2050年のカーボンニュートラル実現に向け、国は企業の脱炭素化を強力に後押ししています。その中核となるのが、環境省が主導する「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(通称:SHIFT事業)」です。本記事では、最大5億円という大規模な支援が受けられるSHIFT事業の概要、3つの支援メニュー、公募スケジュールについて、専門家が分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- ✓ SHIFT事業は工場・事業場のCO2削減を支援する環境省の補助金
- ✓ 「計画策定」「設備更新」「企業間連携」の3つの支援メニューがある
- ✓ 補助上限額は最大5億円、中小企業向けの優遇措置も充実
- ✓ 意欲的なCO2削減目標の達成に向けた先導的な取り組みが対象
SHIFT事業とは?工場の脱炭素化を加速させる国の切り札
SHIFT事業(Support for High-efficiency Installations for Facilities with Targets)は、工場や事業所における脱炭素化の先導的なモデルケースを創出し、その成功事例を広く展開することで、日本全体の温室効果ガス削減目標達成に貢献することを目的とした補助金制度です。
具体的には、意欲的なCO2削減目標を掲げる事業者を対象に、計画策定から設備更新、さらにはサプライチェーン全体での取り組みまでを一体的に支援します。
補助対象となる3つの支援事業
SHIFT事業は、企業の状況や目的に合わせて選べる3つの支援メニューで構成されています。それぞれの概要と補助額を見ていきましょう。
① CO2削減計画策定支援
工場・事業場における具体的なCO2削減目標や計画の策定を支援するメニューです。専門家の知見を活用し、実現可能性の高い計画を立てるための第一歩をサポートします。
- 補助率: 3/4
- 補助上限: 100万円
- DX型計画: CO2排出量を見える化するDXシステムを用いて運用改善を行う場合は、補助上限が200万円に引き上げられます。
② 省CO2型設備更新支援
策定したCO2削減計画に基づき、具体的な省エネ設備への更新を支援する、SHIFT事業のメインとなるメニューです。事業規模に応じて3つのカテゴリーに分かれています。
A. 標準事業
- 対象: 工場・事業場単位で15%以上、または主要システム系統で30%以上のCO2削減を実現する設備更新
- 補助率: 1/3
- 補助上限: 1億円
B. 大規模電化・燃料転換事業
- 対象: 電化・燃料転換を伴い、年間4,000t-CO2以上かつ30%以上のCO2削減を達成する大規模な設備更新
- 補助率: 1/3
- 補助上限: 5億円
C. 中小企業事業
- 対象: 中小企業等による設備更新
- 補助率: 1/2
- 補助上限: 0.5億円(※算出方法あり)
③ 企業間連携先進モデル支援
自社だけでなく、サプライヤーなどバリューチェーン全体での脱炭素化を目指す先進的な取り組みを支援します。Scope3排出量の削減に貢献する企業が対象です。
- 補助率: 1/3、1/2
- 補助上限: 5億円
公募スケジュール(令和5年度補正予算)
令和5年度補正予算事業の公募は以下のスケジュールで実施されました。次年度以降の公募も同様の時期になる可能性があるため、参考にしてください。
支援メニュー | 公募締切 |
---|---|
① CO2削減計画策定支援 | 令和6年5月31日(金) |
② 省CO2型設備更新支援 ③ 企業間連携先進モデル支援 |
一次公募:令和6年4月30日(火)12:00 |
二次公募:令和6年5月31日(金)12:00 |
【重要】申請のポイント
設備更新支援(②, ③)では、締切が2回設定されていました。一次公募で不採択となった場合でも、応募者が希望すれば自動的に二次公募で再審査される仕組みが用意されています。これは、諦めずに再チャレンジできる大きなメリットと言えます。
まとめ:SHIFT事業を活用して脱炭素経営へ
SHIFT事業は、企業の脱炭素化に向けた取り組みを計画段階から設備投資まで幅広く支援する、非常に強力な補助金です。特に、大規模な設備更新を検討している企業や、サプライチェーン全体でのCO2削減を目指す企業にとっては、またとない機会となります。
公募情報は毎年更新されるため、最新の情報を公式サイトで確認し、計画的な申請準備を進めることが採択への鍵となります。まずは自社の状況を把握し、どの支援メニューが活用できるか検討してみてはいかがでしょうか。