東京都が、革新的な金融サービスで世界をリードするフィンテック・スタートアップを強力に支援します。本記事では、最大400万円が支給される「フィンテック企業等に対するイノベーション支援事業補助金」について、2つの支援策の概要、対象者、申請方法、そして貴重な採択事例まで、専門家が徹底的に解説します。
東京都がフィンテック支援を加速する背景
東京都は「国際金融都市・東京」構想を掲げ、世界経済を牽引する都市を目指しています。その戦略の柱の一つが、金融のデジタライゼーションとスタートアップによるイノベーション創出です。この補助金は、有望なフィンテック企業と金融事業者の協業を促進し、東京の金融市場を活性化させるための重要な施策と位置づけられています。
この補助金のポイント
- 2つの支援策: イベント開催支援とサービス事業化支援の2本立て。
- 高額支援: 金融サービスの事業化には最大400万円、補助率2/3。
- 随時申請可能: 令和7年4月から約10ヶ月間、いつでも申請可能(予算上限あり)。
- 幅広い対象経費: イベント開催経費からサービス実証実験の経費まで幅広くカバー。
2つの支援策を徹底比較!補助金概要
本事業は、目的別に2つの補助金で構成されています。自社のフェーズや目的に合わせて最適な支援策を選びましょう。
項目 | ① 金融オープンイノベーション支援補助金 | ② 金融サービス事業化支援補助金 |
---|---|---|
目的 | フィンテック企業と金融事業者の協業促進イベント・プログラム開催支援 | 開発した金融サービスの事業化に向けた実証的取組の支援 |
補助対象者 | オープンイノベーション創出に資するイベント等を実施する事業者 | 都内のフィンテック企業(設立10年未満)等 |
補助率 | 1/2 | 2/3 または 1/2(条件による) |
補助上限額 | 100万円(複合的な場合は200万円) | 400万円 または 300万円(条件による) |
(1) 金融オープンイノベーション支援補助金
フィンテック企業と金融機関のマッチングを加速させるイベントやプログラムの開催を支援します。
- 対象事業の例: ピッチイベント、アクセラレータプログラム、マッチングイベントなど
- 補助率: 補助対象経費の2分の1
- 補助上限額: 1件あたり100万円(複数のイベント等を複合的に提供する場合は200万円)
(2) 金融サービス事業化支援補助金
革新的な金融サービスのプロトタイプ開発や実用性検証など、事業化に向けた実証実験を支援します。
- 対象事業の例: 開発した金融サービスの実用性検証、ユーザビリティテストなど
- 補助対象者と補助率・上限額:
- 設立10年未満の都内フィンテック企業等: 補助率 3分の2、上限 400万円
- 海外フィンテック企業等と連携する金融事業者等: 補助率 2分の1、上限 300万円
【注意】過去の採択者は補助率・上限額が変わります
令和4年度から令和6年度に本補助金の交付を受けた事業者が再度採択された場合、補助率は2分の1、上限額は200万円となりますのでご注意ください。
申請期間と手続きの流れ
募集期間
令和7年4月1日(火) ~ 令和8年1月30日(金)
随時受付ですが、予算がなくなり次第終了となります。お早めの申請をご検討ください。
申請方法とステップ
申請は、便利な電子申請システム「Jグランツ」または郵送・持込で行います。
- STEP 1: 書類の準備
公式サイトから交付要綱、募集要領、申請様式をダウンロードし、事業計画書など必要書類を準備します。 - STEP 2: 申請
Jグランツでの電子申請、または下記宛先へ郵送・持込で提出します。 - STEP 3: 審査
概ね1~2ヶ月ごとに開催される審査会で審査が行われます。 - STEP 4: 採択決定
審査後、採択・不採択の結果が通知されます。
申請先・問い合わせ先
【電子申請 (Jグランツ)】
【郵送・持込先】
〒163-8001
東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 東京都庁第一本庁舎20階
東京都産業労働局 総務部 国際金融都市推進課 国際金融都市推進担当 宛
採択事例から見る成功のヒント
過去にどのような事業が採択されたかを知ることは、申請のヒントになります。ここでは令和4年度・5年度の「金融サービス事業化支援補助金」の採択事例の一部をご紹介します。
令和5年度 採択実績
Axios Financial Technologies株式会社
サービス: AIで企業価値を分析し、向上策を提案するアプリ
成果: 協業先金融機関からのフィードバックを基に機能を拡充し、2024年4月にアプリをリリース済み。
Trust株式会社
サービス: AI技術で契約書等の非定型データを定型化し、金融事務を効率化するサービス
成果: 検証の結果、図がある契約書でも正答率93.3%を達成し、自動化可能な精度を確認。
Frich株式会社
サービス: 中堅中小企業向けのオンライン完結型保険販売システムとオリジナル共済商品
成果: 協業先の保険会社全てがマイクロSME市場に興味・関心があると回答し、事業のニーズを検証。
MONO Investment株式会社
サービス: 最新AI技術を活用した個人投資家向けの資産運用AIチャットボット
成果: 一般的なGPTより専門性の高い回答を正確に生成可能であることを確認(正答率83%)。2024年中のサービスリリースを目指す。
令和4年度 採択実績
アドバイザーナビ株式会社
サービス: 性格分析アルゴリズムを用いた投資家と金融アドバイザーのマッチングプラットフォーム
成果: 約80%以上の投資家が「IFAを友人に薦めたい」と回答する高い満足度を確認し、新機能を搭載したサービスを提供開始。
ビー・インフォマティカ株式会社
サービス: 心理統計学テストとAIに基づく、若者やスタートアップ向けの新たな信用スコアリングモデル
成果: 既存の信用データと高い相関が確認され、新たな信用スコアリングモデルとしての有効性を確認。
まとめ:東京の未来を創るチャンスを掴もう
東京都の「フィンテック企業等に対するイノベーション支援事業補助金」は、単なる資金援助ではありません。国際金融都市・東京の未来を担うパートナーとして、スタートアップの挑戦を後押しする強力なプログラムです。
革新的なアイデアや技術を持つフィンテック企業、そしてオープンイノベーションを仕掛ける事業者の皆様は、この絶好の機会をぜひご活用ください。詳細な要件や最新情報は、必ず公式サイトでご確認の上、申請準備を進めましょう。