最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加にお悩みの経営者様へ。厚生労働省の「業務改善助成金」は、生産性向上と事業場内最低賃金の引き上げを同時に行う中小企業・小規模事業者を力強くサポートする制度です。設備投資や人材育成にかかる費用の一部が助成され、経営改善と従業員の待遇改善を両立できます。この記事では、制度の概要から申請方法、注意点までをプロが徹底解説します。
業務改善助成金とは?
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者が生産性を向上させるための設備投資(例:POSレジ導入、自動化設備の導入など)を行い、同時に事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げる場合に、その設備投資にかかった費用の一部を助成する制度です。賃上げの負担を軽減しつつ、企業の競争力強化を後押しすることを目的としています。
この助成金の3つのメリット
- 賃上げの負担を軽減:設備投資への助成により、賃上げ原資の確保を支援します。
- 生産性の向上:新しい機械やシステムの導入で、業務効率が大幅にアップします。
- 人材確保と定着:従業員の待遇改善により、採用競争力の強化や離職率の低下が期待できます。
制度の概要をチェック
まずは助成金の基本情報を表で確認しましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
助成金額 | 最大600万円(賃上げ額と対象労働者数による) |
助成率 | 最大9/10(事業場内最低賃金額による) |
対象事業者 | 中小企業・小規模事業者 |
対象経費 | 生産性向上に資する設備投資、コンサルティング導入、人材育成など |
実施機関 | 厚生労働省 |
対象となる事業者の主な要件
以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 中小企業・小規模事業者であること。
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること。
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと。
助成上限額と助成率
助成上限額は、事業場内最低賃金をいくら引き上げるか(コース)、そして何人の労働者の賃金を引き上げるかによって決まります。
助成上限額(コース別)
コース (賃金引上額) |
引上げる労働者数 | |||
---|---|---|---|---|
1人 | 2~3人 | 4~6人 | 7人以上 | |
30円コース | 30万円 | 50万円 | 70万円 | 100万円 |
45円コース | 45万円 | 70万円 | 100万円 | 150万円 |
60円コース | 60万円 | 90万円 | 130万円 | 200万円 |
90円コース | 90万円 | 140万円 | 200万円 | 300万円 |
10人以上の区分 | 最大600万円 ※特例事業者のみ |
※上記は一例です。詳細は公式サイトをご確認ください。10人以上の上限額区分は特例事業者が対象です。
助成率
助成率は、賃上げ前の事業場内最低賃金によって変動します。
事業場内最低賃金 | 助成率 |
---|---|
950円未満 | 9/10 |
950円以上 1000円未満 | 4/5 |
1000円以上 | 3/4 |
助成対象となる経費の例
助成の対象となるのは、生産性向上や労働能率の増進に役立つ設備投資などです。以下に具体例を挙げます。
- 機械設備、什器等の導入:POSレジシステム、専門の業務用機器、リフト付き特殊車両など
- コンサルティング導入:専門家による業務フローの見直し、人事・賃金制度の構築支援など
- 人材育成・教育訓練:従業員のスキルアップのための研修費用など
💡 特例事業者なら対象経費が拡大!
原材料費の高騰などで利益率が低下している「特例事業者」に該当する場合、通常は対象外の乗用自動車や貨物自動車、パソコン、スマートフォン、タブレット等の経費も助成対象となる可能性があります。
申請から受給までの流れ
申請手続きは以下のステップで進みます。交付決定前に実施した設備投資や賃上げは対象外となるため、必ず手順を守ってください。
- ステップ1:交付申請
助成金交付申請書、事業実施計画書などを管轄の都道府県労働局へ提出します。 - ステップ2:交付決定
労働局で審査が行われ、交付決定通知が届きます。 - ステップ3:計画の実施
交付決定後、計画書に沿って設備投資と賃金の引き上げを実施します。 - ステップ4:事業実績報告
事業完了後、事業実績報告書などを労働局へ提出します。 - ステップ5:助成金受給
報告内容が確定されると、助成金が支払われます。
⚠️ 申請時の重要注意点
例年、申請が集中し審査に時間がかかる傾向があります。事業計画は余裕を持って策定し、早めに申請手続きを開始することをおすすめします。また、申請書類に不備があると差し戻しとなり、さらに時間がかかるため、提出前には念入りに確認しましょう。
まとめ
業務改善助成金は、賃上げと生産性向上の両立を目指す中小企業にとって非常に有効な制度です。自社の課題解決に繋がる設備投資を計画し、従業員の待遇を改善することで、持続的な成長の基盤を築くことができます。制度が複雑に感じる部分もありますが、コールセンターや労働局で相談も可能です。この機会にぜひ活用を検討してみてはいかがでしょうか。