地域のライフラインであるガソリンスタンド(SS)が減少する「SS過疎地」問題。この深刻な課題に対し、国は最大1億円を補助する強力な支援策を用意しています。本記事では、経済産業省の「自治体によるSS承継等に向けた取組支援事業」について、対象者や補助額、申請方法を専門家が分かりやすく解説します。
補助金の概要
本事業は、SS過疎地等における燃料の安定供給体制を確保するため、自治体や事業者が行う「計画策定」と「設備整備」の2つの取り組みを支援するものです。地域の状況に合わせた柔軟な活用が可能です。
自治体によるSS承継等に向けた取組支援事業 概要 | |
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補助額 | 【計画策定】上限1,000万円 【設備整備】上限1億円 |
補助率 | 1/2 〜 3/4 |
申請期間 | 2024年4月26日(金) 〜 2024年9月30日(月) 17時 ※複数回締切あり |
対象者 | SS過疎地等の自治体、揮発油販売業者(中小企業者) |
実施機関 | 全国石油商業組合連合会(経済産業省補助事業) |
2つの支援事業を詳しく解説
本補助金は、目的別に2つの事業に分かれています。自社の状況に合わせて適切な事業を選択しましょう。
① 燃料供給に関する計画策定事業
SS過疎地等の自治体が、地域の燃料供給拠点を維持するための計画を策定する経費を支援します。まずは現状把握と将来計画を立てたい自治体向けの事業です。
- 目的: 地域内の燃料需給の把握、供給体制の検討、関係者との合意形成など
- 対象者: SS過疎地等の自治体
- 補助額・補助率: 上限1,000万円、補助率3/4
- 対象経費: 調査費、検討会費(外部委員謝金・旅費)、補助職員人件費など
活用事例:沖縄県多良間村
村内唯一のSSの安定供給課題に対し、本事業を活用して「多良間村SS過疎地対策計画」を策定。現状調査や住民アンケートを経て、具体的な解決策として「コンテナ型地上タンク」の導入を計画し、次の設備整備事業への道筋を立てました。
② 燃料供給に関する計画に基づく設備整備等事業
自治体が策定した計画に基づき、給油所の移転・統合・新設などに必要な設備投資を支援します。計画を実現するための具体的なアクションを起こす事業者向けの事業です。
- 目的: 給油所の移転・統合・新設に伴う設備整備や設備撤去
- 対象者: SS過疎地等の自治体、または計画対象の給油所を運営・所有する揮発油販売業者(中小企業者)
- 補助額・補助率: 上限1億円、補助率は対象者・地域により1/2または3/4
- 対象経費: 設計費、設備費(貯蔵タンク、計量機、POS機器等)、工事費、解体・撤去費など
補助対象者の詳細な要件
本事業の対象となるには、まず「SS過疎地等」に該当する必要があります。
「SS過疎地等」の定義
1市町村内のSS数が3カ所以下、または道路距離に応じたSS過疎の地域を指します。自地域が該当するかは、公式サイトの「SS過疎地等一覧」で確認が必要です。
応募資格
- 計画策定事業: SS過疎地等の自治体であること。
- 設備整備等事業: SS過疎地等の自治体、または自治体の計画対象となっている給油所を運営・所有する中小企業者であること。
- 共通要件: 事業遂行に必要な能力・経験・経営基盤を有し、資金管理能力があること。
注意:中小企業者の定義
資本金5億円以上の法人に100%株式を保有されている場合や、直近3か年の課税所得の年平均額が15億円を超える場合は対象外となるためご注意ください。
申請スケジュールと流れ
申請は早めの準備が重要です。予算額に達し次第、募集が終了する可能性があるため、締切に注意しましょう。
締切 | 日程 |
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1次締切 | 2024年5月31日(金) 17時 |
2次締切 | 2024年6月28日(金) 17時 |
3次締切 | 2024年7月31日(水) 17時 |
4次締切 | 2024年8月30日(金) 17時 |
最終締切 | 2024年9月30日(月) 17時 |
申請から交付までのプロセス
- 1公募・申請書類の準備
- 2申請(Jグランツ、メール、郵送)
- 3審査委員会による審査(締切から約2週間後)
- 4交付決定・事業開始
- 5事業完了・実績報告(2025年2月20日まで)
- 6補助金額の確定・請求
- 7補助金交付(2025年3月末まで)
審査で評価されるポイント
採択されるためには、審査基準を理解し、説得力のある事業計画を立てることが不可欠です。
- 事業計画の適切性: 事業目的との合致、実施体制、効率的で現実的なスケジュールか。
- 補助金額の適切性: 経費積算が合理的かつ明確で、経済性を考慮しているか(原則2社以上の見積書が必要)。
- 技術的能力: 事業遂行に必要な知識や経験、過去の実績があるか。
- 経理的基礎: 円滑な事業遂行が可能な経営基盤や資金管理能力があるか。
採択に有利な加点措置
計画策定事業:地方公共団体が策定する「国土強靱化地域計画」に明記された事業は配慮されます。
設備整備等事業:前年度比または前年比で1.5%以上の賃上げを行う中小企業者等の事業は配慮されます。
まとめと次のステップ
「自治体によるSS承継等に向けた取組支援事業」は、SS過疎地の燃料供給インフラを維持・強化するための非常に重要な補助金です。地域のライフラインを守るため、自治体と事業者が連携し、この制度を最大限に活用することが期待されます。
まずは自地域が対象となるかを確認し、計画策定から始めることをお勧めします。詳細な募集要領や申請様式は公式サイトで公開されていますので、必ずご確認ください。
お問い合わせ先
全国石油商業組合連合会 政策グループ 環境・安全対策チーム 担当:今井
TEL:03-3593-5835
FAX:03-3593-5830