この記事では、経済産業省が実施する「需要家主導型太陽光発電導入支援事業」について、最新情報を基に徹底解説します。大規模な太陽光発電設備の導入を検討している発電事業者様、再エネ調達を目指す需要家様は必見です。補助金の概要から複雑な要件、申請の流れまで、専門家が分かりやすくまとめました。
【重要なお知らせ】2025年度（令和7年度）の公募について
2025年度（令和7年度）予算は、採択済み案件の後年度負担分のみが計上されており、新規案件の公募は実施されない見込みです。本記事では、今後の事業再開に備え、過去の公募情報を基に制度内容を解説します。
需要家主導型太陽光発電導入支援事業とは？
本事業は、再生可能エネルギーの利用を希望する需要家（電力を使う企業）、小売電気事業者、発電事業者の3者が連携し、発電事業者が太陽光発電設備等を導入する際の経費の一部を補助する制度です。
特に、発電所が需要地の遠隔にある「オフサイトコーポレートPPA」モデルの普及を目的としており、FIT/FIP制度や自己託送に頼らない、再生可能エネルギーの新たな導入モデルの確立を目指しています。
この補助金のポイント
- 大規模案件が対象：合計2MW以上の新設設備が基本要件。
- 非FIT/FIP限定：国の固定価格買取制度等を利用しない事業が対象。
- 長期契約が必須：需要家と8年以上にわたる電力利用契約が必要。
- 上限なしの高額補助：補助率最大2/3で、補助額の上限はありません。
補助対象事業者と主な要件
本補助金は、「特定の需要家に電気を供給するために新たに太陽光発電設備を設置・所有する者（発電事業者）」が申請対象者となります。民間企業だけでなく、地方自治体も対象です。以下に主要な要件をまとめました。
| 要件項目 |
詳細内容 |
| 制度利用 |
非FIT・非FIP制度を利用し、自己託送ではないこと。 |
| 設備規模 |
合計出力2MW以上30MW未満（ACベース）の新設設備であること。
※複数地点の合計も可（1地点30kW以上、平均50kW以上などの条件あり）。 |
| 設備単価 |
蓄電池を除く単価が23.9万円/kW（AC）未満であること。
※蓄電池導入時は別途要件あり（太陽光：15.8万円/kW（DC）未満、蓄電池：12万円/kWh以下）。 |
| 契約期間 |
8年以上にわたり、発電量の7割以上を特定の需要家に供給する契約を締結すること。 |
| 運転開始 |
原則として、単年度事業は翌年2月末、複数年度事業は最長で3年後の2月末までに運転開始すること。 |
| その他 |
事業計画策定ガイドライン等の遵守、地域住民との適切なコミュニケーションなど。 |
※上記は主要な要件の抜粋です。申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認ください。
補助対象経費と補助率
補助対象経費
補助の対象となる経費は以下の通りです。
- 設計費
- 設備購入費（太陽光パネル、パワーコンディショナ、架台、蓄電池など）
- 土地造成費
- 工事費
- 接続費
補助率
補助率は事業の形態によって異なります。
| 事業形態 |
補助率 |
| 自治体連携型（地方自治体・民間企業） |
2/3 |
| 加点要件該当型（中小企業連携、サプライチェーン、地域連携、蓄電池設置など） |
1/2 |
| 上記以外（民間企業） |
1/3 |
| 蓄電池 |
1/3 or 1/2 |
申請の流れと注意点
申請は、デジタル庁が運営する補助金電子申請システム「jGrants（Jグランツ）」を利用して行います。郵送やメールでの申請は受け付けられません。
申請前の最重要チェックポイント
jGrantsの利用には「gBizIDプライム」アカウントが必須です。
アカウントの発行には通常1週間以上かかります。公募が開始されてから準備を始めると間に合わない可能性があるため、事業を検討している段階で早めに取得しておくことを強く推奨します。
申請ステップ
-
1
gBizIDの準備
「gBizIDプライム」アカウントを取得します。未取得の場合は公式サイトから登録手続きを行ってください。
-
2
必要書類の作成
公募要領を確認し、事業計画書や申請様式などをダウンロードして作成します。申請書作成ガイドも熟読しましょう。
-
3
jGrantsで電子申請
作成した書類をjGrantsにアップロードし、必要事項を入力して申請を完了させます。
よくある質問（FAQ）
Q1. 誰が申請できますか？
A. 補助対象設備を所有し、補助対象事業を実施する法人です。具体的には、特定の需要家に電気を供給するために新たに太陽光発電設備を設置・所有する「発電事業者」が対象となります。
Q2. リースによる設備設置は対象になりますか？
A. いいえ、リースやレンタルによる設備設置は補助対象外です。申請者が設備を所有する必要があります。
Q3. 他の国の補助金と併用できますか？
A. いいえ、他の国庫補助金との併用はできません。
まとめ
「需要家主導型太陽光発電導入支援事業」は、大規模な太陽光発電プロジェクトを後押しする非常に強力な補助金です。要件は複雑で、2MW以上という規模の大きさから計画から申請までには周到な準備が必要となります。
2025年度の新規公募は見送られる見込みですが、脱炭素化の流れは加速しており、今後同様の事業が再開される可能性は十分にあります。今のうちから制度内容を理解し、将来の事業計画に役立ててみてはいかがでしょうか。
