「新しい顧客を獲得したい」「オンライン販売を始めたい」「生産性を上げていきたい」
そんな熱意ある小規模事業者様を力強く後押しするのが「小規模事業者持続化補助金」です。本記事では、販路開拓や生産性向上に取り組む際に活用できるこの人気の補助金について、専門家が分かりやすく徹底解説します。
小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営に向けた経営計画を自ら作成した上で行う「販路開拓」や「生産性向上」の取り組みを支援する制度です。地域の商工会・商工会議所のサポートを受けながら事業計画を作成し、採択されると経費の一部が補助されます。
この補助金のポイント
- 幅広い経費が対象:チラシ作成、ウェブサイト制作、店舗改装、展示会出展など、販路開拓に必要な様々な経費が対象になります。
- 手厚いサポート:地域の商工会・商工会議所が経営計画の作成から申請まで手厚くサポートしてくれます。
- 高い汎用性:様々な業種の小規模事業者が活用できる、非常に使い勝手の良い補助金です。
補助金の概要(ひと目でわかる早見表)
まずは制度の全体像を掴みましょう。主要な項目を以下の表にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
補助上限額 | 通常枠:50万円 特別枠(賃金引上げ、卒業、後継者支援、創業):200万円 ※インボイス特例の適用で各上限に50万円上乗せ可能 |
補助率 | 原則 2/3 (賃金引上げ枠の赤字事業者は 3/4) |
対象者 | 常時使用する従業員数が一定以下の法人、個人事業主、特定非営利活動法人 |
対象経費 | 機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費など11項目 |
申請方法 | 電子申請(Jグランツ)または郵送 ※郵送申請は減点対象 |
実施機関 | 全国商工会連合会 / 日本商工会議所 |
5つの申請類型と補助上限額
本補助金には、事業者の状況に応じて選択できる5つの申請類型(枠)があります。いずれか1つの枠を選んで申請します。
申請類型 | 補助上限 | 概要 |
---|---|---|
通常枠 | 50万円 | 小規模事業者が行う販路開拓等の基本的な取り組みを支援。 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | 販路開拓に加え、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とする事業者向け。赤字事業者は補助率が3/4に引き上げ。 |
卒業枠 | 200万円 | 販路開拓に加え、雇用を増やし小規模事業者の定義を超える規模拡大を目指す事業者向け。 |
後継者支援枠 | 200万円 | アトツギ甲子園のファイナリスト等に選ばれた後継者候補が取り組む事業者向け。 |
創業枠 | 200万円 | 特定創業支援等事業の支援を受け、過去3年以内に開業した事業者向け。 |
【注目】インボイス特例でさらに50万円上乗せ!
2021年9月30日から2023年9月30日の期間に免税事業者であった事業者が、インボイス発行事業者に登録した場合、全ての枠の補助上限額に一律50万円が上乗せされます。これにより、例えば創業枠なら最大250万円の補助が受けられる可能性があります。
補助対象者になれるのは?
補助金の対象となるのは、以下の従業員数の要件を満たす「小規模事業者」です。
- 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):常時使用する従業員の数 5人以下
- 宿泊業・娯楽業:常時使用する従業員の数 20人以下
- 製造業その他:常時使用する従業員の数 20人以下
※常時使用する従業員には、会社役員や個人事業主本人、一定条件を満たすパートタイム労働者は含みません。
その他の主な要件
上記の従業員数に加え、以下の要件も満たす必要があります。
- 資本金または出資金が5億円以上の法人に100%株式保有されていないこと(法人のみ)。
- 直近過去3年間の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと。
- 過去に特定の持続化補助金で採択・実施した事業者ではないこと(条件あり)。
何に使える?補助対象経費の具体例
販路開拓や生産性向上のための幅広い経費が補助対象となります。主な経費項目と活用例を見ていきましょう。
経費科目 | 活用事例 |
---|---|
①機械装置等費 | 新サービスの提供に必要な製造装置、厨房機器の購入など |
②広報費 | 新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置など |
③ウェブサイト関連費 | ウェブサイトやECサイトの開発、更新、改修、運用など |
④展示会等出展費 | 国内外の展示会や商談会への出展料など |
⑤旅費 | 販路開拓のための調査や展示会参加に伴う交通費・宿泊費 |
⑥開発費 | 新商品の試作品開発やパッケージデザインにかかる費用 |
⑪委託・外注費 | 集客力を高めるための店舗改装、専門家への業務依頼など |
経費の注意点
- ウェブサイト関連費:補助金総額の1/4(最大50万円)が上限です。これのみでの申請はできません。
- 汎用性の高いもの:パソコン、タブレット、文房具、自動車などは原則対象外です。
- 支払い方法:原則として銀行振込です。10万円を超える現金払いは対象外となるため注意が必要です。
申請から入金までの10ステップ
補助金の申請から入金までの流れは以下の10ステップで進みます。事業者が主体的に動くステップと、事務局側の手続きを把握しておきましょう。
-
1
申請の準備:公募要領を確認し、経営計画書・補助事業計画書を作成。地域の商工会・商工会議所に相談し、「事業支援計画書」の交付を依頼します。 -
2
申請手続き:必要書類を揃え、電子申請(Jグランツ)または郵送で提出します。 -
3
申請内容の審査:事務局にて外部有識者等による審査が行われます。 -
4
採択・交付決定:審査結果が通知され、「交付決定通知書」が届きます。 -
5
補助事業の実施:交付決定日以降に、計画に沿って発注・契約・支払いを行います。 -
6
実績報告書の提出:事業完了後、期限内に実績報告書と証拠書類を提出します。 -
7
確定検査・補助金額の確定:事務局が報告書と証拠書類を検査し、補助金額を確定します。 -
8
補助金の請求:確定通知を受け取った後、補助金の精算払請求を行います。 -
9
補助金の入金:指定の口座に補助金が振り込まれます。 -
10
事業効果報告:補助事業完了から1年後に、事業効果の報告が必要です。
申請方法とスケジュール
申請は電子申請(Jグランツ)が推奨されています。Jグランツを利用するには「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要で、発行に数週間かかる場合があるため、早めに準備しましょう。郵送での申請も可能ですが、審査で減点調整が行われます。
【重要】公募スケジュールについて
小規模事業者持続化補助金は、年に数回の公募締切が設けられます。公募回によって締切日や事業実施期間が異なります。
最新の公募情報は、必ず公式サイトでご確認ください。
採択率を上げるための審査のポイントと加点項目
この補助金は申請すれば必ず採択されるわけではありません。評価の高い案件から順に採択されます。以下のポイントを押さえて、魅力的な事業計画を作成しましょう。
審査のポイント
- 自社の経営状況や強みを適切に把握しているか。
- 経営方針や目標が、自社の強みや市場の特性を踏まえているか。
- 補助事業計画が具体的で、実現可能性が高いか。
- 小規模事業者ならではの創意工夫があるか。
- ITを有効に活用する取り組みが見られるか。
加点項目一覧
特定の政策目標に合致する事業者には、審査で加点措置が講じられます。該当するものがあれば積極的に活用しましょう。(重点政策加点と政策加点から各1つ、合計2つまで選択可能)
分類 | 加点項目 | 概要 |
---|---|---|
重点政策加点 | 赤字賃上げ加点 | 賃金引上げ枠に申請する赤字事業者 |
事業環境変化加点 | ウクライナ情勢や原油価格高騰等の影響を受けている事業者 | |
東日本大震災加点 | 原発事故の影響を受けた地域の事業者等 | |
政策加点 | パワーアップ型加点 | 地域資源活用や地域コミュニティの課題解決に取り組む計画 |
経営力向上計画加点 | 経営力向上計画の認定を受けている事業者 | |
事業承継加点 | 代表者が満60歳以上で後継者候補が中心となって事業を行う場合 | |
過疎地域加点 | 過疎地域に所在し、地域経済の発展に繋がる取り組みを行う事業者 | |
くるみん・えるぼし加点 | 次世代育成支援や女性活躍推進に関する認定を受けている事業者 |
まとめ
小規模事業者持続化補助金は、計画的な販路開拓や業務改善を目指す事業者にとって、非常に強力なツールです。補助上限額が引き上げられる特別枠やインボイス特例など、自社の状況に合わせて最適な形で活用しましょう。
申請には経営計画の策定が不可欠ですが、地域の商工会・商工会議所が親身に相談に乗ってくれます。まずは一度、最寄りの相談窓口に足を運んでみてはいかがでしょうか。