東京都では、金融分野のイノベーションを加速させるため、革新的なアイデアを持つフィンテック企業やスタートアップを支援する補助金制度を実施しています。本記事では、最大400万円が支給される「フィンテック企業等に対するイノベーション支援事業」について、2つの支援スキームの内容、申請方法、過去の採択事例まで、専門家が徹底的に解説します。
東京都フィンテック企業等に対するイノベーション支援事業とは?
この事業は、東京都が掲げる「国際金融都市・東京」構想2.0の実現に向けた中核的な施策です。フィンテック企業と既存の金融事業者等が連携するオープンイノベーションを促進し、新たな金融サービスの創出・事業化を後押しすることを目的としています。
この補助金のポイント
- 2つの支援メニュー: イベント開催を支援する「オープンイノベーション支援」と、サービス開発を支援する「事業化支援」があります。
- 高い補助額・補助率: 事業化支援では最大400万円、補助率2/3と手厚い支援が受けられます。
- 随時申請可能: 募集期間内であればいつでも申請可能ですが、予算がなくなり次第終了となるため早めの準備が重要です。
2つの支援スキームの概要
本事業は、企業のフェーズや目的に合わせて選べる2つの補助金で構成されています。
1. 金融オープンイノベーション支援補助金
フィンテック企業と金融事業者の協業を促進するイベントやプログラムの開催経費を支援します。
- 対象者: ピッチイベント、アクセラレータプログラム、マッチングイベント等を主催する事業者
- 補助率: 2分の1
- 補助上限額: 1件あたり100万円(複数イベントの複合提供の場合は200万円)
- 対象経費: イベント開催に必要な会場費、人件費、広報費など
2. 金融サービス事業化支援補助金
新たな金融サービスの事業化に向けた実証実験(PoC)など、具体的な開発・検証にかかる経費を支援します。
- 対象者:
- 設立10年未満の都内フィンテック企業等
- 海外のフィンテック企業等と実証的取組を行う都内金融事業者等
- 補助率・上限額:
- 設立10年未満のフィンテック企業等: 補助率2/3、上限400万円
- 海外企業と協業する金融事業者等: 補助率1/2、上限300万円
- 対象経費: 実証実験に必要なシステム開発費、専門家経費、調査費など
補助金制度の全体像(公募要領まとめ)
項目 | 金融オープンイノベーション支援補助金 | 金融サービス事業化支援補助金 |
---|---|---|
補助対象者 | フィンテック関連イベント・プログラムを実施する事業者 | 実証的取組を行う都内フィンテック企業等または金融事業者等 |
補助率 | 2分の1 | 3分の2 または 2分の1 |
補助上限額 | 100万円(複合プログラムは200万円) | 400万円 または 300万円 |
募集期間 | 2025年4月1日(火) ~ 2026年1月30日(金) ※予算上限に達し次第終了 | |
申請方法 | Jグランツ(電子申請)または郵送・持込 |
申請から採択までの流れ
-
1
公募要領の確認・書類準備
公式サイトから最新の公募要領や申請様式をダウンロードし、事業計画書や経費明細書などの必要書類を準備します。 -
2
申請
Jグランツを利用した電子申請が推奨されています。郵送または持参での提出も可能です。 -
3
審査
提出された書類に基づき、専門家等で構成される審査会で事業の新規性、実現可能性、市場性などが審査されます。(審査は概ね1~2か月ごと) -
4
採択・交付決定
審査を通過すると採択が決定し、交付決定通知書が送付されます。 -
5
事業実施と実績報告
計画に沿って事業を実施し、期間終了後に実績報告書と経費の証拠書類を提出します。
過去の採択事例紹介
本事業では、これまでにも多くの革新的なサービスが採択されています。ここでは一部の事例をご紹介します。
EduCare(エデュケア)株式会社(令和4年度採択)
事業内容: 「出世払い型」奨学金(ISA: Income Share Agreement)の提供を目指すEdtech×Fintechスタートアップ。
取組概要: 日本ではまだ黎明期にあるISAの法的・会計的論点を整理し、社会実装に向けたスキームを構築。経済的理由で質の高い教育を諦める人をなくすことを目指しています。本補助金を活用し、弁護士事務所と協働で監督官庁との折衝を進め、事業化に向けた検証を行いました。
MONO Investment株式会社(令和5年度採択)
事業内容: 個人投資家向け資産運用サポートサービスの提供。
取組概要: 最新のAI技術を活用し、資産運用に関する質問に適切に回答できるAIチャットボットを開発。本補助金で実証実験を行い、一般的なGPTよりも専門性の高い回答を正確に生成できることを確認(正答率83%)。金融リテラシーの向上に貢献することを目指しています。
まとめと申請のご案内
東京都の「フィンテック企業等に対するイノベーション支援事業」は、金融分野で新しい挑戦を目指す企業にとって非常に魅力的な制度です。特に「金融サービス事業化支援補助金」は、スタートアップの開発資金を強力にバックアップします。
申請は随時受け付けていますが、予算に限りがあるため、関心のある方は早めに準備を進めることをお勧めします。まずは公式サイトで詳細な公募要領を確認し、自社の事業計画が補助金の趣旨に合致するか検討してみてください。