災害時のエネルギー供給確保や脱炭素社会の実現に向けて、地域内でエネルギーを自給自足する「マイクログリッド」への注目が高まっています。今回は、こうした先進的な取り組みを強力に後押しする「令和6年度 配電事業等の構築支援および計画策定支援事業(地域独立系統構築支援事業)」について、専門家が分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- 災害に強い自立分散型エネルギーシステムの構築を支援する補助金
- 補助上限額は最大4億円、補助率は対象経費の1/2以内
- 地方公共団体を含むコンソーシアム(共同事業体)での申請が必須
- 再生可能エネルギー発電設備、蓄電池、EMSの導入が対象
- ※令和6年度の公募は2024年7月19日に終了しました。本記事は来年度以降の申請に向けた参考情報としてご活用ください。
地域独立系統構築支援事業とは?
本事業は、災害などによる大規模・長期停電が発生した際にも、地域内の重要施設へ電力を安定供給できる「地域独立系統(マイクログリッド)」の構築を支援するものです。平常時は系統と連系してエネルギーの効率利用を図り、非常時には系統から切り離して自立運転することで、地域の防災力(レジリエンス)向上と再生可能エネルギーの導入拡大を同時に実現することを目的としています。
補助金の概要(令和6年度公募情報)
項目 | 内容 |
---|---|
補助上限額 | 4億円 / 申請 (複数年度事業の場合、単年度上限4億円) |
補助率 | 補助対象経費の 1/2以内 |
公募期間 | 2024年5月29日(水)~ 2024年7月19日(金) 12:00 必着 ※終了 |
対象事業者 | 地方公共団体、民間事業者等で構成されるコンソーシアム |
対象事業 | 配電事業等の参入を見据えたマイクログリッドの構築事業 |
申請方法 | jGrants(電子申請システム)による申請 |
補助対象となる事業の10の要件
本補助金の対象となるには、以下の10個の要件をすべて満たす必要があります。特に重要なポイントを解説します。
- 災害時の長期停電に発動可能なマイクログリッドを構築すること。
- 配電事業に係る兼業規制の適用除外基準に該当する事業規模であること。
- 原則として①再生可能エネルギー発電設備、②需給調整設備(蓄電池等)、③エネルギーマネジメント設備の全てを含むこと。
- 系統線を活用するマイクログリッドであること。(自営線のみは対象外)
- 平常時から需給バランスのモニタリングを行うこと。
- 長期停電時にマイクログリッド運用者が需給調整を行う仕組みがあること。
- 地域の地方公共団体が指定する防災に資する施設を含むこと。
- 地方公共団体を含む共同事業体(コンソーシアム)にて運用されること。
- コンソーシアム契約(案)に、構築範囲や各者の役割、発動条件等を明記すること。
- 構築完了後1年以内に災害対応訓練を実施できること。
最重要ポイント:コンソーシアム形成
この補助金の最大の特長は、地方公共団体を必ず含むコンソーシアムでの申請が必須である点です。地域のエネルギー事業者、設備を所有する事業者、需要家など、多様な関係者が連携し、地域一体となって事業を推進する体制が求められます。
補助対象となる経費
補助の対象となる経費は以下の通りです。事業の計画段階から設備導入、工事まで幅広くカバーされています。
- 設計費
- 設備費(再生可能エネルギー発電設備、EMS、蓄電池、受変電設備など)
- 工事費
- 人件費
申請手続きの流れ
申請は電子申請システム「jGrants」を利用します。来年度の申請を検討される方は、早めに準備を進めましょう。
- 1gBizIDプライムアカウントの取得
jGrantsの利用に必須です。取得には2〜3週間かかる場合があるため、最優先で手続きしましょう。 - 2コンソーシアム組成と事業計画策定
地方公共団体や地域の事業者と連携し、事業計画を具体化します。最も時間と労力がかかる部分です。 - 3必要書類の準備
公募要領を確認し、実施計画書やコンソーシアム契約書(案)など、必要な書類を準備します。 - 4jGrantsでの電子申請
公募期間内に、jGrants上で全ての書類を提出し、申請を完了させます。 - 5審査・交付決定
審査委員会による審査を経て、採択されると交付が決定されます。
まとめ:来年度に向けた準備を始めよう
「地域独立系統構築支援事業」は、補助額が大きく、地域の防災力向上と脱炭素化に大きく貢献できる、非常に魅力的な補助金です。しかし、その分、地方公共団体を巻き込んだコンソーシアム形成や詳細な事業計画が求められ、申請難易度は非常に高いと言えます。
令和6年度の公募は終了しましたが、同様の事業が来年度以降も継続される可能性は十分にあります。この補助金の活用を検討される事業者は、今から情報収集を開始し、地域の関係者との連携体制構築に向けて動き出すことを強くお勧めします。