2050年のカーボンニュートラル実現に向け、住宅の省エネ性能への関心が高まっています。この記事では、ZEH(ゼッチ)を超える次世代の省エネ住宅「LCCM住宅」の建築を支援する国土交通省の補助金「LCCM住宅整備推進事業」について、専門家が徹底解説します。最大140万円の補助金を活用し、環境にも家計にも優しい未来の住まいを実現しましょう。
LCCM住宅整備推進事業とは?
LCCM住宅整備推進事業は、住宅のライフサイクル全体(建設から解体・廃棄まで)でCO2排出量をマイナスにする「LCCM住宅」の普及を目的とした、国土交通省の補助金制度です。ZEHよりもさらに高い環境性能を持つ住宅の建築を支援することで、脱炭素社会の実現を目指しています。
この事業の3つの重要ポイント
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未来基準の住宅づくりを支援: ZEHの基準をクリアし、さらに建設時や解体時のCO2排出量まで考慮した、最先端の環境配慮型住宅が対象です。
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手厚い補助金: 設計費や工事費の掛かり増し費用などに対して、最大140万円/戸という高額な補助が受けられます。
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全国どこでも対象: 日本全国で建築される新築の戸建住宅が対象となり、地域を問わず活用できる制度です。
LCCM住宅とZEHの違い
LCCM住宅とZEHはどちらも省エネ住宅ですが、CO2排出量を評価する範囲が異なります。ZEHが「住んでいる間(運用時)」のエネルギー収支をゼロにすることを目指すのに対し、LCCM住宅は「建設時〜運用時〜廃棄時」までの生涯にわたるCO2収支をマイナスにすることを目指します。
項目 | ZEH(ゼッチ) | LCCM住宅 |
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評価範囲 | 運用時 | 建設時・運用時・廃棄時 |
目標 | エネルギー収支をゼロにする | CO2収支をマイナスにする |
位置づけ | 高水準の省エネ住宅 | ZEHを超える次世代の脱炭素化住宅 |
補助金の詳細(令和5年度実績参考)
最新年度の公募内容は公式サイトで確認が必要ですが、ここでは参考として令和5年度の実績に基づいた補助金の詳細を解説します。
補助対象 | LCCM住宅の新築(戸建住宅)を行う建築主 |
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補助率 | 補助対象費用の1/2以内 |
補助上限額 | 140万円 / 戸 |
補助対象費用 | LCCM住宅の実現に要する掛かり増し費用(設計費、工事費)、太陽光発電システム等の再エネ設備費用、第三者機関による評価費用など |
主な申請要件
この補助金を受けるためには、建築する住宅が以下の主要な要件を満たす必要があります。専門的な内容が含まれるため、設計段階から施工業者や設計士と緊密に連携することが不可欠です。
① 強化外皮基準の達成
住宅の断熱性能を示す基準で、ZEH水準の高い断熱性能が求められます。地域区分に応じたUA値(外皮平均熱貫流率)をクリアする必要があります。
② 一次エネルギー消費量の大幅削減
太陽光発電などの再生可能エネルギーを除いた上で、住宅で消費される一次エネルギー量が、現行の省エネ基準値から25%以上削減されていることが必要です。高効率な空調や給湯器、LED照明などの導入が鍵となります。
③ ライフサイクルCO2評価がゼロ以下
本事業の最も特徴的な要件です。専門の評価ツールを用いて、住宅の建設から解体までのライフサイクル全体のCO2収支がゼロ以下になることを証明しなければなりません。長寿命な建材の採用や、太陽光発電による十分な創エネルギー量が求められます。
【ご注意】専門知識が必須です!
これらの要件を満たすためには、省エネ計算やライフサイクルCO2評価など、高度な専門知識が必要です。LCCM住宅の建築実績が豊富な設計事務所や工務店に相談することをお勧めします。
申請スケジュールと手続きの流れ
公募期間の傾向
LCCM住宅整備推進事業は、例年、春から秋にかけて公募が行われます。来年度の申請を検討している方は、春頃から公式サイトの情報を注視しましょう。
年度 | 公募期間(第1回) |
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令和4年度 | 2022年6月1日~ |
令和5年度 | 2023年4月17日~9月29日 |
令和6年度(省CO2先導型) | 2024年5月17日~7月3日 |
※公募期間は年度によって異なります。予算の上限に達し次第、早期に終了する場合があるため注意が必要です。
申請から補助金交付までの流れ
一般的な手続きの流れは以下の通りです。交付決定前に工事に着手することはできないため、スケジュール管理が重要です。
- 計画・相談:設計事務所や工務店を選定し、LCCM住宅の計画を立てます。
- 交付申請:公募期間内に、必要な書類を揃えて実施支援室へ提出します。
- 審査・交付決定:提出された書類が審査され、採択されると交付決定通知が届きます。
- 事業の実施:交付決定後、住宅の建築工事を開始します。
- 完了実績報告:工事完了後、実績報告書を作成し、証拠書類とともに提出します。
- 補助金の交付:報告書の内容が審査され、補助金額が確定した後、指定の口座に補助金が振り込まれます。
まとめ
LCCM住宅整備推進事業は、これからの住宅のスタンダードとなるであろう「ライフサイクルでの脱炭素」を実現するための重要な補助金です。要件のハードルは高いですが、最大140万円という手厚い支援は大きな魅力です。環境性能の高い住宅は、光熱費の削減や快適な住環境にも繋がり、長期的なメリットをもたらします。
来年度の公募に向けて、今から情報収集を始め、信頼できるパートナー(設計事務所・工務店)探しを進めてみてはいかがでしょうか。
問い合わせ先・公式サイト
事業名 | LCCM住宅整備推進事業 |
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実施主体 | 国土交通省 |
実施支援室 | 一般社団法人 環境共生まちづくり協会 |
公式サイト | https://lccm-shien.jp/ |
問い合わせ先 | メール: info@lccm-shien.jp |