休廃止鉱山の環境対策は待ったなし!国の補助金で持続可能な管理へ
休止または廃止された鉱山(休廃止鉱山)から発生する坑廃水は、周辺環境への影響が懸念され、その対策は事業者や地域にとって大きな課題です。対策工事には多額の費用がかかるため、頭を悩ませている担当者様も多いのではないでしょうか。
そこで活用したいのが、経済産業省が管轄する「休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金」です。この制度は、鉱害防止工事や、それに伴うエネルギー使用合理化事業にかかる費用の一部を国が補助するもので、環境保全とコスト削減を両立させる強力な一手となります。
💡 この記事でわかること
- 補助金の目的と誰が対象になるのか
- 補助される金額や補助率の詳細
- 具体的な補助対象事業の例
- 申請に向けた準備とJOGMECの役割
補助金制度の概要
まずは、本補助金の基本情報を確認しましょう。令和5年度には、非鉄金属大手の東邦亜鉛株式会社が本制度を活用し、合計1億円以上の補助を受けています。
項目 | 内容 |
---|---|
制度名 | 休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金 / 休廃止鉱山の鉱害防止に係るエネルギー使用合理化事業費補助金 |
実施機関 | 経済産業省(各地方経済産業局) |
目的 | 休廃止鉱山における鉱害の発生を防止し、国民の健康保護及び生活環境を保全する。 |
補助額(実績) | 最大9,961万円(令和5年度実績) ※事業規模や内容により変動します。 |
補助率 | 補助対象経費の3/4以内 |
対象者 | 休廃止鉱山の鉱害防止事業を実施する地方公共団体、鉱業権者、その他鉱害防止義務者など |
補助の対象となる事業
本補助金は、主に2種類の事業を対象としています。自社や管理地域で計画している事業が該当するか確認しましょう。
1. 鉱害防止工事
坑廃水処理施設の建設や改修など、鉱害を直接的に防止するための工事が対象です。
- 坑廃水処理施設(中和処理施設など)の新設・増設・改修
- 堆積場の安定化対策工事
- 坑口の閉塞工事
- 恒久排水路トンネルの設置
2. エネルギー使用合理化事業
鉱害防止施設の運用にかかるエネルギーコストを削減するための設備投資が対象となります。
- 高効率なポンプや送風機への更新
- 処理施設の監視・制御システムの導入による運転最適化
- 自然エネルギーを利用した浄化システム(パッシブトリートメント)の導入
- 照明設備のLED化
⚠️ 注意点:補助対象経費
補助の対象となるのは、調査設計費、工事費、設備費など、事業の実施に直接必要な経費です。土地の取得費用や維持管理費は対象外となる場合が多いため、公募要領で詳細を必ず確認してください。
申請プロセスとJOGMECの役割
申請は、管轄の地方経済産業局に対して行います。専門性が高い事業であるため、計画段階から入念な準備が必要です。
- 事前相談: 管轄の経済産業局やJOGMECに事業計画を相談します。
- 公募・申請: 年度初めに公募が開始されるのが一般的です。公募要領に従い、申請書類を提出します。
- 審査・採択: 提出された事業計画の妥当性や効果について審査が行われ、採択・不採択が決定します。
- 交付決定・事業開始: 交付決定後、事業を開始します。
- 事業完了・実績報告: 事業完了後、実績報告書を提出し、検査を経て補助金額が確定・支払われます。
ここで重要な役割を担うのが、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)です。JOGMECは、資金面だけでなく、鉱害防止に関する高度な知見を活かした技術支援も行っています。
JOGMECによる技術支援
JOGMECは、地方公共団体や企業の要請に応じて、鉱害防止対策の方針策定に関する調査指導や、工事設計・施工に関する技術的支援を実施しています。事業計画の策定段階から専門家のサポートを受けることで、採択の可能性を高め、より効果的な事業実施が可能になります。
まとめ:専門家と連携し、計画的な環境対策を
「休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金」は、休廃止鉱山の管理という重い責務を負う事業者や地方公共団体にとって、非常に価値のある制度です。補助率が3/4と高く、大規模な工事にも対応できるため、これまで費用面で断念していた対策を実行に移す絶好の機会と言えるでしょう。
申請には専門的な知見が不可欠ですので、まずは管轄の経済産業局やJOGMECのウェブサイトで最新情報を確認し、早めに相談を開始することをお勧めします。