事業の拡大や生産性向上を目指す中小企業・小規模事業者の皆様へ。国は様々な補助金制度を用意し、企業の挑戦を後押ししています。本記事では、特に人気の高い経済産業省管轄の「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「事業承継・引継ぎ補助金」の5つをピックアップし、それぞれの特徴や申請のポイントをプロの視点で分かりやすく解説します。
1. 事業再構築補助金
ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援する、非常に大規模な補助金です。
この補助金のポイント
新市場進出、事業・業種転換、国内回帰など、企業の大きな変革を後押しする点が最大の特徴です。補助金額が大きく、建物費も対象になるなど、大規模な投資を計画している企業に最適です。
主な申請枠と補助上限額の例
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
成長枠 | 最大7,000万円 | 中小 1/2 (大規模賃上 2/3) |
グリーン成長枠 | 最大1.5億円 | 中小 1/2 (大規模賃上 2/3) |
物価高騰対策・回復再生応援枠 | 最大3,000万円 | 中小 2/3 |
※上記は一例です。公募回によって内容が変更されるため、必ず公式サイトの公募要領をご確認ください。
2. ものづくり補助金
中小企業・小規模事業者等が取り組む、革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善のための設備投資等を支援する補助金です。通称「もの補助」として知られています。
この補助金のポイント
生産性向上に資する設備投資がメインターゲットです。最新の機械装置やシステムの導入を検討している製造業やサービス業の企業に広く活用されています。
主な申請枠と補助上限額の例
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 750万円~1,250万円 | 1/2 (小規模・再生 2/3) |
グローバル市場開拓枠 | 3,000万円 | 1/2 (小規模 2/3) |
3. IT導入補助金
中小企業・小規模事業者の労働生産性向上を目的として、業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。
この補助金のポイント
会計ソフト、受発注システム、決済ソフト、ECサイト制作など、幅広いITツールの導入に活用できます。インボイス制度対応のためのツール導入にも利用できる枠があり、多くの事業者にとって身近な補助金です。
主な申請枠と補助上限額の例
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 最大450万円 | 1/2以内 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | 最大350万円 | 最大4/5 |
4. 小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
この補助金のポイント
チラシ作成、Webサイト制作、店舗改装、展示会出展など、小規模な販路開拓の取り組みに幅広く利用できます。地域の商工会・商工会議所のサポートを受けながら申請できるため、初めて補助金に挑戦する事業者にもおすすめです。
主な申請枠と補助上限額の例
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 50万円 | 2/3 |
賃金引上げ枠、卒業枠など | 200万円 | 2/3 (赤字事業者は3/4) |
5. 事業承継・引継ぎ補助金
事業承継やM&Aを契機とした経営革新等への挑戦や、M&Aによる事業の引継ぎ・引受けの際の専門家活用費用などを支援する補助金です。
この補助金のポイント
後継者不在に悩む企業のM&Aや、事業承継後の新たな設備投資・販路開拓などを支援します。M&A仲介手数料やデューデリジェンス費用といった専門家経費が補助対象となる点が大きな特徴です。
主な申請類型と補助上限額の例
申請類型 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
経営革新類型 | 最大800万円 | 1/2 or 2/3 |
専門家活用類型 | 最大600万円 | 1/2 or 2/3 |
補助金申請の一般的な流れ
補助金の種類によって詳細は異なりますが、一般的な申請プロセスは以下の通りです。
- 情報収集と公募要領の確認:自社に合った補助金を見つけ、公募要領を熟読して要件を確認します。
- GビズIDプライムの取得:多くの補助金申請で必要となる電子申請用のIDを取得します(取得に2〜3週間かかる場合があるため早めに準備)。
- 事業計画書の作成:補助金の審査で最も重要な書類です。自社の課題、目標、補助事業の内容、将来性などを具体的に記述します。
- 必要書類の準備:事業計画書の他、決算書や見積書など、指定された書類を揃えます。
- 電子申請:申請期間内にシステムから申請を完了させます。
- 採択発表・交付決定後の手続き:採択された後、交付申請等の手続きを経て、事業を開始します。
まとめ
今回は、中小企業・小規模事業者が活用できる代表的な5つの補助金をご紹介しました。これらの補助金は、企業の成長ステージや課題に応じて使い分けることが重要です。公募期間は限られているため、常に最新情報をチェックし、計画的に準備を進めることが採択への鍵となります。