この記事のポイント
- 政府が打ち出した「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」で利用できる補助金・助成金を網羅的に解説。
- 電気・ガス代の負担軽減、賃上げ促進、省エネ設備投資など、事業者と個人の双方に役立つ支援策が満載。
- 事業再構築補助金やものづくり補助金など、人気補助金の拡充・変更点も詳しく紹介。
- 自社や自身の状況に合わせて、どの支援策が活用できるか一目でわかります。
昨今、世界的な物価高騰や円安の進行により、多くの事業者や国民の生活に大きな影響が及んでいます。このような厳しい状況を乗り越えるため、政府は「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を策定し、大規模な補正予算を組んで多角的な支援策を打ち出しました。本記事では、この総合経済対策に含まれる膨大な支援策の中から、特に事業者や個人が活用できる補助金・助成金に焦点を当て、専門家が分かりやすく解説します。
総合経済対策の4つの柱
今回の総合経済対策は、以下の4つの柱で構成されています。それぞれの柱に対応する具体的な支援策を見ていきましょう。
- 物価高騰・賃上げへの取組
- 円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化
- 「新しい資本主義」の加速
- 国民の安全・安心の確保
Ⅰ. 物価高騰・賃上げへの取組に関する主要支援策
最も注目されるのが、日々のコスト増に直結する物価高騰への対策と、持続的な経済成長に不可欠な賃上げを促進する支援策です。
エネルギー価格高騰対策
家庭や企業の負担を直接的に軽減するための支援策が実施されています。
電気・ガス価格激変緩和対策事業
2023年1月使用分(2月請求分)から、電気・都市ガス料金の値引きが開始されています。検針票やWeb明細で「政府の支援」として値引き額が明記されています。
対象 | 値引き単価(2023年1月~8月使用分) |
---|---|
電気(低圧契約の家庭等) | 7円/kWh |
電気(高圧契約の企業等) | 3.5円/kWh |
都市ガス | 30円/㎥ |
※2023年9月使用分は値引き幅が縮小されます。
省エネ・脱炭素化への支援
エネルギーコストを根本的に削減するための設備投資を強力に後押しします。
省エネ設備更新の補助金(省エネルギー投資促進支援事業)
工場や事業場における省エネ性能の高い設備への更新を支援する大型の補助金です。3年間で集中的に支援が行われます。
- 先進事業: 大幅な省エネを実現する先進設備導入(補助率: 中小2/3, 大企業1/2)
- オーダーメイド事業: 個別設計が必要な特注設備等の導入(補助率: 中小1/2, 大企業1/3)
- 指定設備導入事業: 性能の高いユーティリティ設備等への更新(補助率: 1/3)
進捗状況:2023年3月下旬から1次公募が開始されています。複数年にわたる投資計画に対応できる点が大きな特徴です。
家庭向け住宅省エネ化支援
家庭のエネルギー消費を抑えるため、3省庁連携でワンストップ対応可能な支援策が用意されています。
- こどもエコすまい支援事業(国交省): ZEHレベルの新築住宅取得や省エネ改修を支援(新築最大100万円/戸)。
- 住宅の断熱性能向上のための先進的設備導入促進事業(経産省・環境省): 高い断熱性能を持つ窓への改修を重点支援。
- 高効率給湯器導入促進事業(経産省): エコキュート等への買い替えを支援(5万円~15万円/台)。
進捗状況:2023年3月下旬より交付申請受付が開始されています。事業者登録を行ったリフォーム会社等を通じて申請します。
事業再構築・生産性向上と賃上げ促進
企業の成長投資を促し、それが従業員の賃金に反映される好循環を生み出すための支援策が拡充されています。
中小企業等事業再構築促進事業の拡充
ポストコロナを見据えた事業転換を支援する人気の補助金が、物価高騰や賃上げに対応するため、新たな枠を設けて拡充されました。
- 成長枠の新設: 成長分野への転換を図る事業者を支援。売上高減少要件が撤廃され、使いやすさが向上。
- 産業構造転換枠の新設: 市場が縮小する業種からの転換を支援。
- サプライチェーン強靱化枠の新設: 海外製造部品の国内回帰などを支援。
- 賃上げに対するインセンティブ強化: 大胆な賃上げに取り組む事業者に対し、補助率や補助上限額が引き上げられます。
中小企業生産性革命推進事業(ものづくり・持続化・IT導入補助金)
設備投資、販路開拓、ITツール導入を支援する3つの補助金も、賃上げやインボイス制度への対応を重点的に支援する内容に強化されています。
- ものづくり補助金: 大幅な賃上げで補助上限を最大1,000万円上乗せ。
- 持続化補助金: インボイス発行事業者への転換で補助上限を一律50万円上乗せ。
- IT導入補助金: インボイス対応の安価なITツール導入を支援するため、補助下限額を撤廃。
業務改善助成金の拡充
事業場内最低賃金の引き上げに取り組む中小企業を支援する助成金です。助成上限額の引き上げや対象経費の拡大が行われました。
Ⅱ. 円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化
円安をチャンスと捉え、インバウンド需要の取り込みや輸出拡大を目指す事業者向けの支援が強化されています。
観光・インバウンド関連支援
- 地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化: 宿泊施設や観光施設の改修、廃屋撤去などを支援し、魅力的な観光地づくりを後押しします。
- インバウンドの本格的な回復に向けた集中的な取組: 文化、自然、食などの分野で特別な体験コンテンツの創出を支援し、全世界に発信します。
輸出拡大支援
新規輸出中小企業1万者支援プログラム
これまで輸出に取り組んでこなかった中小企業を対象に、専門家による伴走支援、輸出向け商品開発、販路開拓などを一気通貫でプッシュ型支援するプログラムです。2022年12月から開始され、既に多くの事業者が登録しています。
Ⅲ. 「新しい資本主義」の加速
人への投資(リスキリング)、スタートアップ育成、GX(グリーン・トランスフォーメーション)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)への投資を加速させるための支援策です。
人への投資(リスキリング)
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
在職者がキャリア相談、リスキリング、転職までを一体的に支援する仕組みです。個人が民間の専門家に相談し、スキルアップと円滑な労働移動を目指します。
人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」の創設
企業が従業員に対し、新規事業立ち上げなどに必要なスキルを習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や賃金の一部を高率で助成します。
まとめ:自社に合った支援策を見つけ、積極的に活用を
今回の総合経済対策には、非常に多岐にわたる支援策が盛り込まれています。物価高という目の前の課題に対応する支援から、事業再構築やDX、GXといった未来への投資を後押しする支援まで、あらゆるフェーズの事業者が活用できる可能性があります。
まずは自社の経営課題を洗い出し、どの支援策が最も効果的かを見極めることが重要です。各補助金・助成金の公募は順次開始されていますので、公式サイトで最新情報を確認し、申請準備を進めましょう。