この記事のポイント
- 販路開拓や生産性向上を目指す小規模事業者のための補助金制度を解説
- 補助上限は最大200万円(特別枠)、さらにインボイス特例で50万円上乗せも可能
- チラシ作成、ウェブサイト関連費、店舗改装など幅広い経費が対象
- 申請から入金までの流れや、採択率を上げるための審査ポイントも網羅
「新しい顧客を獲得したい」「ネット販売を始めたい」「お店を改装して集客力を上げたい」そんなお悩みを持つ小規模事業者の方に最適な補助金が「小規模事業者持続化補助金<一般型>」です。本記事では、制度の概要から対象経費、申請の流れまで、専門家が分かりやすく徹底解説します。
小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営に向けた経営計画を立てて行う販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。地域の商工会や商工会議所のサポートを受けながら計画を作成し、実行していくのが特徴です。
こんな方におすすめです!
- 新しいチラシやカタログを作って宣伝したい
- 公式ホームページやECサイトを立ち上げたい
- 展示会に出展して新しい取引先を見つけたい
- 店舗を改装して、顧客満足度を向上させたい
- 新商品の開発や試作を行いたい
補助率と補助上限額
申請する枠(類型)によって補助率や上限額が異なります。自社の状況に合わせて最適な枠を選びましょう。
類型 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 50万円 | 2/3 ※賃金引上げ枠の赤字事業者は3/4 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | |
卒業枠 | 200万円 | |
後継者支援枠 | 200万円 | |
創業枠 | 200万円 |
💡 インボイス特例でさらに上乗せ!
免税事業者からインボイス発行事業者に転換する事業者は、全ての枠で補助上限額が一律50万円上乗せされます。例えば、賃金引上げ枠と併用すれば最大250万円の補助が可能です。
補助対象となる事業者
補助金の対象となるのは、以下の従業員数の要件を満たす法人、個人事業主、特定非営利活動法人です。
- 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):常時使用する従業員 5人以下
- 宿泊業・娯楽業:常時使用する従業員 20人以下
- 製造業その他:常時使用する従業員 20人以下
※常時使用する従業員には、会社役員や個人事業主本人、一定条件を満たすパートタイム労働者は含みません。
⚠️ その他の主要な要件
- 資本金又は出資金が5億円以上の法人に100%株式保有されていないこと。
- 直近過去3年間の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと。
- 過去に本補助金の特定の枠で採択されていないことなど、いくつかの要件があります。詳細は公募要領をご確認ください。
補助対象となる経費
販路開拓や生産性向上のために使える経費は多岐にわたります。主な対象経費は以下の通りです。
経費科目 | 活用事例 |
---|---|
①機械装置等費 | 製造装置の購入、サービス提供用の機材導入など |
②広報費 | チラシ・カタログ作成、新聞・Web広告、看板設置など |
③ウェブサイト関連費 | WebサイトやECサイトの構築・更新・改修・運用など |
④展示会等出展費 | 国内外の展示会や商談会への出展料など |
⑤旅費 | 販路開拓のための交通費・宿泊費(規定あり) |
⑥開発費 | 新商品の試作品開発に伴う経費など |
⑦資料購入費 | 補助事業に関連する資料・図書など |
⑧雑役務費 | 補助事業のための臨時アルバイト・派遣社員費用 |
⑨借料 | 機器・設備のリース・レンタル料 |
⑩設備処分費 | スペース確保のための設備処分費用 |
⑪委託・外注費 | 店舗改装など自社で困難な業務の外部委託費用 |
経費に関する重要注意点
- ウェブサイト関連費は、補助金総額の1/4(最大50万円)が上限です。ウェブサイト関連費のみでの申請はできません。
- パソコン、スマホ、文房具など汎用性が高く目的外使用になりえるものは対象外です。
- 経費の支払いは原則「銀行振込」です。10万円を超える支払いを現金で行うと対象外になります。
申請から入金までの10ステップ
申請準備から補助金の入金、事業効果の報告まで、全体の流れを把握しておきましょう。
-
1
申請の準備:公募要領を確認し、経営計画書・補助事業計画書を作成します。 -
2
商工会/商工会議所へ相談:作成した計画書を地域の商工会・商工会議所に提出し、「事業支援計画書」の作成を依頼します。これが必須です。 -
3
申請手続き:電子申請(Jグランツ)または郵送で申請書類一式を提出します。 -
4
審査・採択:外部有識者による審査が行われ、評価の高い案件から採択されます。 -
5
交付決定・事業実施:「交付決定通知書」受領後、計画に沿って事業を開始します。 ※交付決定日より前に発注・支払いした経費は対象外です。 -
6
実績報告書の提出:事業完了後、30日以内または最終提出期限までに実績報告書と証拠書類を提出します。 -
7
確定検査・補助金額の確定:事務局が報告書と証拠書類を検査し、補助金額を確定します。 -
8
補助金の請求:「補助金確定通知書」に基づき、補助金の精算払請求を行います。 -
9
補助金の入金:指定の口座に補助金が振り込まれます。 -
10
事業効果報告:補助事業完了から1年後に、事業効果の状況を報告する必要があります。
審査のポイントと加点項目
この補助金は申請すれば必ず採択されるわけではありません。審査で高く評価されるためのポイントと、採択に有利になる加点項目を理解しておきましょう。
審査のポイント
- 自社の経営状況や強みを適切に把握しているか。
- 経営方針・目標が自社の強みや市場の特性を踏まえているか。
- 補助事業計画が具体的で実現可能性が高いか。
- 小規模事業者ならではの創意工夫があるか。
- ITを有効に活用する取り組みが見られるか。
主な加点項目
特定の政策目標に合致する事業者は、審査で加点され、優先的に採択される可能性があります。
- 赤字賃上げ加点:賃金引上げ枠に申請する赤字事業者。
- 事業承継加点:代表者が満60歳以上で、後継者候補が中心となって事業を行う場合。
- 経営力向上計画加点:「経営力向上計画」の認定を受けている事業者。
- 過疎地域加点:過疎地域に所在し、地域経済の発展に繋がる取り組みを行う事業者。
まとめとお問い合わせ先
小規模事業者持続化補助金は、事業の成長を目指す事業者にとって非常に強力なツールです。経営計画の策定は簡単ではありませんが、自社の事業を見つめ直す絶好の機会にもなります。
まずは最寄りの商工会・商工会議所に相談し、専門家のアドバイスを受けながら申請準備を進めることをお勧めします。