はじめに:省エネ設備投資を加速させる国の支援策
カーボンニュートラルの実現に向け、企業の省エネルギーへの取り組みはますます重要になっています。しかし、高効率な設備への更新には多額のコストがかかるのが実情です。そこで注目されるのが、国が実施する大規模な補助金制度です。本記事では、経済産業省が管轄する主要な省エネ補助金である「省エネルギー投資促進支援事業」と「先進的省エネルギー投資促進支援事業」について、その概要や違い、2024年現在の公募状況、そして今後の動向までを専門家の視点で徹底解説します。
令和5年度補正「省エネルギー投資促進支援事業」を深掘り
まず、多くの事業者が活用を検討する「省エネルギー投資促進支援事業」について見ていきましょう。この事業は、汎用的な省エネ設備への更新を支援することを目的としています。
事業の目的と概要
本事業は、工場・事業場における既設のユーティリティ設備や生産設備を、エネルギー消費効率の高い設備へ更新する際の費用を一部補助するものです。特に、あらかじめ定められたエネルギー消費効率の基準を満たす設備を導入する「(Ⅲ)設備単位型」が広く利用されています。
補助対象となる設備(設備単位型)
補助対象となるのは、執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が製品型番を登録・公表している設備です。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 高効率空調
- 業務用給湯器
- 高性能ボイラ
- 高効率変圧器
- 冷凍冷蔵設備
- 産業用モータ
- LED照明器具 など
【重要】令和5年度補正事業の公募状況について
令和5年度補正予算「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」は、予算を超える申請があったため、
3次公募は実施されない予定です。
2次公募は2024年7月1日をもって終了しています。今後の補助金活用を検討される場合は、後述する令和6年度以降の事業にご注目ください。
「先進的省エネルギー投資促進支援事業」とは?
次に、もう一つの柱である「先進的省エネルギー投資促進支援事業」です。こちらは、より高度で大規模な省エネ投資を対象としています。
事業の目的と特徴
この事業は、先進的で高い省エネ効果が期待できる技術や設備の導入を支援するものです。個別の設備更新ではなく、事業所全体で大幅なエネルギー効率改善を目指すオーダーメイド型の計画が中心となります。そのため、申請には詳細な省エネ計算や計画策定が求められ、難易度は比較的高くなります。
新規公募は実施されていません
令和5年度および令和6年度の「先進的省エネルギー投資促進支援事業費」については、新規事業の公募および採択は実施されていません。現在は、令和4年度以前に採択された複数年度事業の継続が対象となっています。
2つの主要省エネ補助金を徹底比較
ここで、2つの事業の違いを分かりやすく表にまとめました。
項目 | 省エネルギー投資促進支援事業 | 先進的省エネルギー投資促進支援事業 |
---|---|---|
コンセプト | 汎用的な省エネ設備の導入支援 | 先進技術を用いた大規模な省エネ投資支援 |
主な対象 | 指定された型番の設備(設備単位型) | 事業所全体のオーダーメイド計画 |
申請難易度 | 比較的容易 | 高い(詳細な計画が必要) |
2024年の新規公募 | 終了(3次公募なし) | なし |
申請前に知っておきたい重要ポイントと今後の動向
公募は終了していますが、今後の補助金申請に向けて知っておくべき重要なポイントがいくつかあります。
今後の省エネ関連補助金の見通し
今回解説した事業は終了しましたが、国は継続的に省エネ支援策を打ち出しています。今後は「令和6年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」などの後継事業に注目が集まります。常に最新の公募情報をチェックすることが重要です。
税制優遇「圧縮記帳」の活用
これらの補助金は、法人税法・所得税法上の「圧縮記帳」の適用が認められています。これは、補助金で取得した固定資産について、課税を繰り延べることができる制度です。補助金の採択を受けた際は、税理士などの専門家と相談の上、適切な経理処理を行うことで、キャッシュフローの改善に繋がります。
補助金申請の一般的な流れ
今後の申請に備え、一般的な申請プロセスを確認しておきましょう。
- 公募情報の確認: 執行団体(SII)のウェブサイトで公募要領を熟読し、対象者、対象設備、スケジュールを確認します。
- 申請準備: 事業計画の策定、導入する設備の見積取得、必要書類の準備を行います。
- 申請手続き: 多くの場合、専用の電子申請システムを通じて申請します。
- 審査・交付決定: 事務局による審査が行われ、採択されると交付決定通知が届きます。
- 事業実施・実績報告: 交付決定後に設備の発注・導入を行い、完了後に実績報告書を提出して補助金額が確定します。
まとめと公式情報・お問い合わせ先
本記事で解説した「省エネルギー投資促進支援事業」および「先進的省エネルギー投資促進支援事業」は、2024年現在、新規の公募は行われていません。しかし、省エネ設備投資への支援は今後も形を変えて継続される可能性が高いです。最新情報を逃さないよう、公式サイトを定期的に確認し、次回の公募に備えましょう。
お問い合わせ先
実施団体: 一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)
省エネルギー投資促進支援事業:
- (Ⅲ)設備単位型: 0570-057-025
- (Ⅳ)エネルギー需要最適化型: 03-5565-4773
先進的省エネルギー投資促進支援事業:
- (A)先進事業: 03-5565-3840
- (B)オーダーメイド型事業: 03-5565-4463
※受付時間: 平日10:00~12:00、13:00~17:00(土日祝除く)