再エネ導入を加速させる大規模投資を支援!
2050年カーボンニュートラル達成に向け、再生可能エネルギーの導入拡大は喫緊の課題です。「令和6年度 再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金」は、電力の安定供給と再エネの有効活用に不可欠な系統用蓄電池や水電解装置の導入を強力に後押しする、最大40億円という破格の補助金です。本記事では、この大規模補助金の概要から申請のポイントまで、専門家が分かりやすく解説します。
補助金(助成金)の基本情報
まずは本補助金の全体像を把握しましょう。主要な項目を以下の表にまとめました。
補助金名 | 令和6年度 再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金 |
実施機関 | 一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) |
公募期間 | 2024年8月30日(金)~ 2024年10月31日(木)12:00必着 |
補助上限額 | 最大40億円 |
補助率 | 1/3、1/2、2/3以内(対象設備により異なる) |
対象者 | 日本国内で事業活動を営む法人(一般送配電事業者を除く) |
本補助金の3つのメリットと採択のポイント
メリット
- 大規模な初期投資を大幅に軽減:最大40億円という高額な補助により、系統用蓄電池や水電解装置といった高コストな設備の導入ハードルを大きく下げます。
- 新たな電力ビジネスへの参入機会:卸電力市場や需給調整市場など、各種電力市場での取引を通じた新たな収益モデルの構築を支援します。
- 企業の脱炭素経営を加速:再エネの有効活用に直接貢献することで、企業のGX(グリーン・トランスフォーメーション)を推進し、企業価値向上に繋がります。
採択に向けた重要ポイント
本補助金は、単なる設備導入だけでなく、その活用計画と事業の継続性が厳しく審査されます。
- 合理的で継続可能なビジネスモデル:各種電力市場への参画を具体的に計画し、根拠のある数値に基づいた収支構造と事業の継続性を示すことが不可欠です。
- 再エネ導入拡大への貢献度:導入する設備が、いかに再エネの出力抑制を緩和し、電力系統の安定化に寄与するかを明確に説明する必要があります。
- 事業実施体制の信頼性:電力ビジネスの経験を持つ事業者との連携や、保守管理・緊急時対応体制など、事業を確実に遂行できる体制が整っていることが重要です。
- 系統連系協議の進捗:一般送配電事業者との系統連系協議が進んでいるほど、計画の実現性が高いと評価されます。早期の協議開始が鍵となります。
補助対象事業と対象設備の詳細
本事業では、以下のいずれかの設備を新規で導入する事業が対象となります。
1. 蓄電システム
電力系統に直接接続し、電力市場での取引等を通じて再エネの有効活用や電力バランス改善に寄与する蓄電システムが対象です。
- 対象要件:
- 電力系統に直接接続する設備であること。
- 最大受電電力が1,000kW以上であること。
- JIS規格等の第三者認証を取得し、類焼試験に適合するなど安全性が証明されていること。
- リース・エネルギーサービス等を利用する場合は、所有者と使用者の共同申請が必要です。
2. 水電解装置
再エネ余剰電力の吸収(上げDR)や、出力調整による調整力の供出を通じて、再エネの有効活用に貢献する水電解装置が対象です。
- 対象要件:
- 新規に導入される水電解装置であること。
- 定格消費電力が250kW以上であること。
- 原則として電力系統に直接接続する設備であること。
- 過去に重大な事故事例のないメーカーが製造する装置であること。
補助対象経費と補助率・上限額
補助対象となる経費は「設計費」「設備費」「工事費」です。補助率と上限額は導入する設備の種類や規模によって細かく設定されています。
区分 | 補助率 | 補助上限額 |
---|---|---|
蓄電システム | ||
① 新規技術開発蓄電システム(LDES) | 2/3以内 | 20億円 |
② 電動車等のリユース蓄電システム | 1/2以内 | 20億円 |
③ その他蓄電システム (1,000kW以上10,000kW未満) | 1/3以内 | 10億円 |
④ その他蓄電システム (10,000kW以上) | 1/2以内 | 40億円 |
水電解装置 | ||
定格消費電力250kW以上の水電解装置 | 2/3以内 | 20億円 |
【注意】補助対象外経費
土地造成費、整地費、系統連系に関わる費用(受変電設備、連系工事費等)、消費税などは補助対象外です。詳細は公募要領を必ずご確認ください。
申請手順と必要書類
申請は、国の電子申請システム「jGrants」と書類の郵送を併用して行います。
- STEP 1: gBizIDプライムアカウントの取得
jGrantsの利用には「gBizIDプライム」のアカウントが必須です。取得には2〜3週間かかる場合があるため、早めに手続きを開始してください。 - STEP 2: 事業計画の策定と3者見積の取得
事業計画を具体化し、導入する設備について原則3者以上の相見積もりを取得します。価格の妥当性を示す重要な書類となります。 - STEP 3: 申請書類の作成
SIIのホームページから指定様式をダウンロードし、実施計画書や経費配分などの書類を作成します。登記簿謄本や財務諸表などの添付書類も準備します。 - STEP 4: jGrantsでの電子申請
作成した申請書類の電子データをjGrantsに添付し、必要事項を入力して申請を完了させます。 - STEP 5: 申請書類の郵送
jGrantsでの申請と並行して、印刷・ファイリングした申請書類一式をSIIへ郵送します。期限日の12:00必着なのでご注意ください。
主な必要書類
- 補助金交付申請書(様式第1)
- 実施計画書、実施概要書
- 3者見積書及び選定理由書
- 一般送配電事業者との系統連系申し込み状況を証明する書類
- 会社・団体概要及び登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の写し
- 直近3期分の財務諸表(貸借対照表、損益計算書)の写し
※上記は一部です。詳細は必ず公募要領の「提出書類一覧」をご確認ください。
スケジュール
公募期間 | 2024年8月30日(金)~ 2024年10月31日(木)12:00必着 |
交付決定予定 | 2024年12月中旬 |
事業開始 | 交付決定日以降(発注・契約は交付決定後に行うこと) |
事業完了期限 | 2027年1月19日(火) |
よくある質問(FAQ)
Q1. リースで設備を導入する場合も対象になりますか?
A1. はい、対象になります。ただし、設備の所有者であるリース事業者と、使用者である貴社の2者による共同申請が必要です。また、リース料から補助金相当額が減額されていることを証明する必要があります。
Q2. 交付決定前に発注した設備は対象になりますか?
A2. いいえ、対象外です。補助対象経費に係る全ての発注・契約は、必ずSIIからの交付決定通知書に記載された交付決定日以降に行う必要があります。
Q3. 複数の拠点で申請は可能ですか?
A3. 1社あたりの申請上限数は、設備の種別(蓄電システム/水電解装置)ごとに2件までと定められています。申請は電力系統からの引込線単位となります。
まとめと公式情報
「令和6年度 系統用蓄電池・水電解装置導入支援事業」は、日本のエネルギー政策の根幹を支える重要な補助金です。補助額が大きい分、事業計画の緻密さや実現性が厳しく問われます。
申請を検討される事業者は、公募要領を熟読し、一般送配電事業者や設備メーカーと早期に連携を取りながら、万全の体制で準備を進めることが成功の鍵となります。
お問い合わせ先
一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)
事業第3部 系統用蓄電池・水電解装置導入支援事業担当
TEL:03-6260-6951
MAIL:k_ess_info@sii.or.jp
(受付時間:平日10:00~12:00、13:00~17:00)