2024年、日本の脱炭素化に向けた大きな一歩となる「令和6年度 非化石エネルギー等導入促進対策費補助金(水素等供給基盤整備事業)」の採択結果が公表されました。この補助金は、次世代エネルギーとして期待される水素やアンモニアの安定供給網(サプライチェーン)構築を後押しするものです。特に注目されるのは、北海道・大阪・福島の3地域で大規模なアンモニア供給拠点の実現可能性調査(FS)が採択された点です。本記事では、この重要な補助金の概要と、採択された注目のプロジェクトについて詳しく解説します。
令和6年度「水素等供給基盤整備事業補助金」とは?
本補助金は、経済産業省 資源エネルギー庁が主導し、水素やアンモニアなどのクリーンエネルギーを社会に普及させるためのインフラ整備を目的としています。特に、大規模な需要を創出し、経済的にも自立可能なサプライチェーンを構築するための初期段階である実現可能性調査(Feasibility Study: FS)にかかる経費を支援するものです。
補助金 基本情報
補助金名 | 令和6年度 非化石エネルギー等導入促進対策費補助金(水素等供給基盤整備事業) |
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実施機関 | 経済産業省 資源エネルギー庁 |
公募団体 | エネルギー供給構造高度化事業コンソーシアム(CROS) |
目的 | 水素等の大規模な利用ニーズ創出と、経済的・効率的かつ自立発展が可能なサプライチェーンの構築 |
補助対象 | 供給基盤構築の実現可能性調査(FS)に要する経費の一部 |
2024年度採択!注目のアンモニア供給拠点プロジェクト
ポイント:全国3つの重要拠点での調査が始動!
今回、日本のエネルギー政策上、重要な拠点となる北海道、大阪、福島の3地域で、それぞれ特色ある企業コンソーシアムによるアンモニア供給拠点の調査事業が採択されました。これらのプロジェクトは、日本のカーボンニュートラル実現に向けた試金石となります。
1. 北海道苫小牧地域プロジェクト
北日本広域圏へのエネルギー供給拠点を目指すプロジェクトです。電力会社や化学メーカー、総合商社など多様な6社が連携し、大規模なアンモニア供給網の構築を目指します。
- 参加企業: 北海道電力、北海道三井化学、IHI、丸紅、三井物産、苫小牧埠頭
- 目標: 2030年度までのアンモニア供給拠点事業開始
- 特徴: 苫小牧地域を起点に、北日本全体へのサプライチェーン構築を視野に入れる。
2. 大阪堺・泉北地域プロジェクト
関西・瀬戸内エリアの広域需要地への供給を目指すプロジェクト。日本の主要な工業地帯である大阪臨海部を拠点に、広域経済圏の脱炭素化に貢献します。
- 参加企業: 三井物産、三井化学、IHI
- 目標: 2030年度までの供給開始
- 特徴: 関西・瀬戸内広域経済圏の脱炭素化を牽引する拠点を目指す。
3. 福島県相馬地区プロジェクト
東北・北海道から関東以北の広域圏への供給を担うプロジェクト。エネルギー開発や海運のプロフェッショナルが集結し、東日本のエネルギー転換を支えます。
- 参加企業: 石油資源開発、三菱ガス化学、IHI、三井物産、商船三井
- 目標: 相馬地区を拠点としたアンモニア供給網の構築
- 特徴: 福島県や地元自治体と連携し、官民一体で地域の脱炭素化と経済発展に貢献。
なぜ今「アンモニア」が注目されるのか?
アンモニア(NH₃)は、燃焼時にCO₂を排出しないクリーンな燃料として注目されています。また、水素を効率的に貯蔵・輸送するための「水素キャリア」としての役割も期待されています。既存のインフラ(タンカーや貯蔵タンク)を活用しやすいため、比較的早期の社会実装が見込まれており、政府も「水素社会推進法」などを通じてその導入を強力に後押ししています。
まとめ
今回採択された3つのプロジェクトは、日本のエネルギー供給網を根底から変える可能性を秘めています。これらの実現可能性調査が成功裏に終われば、2030年代には国内の主要拠点からクリーンなアンモニアが安定的に供給される未来が現実のものとなります。これは、日本の産業競争力強化とカーボンニュートラル達成の両立に向けた、極めて重要な一歩と言えるでしょう。今後の各プロジェクトの進捗に注目が集まります。