物流業界の喫緊の課題である「2024年問題」。輸送力不足の危機が迫る中、荷主企業や物流事業者の業務効率化は待ったなしの状況です。この記事では、経済産業省が主導する令和5年度補正予算事業「物流効率化に向けた先進的な実証事業」について、専門家が分かりやすく徹底解説します。
この記事のポイント
- 物流2024年問題対策に直結する国の大型支援事業の全貌がわかる
- 「荷主企業向け」と「自動配送ロボット」の2つの事業内容を詳しく解説
- 補助対象となる設備やシステムの具体例を網羅
- 公募は終了しましたが、次年度以降の同様の補助金申請に向けた重要な情報源となります
「物流効率化に向けた先進的な実証事業」とは?
本事業は、物流の持続可能性を確保するため、特に荷主企業の行動変容を促すことを目的とした国の支援策です。物流効率化に資する先進的な設備やシステムへの投資を支援し、その効果を実証・横展開することで、業界全体の投資意欲を喚起することを目指しています。
この事業は、以下の2つの柱で構成されています。
- 荷主企業における物流効率化に向けた先進的な実証事業
- 自動配送ロボット導入促進実証事業
① 荷主企業における物流効率化に向けた先進的な実証事業
この事業は、荷主企業の物流施設における自動化・機械化を支援し、省力化や物流効率化の効果を明らかにするための実証事業です。2024年問題の解決に直接貢献する取り組みが対象となります。
補助対象者
対象は、中堅・中小企業の荷主企業です。3PL事業者なども含まれます。
【重要】荷主事業者の定義
本事業における荷主事業者とは、貨物自動車運送事業者と運送契約を結び貨物の運送を委託する者、または貨物を引き渡す者を指します。ただし、貨物自動車運送事業や倉庫業を専業で行う者は除かれます。
補助内容(補助率・上限額)
企業の規模や申請形式によって補助率や上限額が異なります。
対象区分 | 補助率 | 補助上限額 | 投資下限要件 |
---|---|---|---|
中小企業等 | 補助対象経費の2/3以内 | 1億円 | 300万円以上 |
中堅企業等 | 補助対象経費の1/2以内 | 5億円 | 5,000万円以上 |
※コンソーシアム形式の場合、補助率は構成員ごとに決まります。投資下限要件はコンソーシアム全体の合計で満たすことが可能です。
補助対象経費
物流効率化に直接的に貢献する、以下の経費が対象となります。
- 機械装置・システム費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 外注費
- その他諸経費
経費に関する注意点
原則として、交付決定日以降に契約・発注し、事業期間内(〜2025年2月7日)に支払いが完了したものが対象です。また、対象は輸配送、保管、包装、荷役など物流に密接な領域に限定されます。
対象となる具体的な取り組みと設備例
申請には、以下の2つの要件を満たす物流効率化計画の策定が必要です。
- ア.物流事業者側の業務効率化:「荷待ち・荷役時間の削減」または「積載率の向上」が必須。
- イ.物流施設側の業務効率化:従業員の総労働時間を導入前と比較して3%以上削減すること。
【機器導入例】

入出荷関連
トラックローダー、パレタイザー等

保管関連
自動倉庫、保管ラック、パレット等

運搬関連
コンベア、AMR、AGV等

仕分け関連
自動仕分け機、ピッキングシステム等
【システム導入例】
バース予約システム、倉庫管理システム(WMS)、伝票電子化・物流EDI、AIカメラ・システム、RFID等自動検品システムなど
公募期間とスケジュール
一次公募 | 2024年3月7日(木) ~ 4月3日(水)17:00 (受付終了) |
二次公募 | 2024年4月12日(金) ~ 5月20日(月)17:00 (受付終了) |
事業期間 | 交付決定日 ~ 2025年2月7日(金) |
② 自動配送ロボット導入促進実証事業
ラストワンマイル配送における輸送力不足の解決策として期待される自動配送ロボットの社会実装を加速させるための事業です。サービス提供事業者が行う大規模な実証事業の費用を補助します。
補助内容(補助率・上限額)
対象区分 | 補助率 | 補助上限額 |
---|---|---|
中小企業 | 補助対象経費の2/3以内 | 8,000万円 |
大企業 | 補助対象経費の1/3以内 | 4,000万円 |
公募期間
2024年3月1日(金) ~ 4月8日(月)17:00 (受付終了)
申請前に確認すべき重要ポイント
コンソーシアム形式での申請
コンソーシアムのメリット
複数の事業者が連携体(コンソーシアム)を組んで共同申請することが可能です。これにより、投資下限要件を全構成員の合計で満たすことができます。また、荷主事業者に該当する大企業も、中堅・中小企業とのコンソーシアムに限り参画が認められます(ただし大企業は補助対象外)。
申請方法と関連資料
申請は電子申請システム「Jグランツ」または事務局指定のデータ送受信サービスで行われました。申請には事業計画書をはじめ、多数の書類が必要です。公募は終了していますが、公募要領や様式は次年度以降の参考になりますので、公式サイトで確認しておくことをお勧めします。
まとめ
「物流効率化に向けた先進的な実証事業」は、物流2024年問題という大きな課題に対し、国が強力に後押しする重要な補助金です。倉庫の自動化・機械化や、自動配送ロボットの導入を検討している事業者にとって、非常に魅力的な内容となっています。
令和5年度補正予算の公募はすでに終了していますが、物流効率化の重要性は今後ますます高まるため、同様の事業が次年度以降も実施される可能性があります。今回の事業内容を参考に、自社の課題を整理し、導入したい設備やシステムを具体的に検討しておくことが、次のチャンスを掴む鍵となるでしょう。
お問い合わせ先
物流効率化に向けた先進的な実証事業事務局
- ① 荷主企業における物流効率化に向けた先進的な実証事業
E-mail: info_logi@logiefficiency-meti.jp - ② 自動配送ロボット導入促進実証事業
E-mail: info_robot@logiefficiency-meti.jp