貴社の優れた技術やサービスを海外のインフラ市場で展開しませんか?経済産業省が実施する「質の高いインフラ海外展開FS支援事業」は、そんな海外進出を目指す日本企業を強力に後押しする制度です。本記事では、この魅力的な補助金の概要から対象経費、申請のポイント、そして川崎重工の採択事例まで、専門家が徹底解説します。
「質の高いインフラ海外展開FS支援事業」とは?
本事業は、日本企業が海外でインフラの受注や事業化を行う際に必要となる事業実施可能性調査(FS: Feasibility Study)や、マスタープラン策定にかかる費用を支援するものです。世界の膨大なインフラ需要を獲得し、日本の経済成長に繋げることを目的としています。
補助金の基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
補助金名 | 質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業費補助金 |
実施機関 | 経済産業省 |
補助額 | 上限5,000万円 |
補助率 | 対象経費の1/2以内(中小企業の場合は2/3以内) |
対象者 | 海外でインフラの受注・事業化を目指す日本企業(大企業、中小企業、スタートアップ等) |
委託費と補助金の2つの支援タイプ
本事業には「委託費」と「補助金」の2つの支援メニューがあります。それぞれの特徴は以下の通りです。
- 委託費:国が実施する政策的意義の高い案件(公益性、波及性、先進性が高い案件)が対象。上限1億円。
- 補助金:企業による短期的な受注・事業化を目的とした個別具体的な案件が対象。上限5,000万円。
多くの企業にとって、自社の事業計画に直結する「補助金」が主な申請ターゲットとなります。
補助対象となる主な経費
この補助金では、事業化に向けた調査にかかる幅広い費用が対象となります。具体的には以下のような経費が認められます。
- 相手国への提案に必要な情報収集、調査、分析費用
- 市場規模や需要の予測、経済性の評価
- 環境影響調査や社会影響調査などのリスク分析
- 競合他社の動向把握、差別化の検討
- インフラの基本的な設計費用
- 事業規模、コスト、収入等の算出
- ファイナンスや事業実施体制の検討
【重要】対象外となる費用
試作品の開発費や設備の導入費など、「実証」にかかる費用は補助対象外となりますのでご注意ください。あくまで事業化の「可能性を調査する」ための費用が対象です。
【令和5年度採択事例】川崎重工のVSG調査事業
実際にどのような事業が採択されているのでしょうか。令和5年度に採択された川崎重工業株式会社の事例を見てみましょう。
フィリピン・マレーシアにおける仮想同期発電機制御(VSG)調査事業
この事業は、再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電力系統の不安定化という課題を解決する技術「VSG(仮想同期発電機制御)」を搭載したインバータの事業化可能性を調査するものです。
【この事例から学ぶポイント】
- カーボンニュートラルへの貢献:再生可能エネルギーの普及に不可欠な系統安定化技術であり、世界の脱炭素化の流れに合致しています。
- ASEAN諸国での展開:経済成長が著しいフィリピンやマレーシアを対象としており、今後の市場拡大が期待される地域での事業展開を目指しています。
- 技術的優位性:日本の高い技術力を活かし、現地の社会課題解決に貢献する「質の高いインフラ」の具体例と言えます。
公募で重視されるテーマ
近年の公募では、「インフラシステム海外展開戦略2025」に沿った以下の分野が特に重視される傾向にあります。自社の事業計画がこれらのテーマに合致するか確認しましょう。
水素・アンモニア、再エネ、省エネ技術など
DX、データ活用、スマートシティ、デジタルプラットフォームなど
O&M(運営・保守)、事業運営への参画など
まとめ:海外展開の第一歩をこの補助金で!
「質の高いインフラ海外展開FS支援事業」は、海外市場への挑戦に伴う初期段階のリスクやコストを大幅に軽減できる、非常に価値のある制度です。特に、脱炭素やDXといった世界的な潮流に沿った事業計画は高く評価される傾向にあります。
公募は例年春から初夏にかけて行われます。海外展開を検討している企業は、今から情報収集と事業計画の策定を進め、次回の公募に備えることを強くお勧めします。