事業再構築補助金(第9回公募)とは?
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援する制度です。新分野展開、業態転換、事業・業種転換など、企業の新たな挑戦を後押しし、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。本記事では、特に第9回公募に焦点を当て、その詳細を分かりやすく解説します。
補助金の概要(第9回公募)
項目 | 内容 |
公募期間 | 受付終了 (令和5年1月16日(月) ~ 令和5年3月24日(金)18:00まで) |
補助対象者 | 日本国内に本社を有する中小企業者等及び中堅企業等 |
補助金額 | 100万円 ~ 最大1.5億円(申請枠・従業員規模により変動) |
補助率 | 中小企業者等: 1/2 ~ 3/4 中堅企業等: 1/3 ~ 2/3 |
申請方法 | Jグランツによる電子申請のみ(GビズIDプライムアカウント必須) |
申請類型(枠)ごとの要件と補助額
第9回公募では、事業者の状況に応じて複数の申請類型(枠)が用意されていました。自社の状況に最も適した枠を選択することが採択への重要な鍵となります。
1. 通常枠
新分野展開や業態転換など、最も標準的な事業再構築に取り組む事業者を支援する枠です。
- 補助金額: 従業員数に応じて100万円~8,000万円
- 補助率:
中小企業者等: 2/3 (6,000万円超は1/2)
中堅企業等: 1/2 (4,000万円超は1/3) - 主要要件:
①事業再構築指針に該当する事業であること
②売上高等が減少していること(コロナ以前と比較して10%以上減少)
③認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること
2. 大規模賃金引上枠
継続的な賃金引上げと従業員増員に取り組み、生産性を向上させる事業者を対象とした枠です。
- 補助金額: 8,000万円超~1億円(従業員101人以上)
- 補助率: 通常枠に同じ
- 追加要件:
・事業場内最低賃金を年額45円以上引上げ
・従業員数を年率平均1.5%以上増員
3. 回復・再生応援枠
業況が特に厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者を対象に、補助率を引き上げて支援する枠です。
- 補助金額: 従業員数に応じて100万円~1,500万円
- 補助率: 中小企業者等 3/4, 中堅企業等 2/3
- 追加要件:
・2021年10月以降の売上が対2020年or2019年同月比で30%以上減少
または
・中小企業活性化協議会等から支援を受け再生計画等を策定
4. 最低賃金枠
最低賃金引上げの影響を受け、原資確保が困難な事業者を対象とした枠です。回復・再生応援枠より採択率で優遇されます。
- 補助金額: 従業員数に応じて100万円~1,500万円
- 補助率: 中小企業者等 3/4, 中堅企業等 2/3
- 追加要件:
・2021年10月~2022年8月の間で3か月以上、最低賃金+30円以内で雇用する従業員が全体の10%以上いること
5. グリーン成長枠
グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を支援する枠で、売上高減少要件がありません。
- 補助金額: 中小企業者等: 最大1億円, 中堅企業等: 最大1.5億円
- 補助率: 中小企業者等 1/2, 中堅企業等 1/3
- 追加要件:
・グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決に資する取組であること
・2年以上の研究開発・技術開発または人材育成をあわせて行うこと
6. 緊急対策枠
原油価格・物価高騰等の影響を受けている事業者を対象とした枠です。こちらも売上高減少要件がありません。
- 補助金額: 従業員数に応じて100万円~4,000万円
- 補助率: 中小企業者等 3/4, 中堅企業等 2/3(補助額により変動あり)
- 追加要件:
・2022年1月以降の売上が2019年~2021年の同月比で10%以上減少していること
補助対象となる経費・ならない経費
⭕ 補助対象経費の例
- 建物費: 建物の建築・改修、建物の撤去費など
- 機械装置・システム構築費: 設備、専用ソフトの購入やリース等
- 技術導入費: 知的財産権導入に要する経費
- 専門家経費: 技術指導や助言を依頼した専門家への謝礼
- 広告宣伝・販売促進費: 広告作成、媒体掲載、展示会出展等
- 研修費: 教育訓練費、講座受講料など
❌ 補助対象外経費の例
- 従業員の人件費、旅費
- 不動産、株式、公道を走る車両の購入費
- 汎用品(PC、スマホ、家具など)の購入費
- フランチャイズ加盟料
- 消耗品費、光熱水費、通信費
- 事務所の家賃、保証金、敷金
重要ポイント
補助対象経費は、事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への投資であることが大前提です。一過性の支出や汎用性の高い経費は対象外となるため、計画段階でしっかり確認しましょう。
申請から補助金受給までの流れ
- 公募開始: 公募要領が公開され、申請受付が開始されます。
- 事業計画策定・申請準備: 認定経営革新等支援機関と相談し、事業計画書を作成。GビズIDプライムアカウントもこの段階で取得します。
- 電子申請: Jグランツを利用して、期間内に申請を完了させます。
- 採択通知: 審査が行われ、採択・不採択の結果が通知されます。
- 交付申請: 採択後、補助対象経費を精査し、正式に補助金の交付申請手続きを行います。
- 交付決定・補助事業実施: 交付決定通知を受け、事業計画に基づき設備投資などを開始します。期間は原則として交付決定日から12か月以内です。
- 実績報告: 事業完了後、実績報告書と経費の証拠書類を提出します。
- 確定検査・交付額の確定: 事務局による検査を経て、最終的な補助金額が確定します。
- 補助金の請求・支払: 確定した金額を請求し、補助金が支払われます。
- 事業化状況報告: 補助金受給後も5年間、事業の状況を報告する義務があります。
申請前の重要準備事項
1. GビズIDプライムアカウントの発行
申請は電子申請システム「Jグランツ」で行うため、GビズIDプライムアカウントが必須です。発行には1週間程度かかるため、公募開始前から早めに準備を進めましょう。
2. 認定経営革新等支援機関との連携
事業計画の策定は、国から認定された専門家である「認定経営革新等支援機関」との共同作業が必須です。信頼できるパートナーを見つけ、計画を練り上げることが採択の鍵となります。
まとめ
事業再構築補助金は、企業の未来を切り拓く大きなチャンスとなる制度ですが、その分、事業計画の質が厳しく問われます。第9回公募は終了しましたが、今後も同様の制度が継続される可能性があります。本記事で解説した要件や流れを参考に、自社の強みを活かした革新的な事業計画を検討してみてはいかがでしょうか。