小規模事業者の販路開拓や生産性向上を支援する「小規模事業者持続化補助金」。本記事では、特に人気の高い「一般型」について、過去の公募要領を基に制度の全体像を徹底解説します。対象者や補助対象経費、申請の具体的な流れから、農業での活用事例まで、事業者の皆様が知りたい情報を網羅的にまとめました。今後の公募に備え、制度理解を深めましょう。
小規模事業者持続化補助金(一般型)とは?
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が直面する制度変更(働き方改革、インボイス制度導入など)に対応しつつ、持続的な経営に向けた販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。事業者が自ら経営計画を策定し、商工会・商工会議所のサポートを受けながら実施する「地道な販路開拓」の経費の一部が補助されます。
補助金の基本情報(令和元年度補正・令和3年度補正予算 第11回公募参考)
項目 | 内容 |
補助上限額 | 通常枠:50万円 特別枠(賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠):200万円 インボイス枠:100万円 |
補助率 | 2/3 (賃金引上げ枠のうち赤字事業者は3/4) |
目的 | 地道な販路開拓や業務効率化(生産性向上)の取り組み支援 |
実施主体 | 全国商工会連合会 / 日本商工会議所 |
※上記は過去の公募情報です。最新の公募では内容が変更される可能性があるため、必ず公式サイトの公募要領をご確認ください。
誰が対象?補助対象者の主な要件
本補助金の対象となるのは、日本国内に所在する小規模事業者です。業種によって「常時使用する従業員」の数が定められています。
従業員数の定義
- 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):5人以下
- サービス業のうち宿泊業・娯楽業:20人以下
- 製造業その他:20人以下
※会社役員や個人事業主本人、一定条件を満たすパートタイム労働者は従業員数に含みません。
⚠️ 農業事業者の注意点
農業者も対象となり得ますが、系統出荷(JAなど)による収入のみである個人農業者は対象外です。直販など、独自の販路開拓に取り組む事業者が対象となります。
その他の主な要件
- 資本金または出資金が5億円以上の法人に100%株式保有されていないこと(法人のみ)。
- 直近過去3年間の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと。
- 過去の持続化補助金(一般型、低感染リスク型)で採択を受けてから10ヶ月以内ではないこと。
何に使える?補助対象経費の具体例
補助対象となる経費は、販路開拓や生産性向上のための幅広い取り組みに活用できます。主な11項目は以下の通りです。
経費区分 | 具体例 |
---|---|
①機械装置等費 | 製造・試作機械、顧客管理ソフト、ショーケース、オーブンなど |
②広報費 | チラシ・カタログ作成、新聞・雑誌広告、看板作成・設置 |
③ウェブサイト関連費 | ECサイト構築・改修、インターネット広告、販促用動画作成 ※補助金申請額の1/4が上限 |
④展示会等出展費 | 国内外の展示会・商談会の出展料、関連する通訳・翻訳料 |
⑤旅費 | 販路開拓のための調査や展示会参加に伴う交通費・宿泊費 |
⑥開発費 | 新商品の試作品開発、パッケージデザイン費用 |
⑦資料購入費 | 補助事業遂行に不可欠な図書・書籍の購入(10万円未満) |
⑧雑役務費 | 販路開拓のために臨時で雇用したアルバイト代・派遣料 |
⑨借料 | 事業遂行に必要な機器・設備のリース・レンタル料 |
⑩設備処分費 | 販路開拓のためのスペース確保に伴う設備廃棄費用 ※補助対象経費総額の1/2が上限 |
⑪委託・外注費 | 店舗改装、バリアフリー化工事、車の内装改造など自社で困難な業務 |
対象外経費の注意点
汎用性が高く目的外使用になりえるもの(例:パソコン本体、タブレット、文房具、自動車)や、補助金の申請手続きにかかる費用、振込手数料などは補助対象外です。詳細は公募要領で必ず確認してください。
申請から入金までの流れ
申請手続きは計画的に進めることが重要です。大まかな流れを掴んでおきましょう。
- 1申請準備
公募要領を確認し、「経営計画書(様式2)」や「補助事業計画書(様式3)」など必要書類を作成します。 - 2商工会・商工会議所への相談
作成した計画書を持参し、地域の商工会・商工会議所に相談します。内容の確認後、「事業支援計画書(様式4)」の交付を受けます。締切の1週間前までには依頼しましょう。 - 3申請手続き
全ての書類を揃え、電子申請(Jグランツ)または郵送で事務局に提出します。 - 4審査・採択・交付決定
有識者による審査が行われ、採択・不採択が決定します。採択後、「交付決定通知書」が届いたら事業を開始できます。交付決定日より前の発注・支払いは対象外です。 - 5補助事業の実施
計画に沿って販路開拓などの取り組みを実施します。 - 6実績報告
事業完了後、期限内に実績報告書と経費の証拠書類(見積書、請求書、領収書など)を提出します。 - 7補助金額の確定・請求・入金
事務局の検査後、補助金額が確定します。その後、請求手続きを行い、指定口座に補助金が振り込まれます(後払い)。
採択率アップのポイントと農業での活用事例
計画書作成のポイント
審査では、経営計画の妥当性や補助事業の有効性が重視されます。採択率(過去実績:約64%)を高めるためには、以下の点を意識して計画書を作成しましょう。
- 自社の強みと市場の動向を分析する:客観的なデータや写真を用いて、自社の現状と課題を明確にする。
- 計画の一貫性を持たせる:経営計画の目標達成のために、なぜこの補助事業が必要なのかを具体的に示す。
- 具体的で実現可能な計画にする:「何を」「いつまでに」「どのように」実施し、どのような効果が見込めるかを数値目標も交えて説明する。
- ITの有効活用を盛り込む:ECサイトやSNS活用など、ITを取り入れた販路開拓は評価されやすい傾向にあります。
【事例】農業での活用イメージ
農業分野でも、直販や生産性向上を目指す多くの事業者が本補助金を活用しています。
事例1:水管理システムの導入(生産性向上)
作業委託の増加で水田管理が課題となっていた水稲農家が、スマートフォンで水門の開閉ができるIoT水管理システムを導入。見回りにかかる時間を大幅に削減し、生産性向上を実現しました。
事例2:ECサイトと動画を活用した「巣ごもり体験キット」の開発(販路開拓)
コロナ禍で来園者が減少した観光農園が、ECサイトを構築。「自宅でイチゴ狩りを楽しめるキット」を開発し、動画とセットで販売。新たな顧客層を獲得し、売上を大きく伸ばしました。
まとめ:計画的な準備で販路開拓へ
小規模事業者持続化補助金は、事業の成長を目指す小規模事業者にとって非常に強力な支援策です。補助金は後払いで、自己負担も必要ですが、計画的に活用すれば大きなチャンスに繋がります。
公募は不定期に実施されます。常にアンテナを張り、最新情報をチェックすることが重要です。まずは最寄りの商工会・商工会議所に相談し、今後の事業展開について考えてみてはいかがでしょうか。