:3次元モデル等を活用したインフラの整備・管理。
- 防災情報の高度化:線状降水帯の予測精度向上、災害関連情報の収集・伝達システムの強化。
- 通信網の強靱化:放送ネットワークやケーブルテレビの耐災害性強化、無電柱化の推進。
➡️ チャンスのある事業者: IT・通信事業者、SaaS開発企業、地理情報システム(GIS)関連企業、AI・データ解析企業、ドローン関連企業など。
今後の動向と事業者が取るべきアクション
これらの予算は、今後、各府省庁(国土交通省、経済産業省、農林水産省など)から具体的な補助金・交付金・委託事業として公募されます。事業者は、自社の技術やサービスがどの施策に貢献できるかを分析し、関連省庁の公募情報を常にチェックすることが重要です。
アクションプラン
- 情報収集の徹底:内閣官房の国土強靱化推進室や関係府省庁のウェブサイトを定期的に確認しましょう。
- 自社技術のマッチング:自社の強みがどの施策分野で活かせるかを検討し、事業計画を準備します。
- 連携体制の構築:地方公共団体や他の事業者との連携(コンソーシアム形成など)も視野に入れましょう。