災害時の事業継続計画(BCP)対策は万全ですか?停電時にもエネルギー供給を維持し、地域社会の防災拠点としての役割を果たすための強力な支援策が「災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金」です。この記事では、最大3.6億円が補助される本制度の概要、対象者、申請方法を専門家が徹底解説します。
補助金の概要
本補助金は、災害時にも稼働可能な天然ガス利用設備(コージェネレーションシステムやガスヒートポンプエアコン)の導入を支援し、施設のエネルギー供給の強靭性を高めることを目的としています。平時は省エネ・CO2削減に貢献し、有事にはライフラインを確保する一石二鳥の制度です。
項目 | 内容 |
---|---|
補助金名 | 災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金 |
実施機関 | 一般社団法人都市ガス振興センター |
補助上限額 | 最大3億6,000万円 |
補助率 | 1/3 または 1/2以内 |
公募期間 | 令和7年6月3日(火)から公募開始(予算額に達し次第終了) |
申請方法 | jGrantsによる電子申請 |
この補助金の3つの重要ポイント
- 大規模な設備投資を支援:最大3.6億円という高額な補助で、コージェネレーションシステム等の導入コストを大幅に軽減します。
- BCP対策と環境貢献を両立:災害時の電力・空調確保だけでなく、平時の省エネ・CO2排出量削減にも繋がり、企業の社会的価値を高めます。
- 幅広い施設が対象:指定避難所や福祉避難所はもちろん、自治体と協定を結んだ民間施設(工場、商業施設、病院など)も対象となり得ます。
補助対象となる事業者と施設
対象事業者
リース・エネルギーサービス事業者を含む全業種が対象です。ただし、家庭用需要(個人宅など)は除きます。
対象となる施設
以下のいずれかに該当し、災害時に地域住民へ空間、物資、情報などを提供できる施設が対象です。
- 国や地方公共団体の防災計画で指定避難所・福祉避難所として指定されている施設
- 災害時に活動拠点となる国や地方公共団体の防災上中核となる施設(例:市役所)
- 国や地方公共団体と災害協定を締結している(または見込みの)施設(例:帰宅困難者受入施設、物資提供協定施設など)
補助対象となる設備と事業要件
対象設備
停電時にも自立して稼働し、避難所等に電気や空調を供給できる以下の設備が対象です。
- 停電対応型CGS(コージェネレーションシステム):天然ガスで発電し、その際に生じる排熱を給湯や冷暖房に利用する高効率なシステム。
- 停電対応型GHP(ガスエンジン・ヒートポンプ・エアコン):天然ガスを燃料とするエンジンでコンプレッサーを駆動させる空調システム。
主な事業要件
- 天然ガスを燃料として使用すること。
- 中圧導管または耐震性を向上させた低圧導管からガス供給を受けること。
- 系統電力が停電した際に、発電または空調を開始・継続できること。
- 導入後の運転状況を確認するための専用計測装置を取り付けること。
補助率と補助上限額
補助率・上限額は、施設の所在地やガスの供給方式によって異なります。
区分 | 補助率 | 補助上限額(CGS) | 補助上限額(GHP) |
---|---|---|---|
政府想定の地震対象エリア・大都市等 (中圧ガス導管) |
1/2 | 3億6,000万円 | 1億円 |
政府想定の地震対象エリア・大都市等 (低圧ガス導管) |
1/3 | 6,000万円 | 6,600万円 |
上記以外 (中圧ガス導管) |
1/3 | 2億4,000万円 | 6,600万円 |
上記以外 (低圧ガス導管) |
1/3 | 6,000万円 | 6,600万円 |
※「政府想定の地震対象エリア・大都市等」には、南海トラフ地震や首都直下地震の想定エリア、政令指定都市などが含まれます。詳細は公募要領をご確認ください。
申請手続きの流れ
申請は補助金申請システム「jGrants」を利用した電子申請が原則です。事前にGビズIDプライムの取得が必要となりますので、早めに準備を進めましょう。
- 1GビズIDの取得:jGrantsの利用に必須です。取得には2〜3週間かかる場合があるため、最優先で手続きしてください。
- 2交付申請:公募期間内にjGrantsから必要書類(交付申請書、実施計画書、見積書等)を提出します。
- 3審査・交付決定:都市ガス振興センターによる審査後、交付決定通知が届きます。事業の開始(契約・発注)は必ず交付決定日以降に行ってください。
- 4事業実施:計画に沿って設備の設置工事などを進めます。
- 5実績報告:事業完了後、期限内に実績報告書を提出します。
- 6確定検査・補助金受領:検査合格後、補助金額が確定し、請求手続きを経て補助金が支払われます。
申請の注意点
- 交付決定前の着手はNG:補助事業の契約・発注は、必ず交付決定通知書の日付以降に行う必要があります。それ以前の経費は補助対象外となります。
- 書類の原本保管:jGrantsで申請した書類や見積書などの原本は、後の検査で必要になるため、必ず大切に保管してください。
- 公募は予算上限あり:公募は予算額に達した時点で締め切られます。申請を検討している場合は、早めに準備を進めることを強く推奨します。
まとめ
「災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金」は、企業のBCP対策を強力に後押しするだけでなく、平時のエネルギーコスト削減や環境負荷低減にも貢献する非常に価値の高い制度です。補助額が大きく、多くの事業者にチャンスがあります。自社の施設が対象になるか、どのような計画が可能か、まずは公式サイトで詳細を確認し、準備を始めましょう。
お問い合わせ先
一般社団法人都市ガス振興センター 事業部 事業グループ
TEL:03-6435-7692
受付時間:9:00~12:00、13:00~17:20(土日祝、5/1、12/29~1/4を除く)