この記事のポイント
- 2025年度に活用できる2つの主要な水力発電関連補助金を網羅的に解説。
- 民間事業者向け「事業性評価事業」と、地方公共団体向け「自治体主導型事業」の違いが明確にわかる。
- 補助率最大10/10(定額)、補助上限額最大2,000万円の詳細な条件を整理。
- 複雑な申請スケジュールや公募説明会の日程を一覧表で分かりやすく提供。
再生可能エネルギーの導入拡大が急務となる中、安定した電力供給源として「水力発電」が再び注目されています。しかし、その導入には初期段階での事業性評価や調査・設計に多大なコストがかかるのが課題です。今回は、こうした課題を解決し、水力発電の導入を強力に後押しする2つの大規模補助金「水力発電導入加速化事業費(事業性評価事業)」と「中小水力発電自治体主導型案件創出調査等支援事業費補助金」について、専門家が徹底的に解説します。
2つの補助金を一目で比較
まずは、今回ご紹介する2つの補助金の概要を比較表で確認しましょう。ご自身の状況にどちらが適しているか、大枠を掴むことができます。
項目 | ① 水力発電導入加速化事業費(事業性評価) | ② 中小水力発電自治体主導型案件創出調査等支援事業費補助金 |
---|---|---|
主な対象者 | 民間事業者、地方公共団体 | 地方公共団体、及び連携する民間事業者 |
補助率 | 1/2以内 または 定額(10/10) | 3/4以内 |
補助上限額 | 最大2,000万円/年 | (予算額 16.8億円の範囲内) |
最終申請締切 | 令和7年6月17日(火) | 令和7年8月28日(木) |
対象発電出力 | 20kW以上 30,000kW未満 | 50kW以上 30,000kW未満 |
① 水力発電導入加速化事業費(事業性評価)
こちらは、水力発電事業の初期段階における事業性評価(FS: Feasibility Study)に必要な調査や設計の費用を支援する補助金です。対象者によって2つのスキームに分かれています。
対象事業と補助対象者
(1) 水力発電事業性評価事業
自ら水力発電事業を行う予定の事業者が対象です。
- 対象者: 民間事業者(法人及び青色申告の個人事業者)、地方公共団体
- 補助率: 1/2以内
- 補助上限額:
- 基本設計を含む場合: 2,000万円/年
- 基本設計を含まない場合: 1,000万円/年
- 作業道整備費: 別途最大1,000万円
(2) 地方公共団体が行う水力発電事業性評価・公募事業
地方公共団体が地域の有望地点を調査し、開発事業者を公募するケースを支援します。
- 対象者: 発電事業者を公募する地方公共団体
- 補助率: 定額(10/10)
- 補助上限額:
- 調査費(公募用資料作成費含む): 2,000万円/年
- 作業道整備費: 別途最大2,000万円(2ヵ年)
② 中小水力発電自治体主導型案件創出調査等支援事業費補助金
こちらは、特に地方公共団体が主導する開発案件の創出を目的とした補助金です。民間事業者も地方公共団体と連携することで対象となります。
事業概要と補助内容
- 目的: 自治体主導で隠れた開発ポテンシャルを明らかにし、開発リスク・コストを低減することで、地方のGX推進・経済成長に貢献する。
- 対象者: 地方公共団体、及び地方公共団体と連携する民間事業者
- 補助率: 3/4以内
- 特徴: リパワリング(既存設備の出力増強)や取水量増加に係る調査も対象となります。
⚠️ 注意事項
いずれの補助金も、予算額を超える申請があった場合は、公募期間中であっても公募が終了(または減額採択)となる可能性があります。早めの準備と申請を強くお勧めします。
申請スケジュール
どちらの補助金も複数回の締切が設けられています。申請書の到着時期によって審査・交付決定のタイミングが異なります。
① 事業性評価事業のスケジュール
公募期間: 令和7年4月7日(月) ~ 令和7年9月24日(水)
※ただし、交付申請は2次締切までとされていますのでご注意ください。
締切 | 申請書到着日 | 交付決定(予定) |
---|---|---|
1次締切 | 令和7年5月13日(火) | 6月下旬 |
2次締切 (最終) | 令和7年6月17日(火) | 7月下旬 |
② 自治体主導型事業のスケジュール
公募期間: 令和7年6月26日(木) ~ 令和7年8月28日(木)
締切 | 申請書到着日 | 交付決定(予定) |
---|---|---|
3次締切 | 令和7年7月28日(月) | 8月下旬 |
4次締切 (最終) | 令和7年8月28日(木) | 9月下旬 |
申請方法と公募説明会
申請プロセス
- 公募要領の確認: 公式サイトから最新の公募要領、申請様式、FAQなどをダウンロードし、熟読します。
- 電子申請の準備: 申請は原則として「Jグランツ」を利用します。GビズIDプライムアカウントが必要ですので、未取得の場合は早めに手続きを行ってください。
- 申請書類の作成: 事業計画や経費内訳などを詳細に記載した申請書を作成します。
- 申請: Jグランツを通じて、各締切日までに申請を完了させます。
公募説明会・個別相談
事業内容や申請方法に関するオンライン説明会が複数回開催されます。出席は必須ではありませんが、疑問点を解消する絶好の機会ですので、積極的な参加をお勧めします。また、自治体主導型事業では個別訪問による説明も受け付けています。
詳細な日程や申込方法は、公式サイトをご確認ください。
まとめ
水力発電の導入は、脱炭素社会の実現と地域のエネルギー自給率向上に大きく貢献します。今回ご紹介した2つの補助金は、その初期段階における最大のハードルである「事業性評価」のコスト負担を大幅に軽減するものです。民間事業者、地方公共団体を問わず、水力発電事業に関心のある方は、この機会を最大限に活用し、事業化への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
応募書類の提出先・問い合わせ先
一般財団法人新エネルギー財団 水力普及促進部 宛
〒171-0031 東京都豊島区目白1丁目4番25号
電子メール: phpd1@nef.or.jp (質問は指定の質問フォーマットを使用)
※本事業に関する質問は、公募説明会または電子メールでのみ受け付けています。電話での問い合わせには対応していませんのでご注意ください。