この記事のポイント
小規模事業者の皆様が活用できる人気の補助金「小規模事業者持続化補助金」には、複数の種類があります。この記事では、令和6年能登半島地震で被災された事業者向けの「災害支援枠」と、全国の事業者が対象の「一般型」の2つを、専門家が分かりやすく徹底解説します。
小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。チラシ作成やウェブサイト制作、店舗改装など、幅広い経費に活用できるため、非常に人気の高い補助金です。
この補助金は、大きく分けて「災害支援枠」と「一般型」の2種類があり、それぞれ対象者や要件が異なります。また、申請窓口が「商工会」地区と「商工会議所」地区で異なるため注意が必要です。
【緊急支援】災害支援枠(令和6年能登半島地震)
令和6年能登半島地震により被害を受けた小規模事業者等の事業再建を支援するための特別な枠です。
制度概要
被災地域の事業者が、災害からの事業再建に向けた計画に基づいて行う取組の経費の一部を補助します。
項目 | 内容 |
---|---|
対象地域 | 石川県、富山県、福井県、新潟県 |
補助上限額 | ① 200万円(事業用資産に直接的な被害があった事業者) ② 100万円(売上減少など間接的な被害があった事業者) |
補助率 | 原則 2/3以内 ※特定の要件を満たす場合、定額補助(全額補助)となる特例あり |
事前着手 | 特例として令和6年1月1日以降に発生した経費も対象となります。 |
補助対象者
以下の要件をすべて満たす小規模事業者等が対象です。
- 対象地域(石川県、富山県、福井県、新潟県)に所在し、令和6年能登半島地震の被害を受けた事業者であること(罹災証明書や売上減少の証明が必要)。
- 商工会の管轄地域で事業を営んでいること(商工会議所地区は窓口が異なります)。
- 小規模事業者の定義に当てはまること(下表参照)。
- 早期の事業再建に向けた計画を策定していること。
小規模事業者の定義
業種 | 常時使用する従業員の数 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
申請スケジュールと問い合わせ先
1次~5次公募は終了しており、現在6次公募以降が計画されています。最新情報は公式サイトで必ずご確認ください。
各県の問い合わせ先(商工会地区)
- 石川県商工会連合会: 076-204-6755
- 富山県商工会連合会: 076-441-2716
- 福井県商工会連合会: 0776-23-3659
- 新潟県商工会連合会: 025-283-1311
(受付時間:9:00~12:00、13:00~17:00 土日祝除く)
【定番】小規模事業者持続化補助金<一般型>
全国の小規模事業者を対象とした、最も一般的な枠です。販路開拓や生産性向上のための幅広い取り組みに活用できます。
申請類型と補助上限額
一般型には複数の申請類型(枠)があり、要件を満たすことで補助上限額が引き上げられます。
類型 | 補助上限額 | 概要 |
---|---|---|
通常枠 | 50万円 | 基本的な販路開拓等の取組 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | 事業場内最低賃金を引き上げる事業者(赤字事業者は補助率3/4に優遇) |
卒業枠 | 200万円 | 雇用を増やし小規模事業者の規模を超える事業者 |
後継者支援枠 | 200万円 | アトツギ甲子園のファイナリスト等 |
創業枠 | 200万円 | 特定創業支援等事業の支援を受けた創業者 |
インボイス特例
免税事業者からインボイス発行事業者に転換する事業者は、上記上限額に一律50万円が上乗せされます。
補助対象経費
販路開拓や生産性向上のために使える経費は多岐にわたります。
- 機械装置等費:製造装置や業務用機材の購入
- 広報費:チラシ、カタログ、看板の作成・設置
- ウェブサイト関連費:ウェブサイトやECサイトの構築・改修(補助金総額の1/4、最大50万円まで)
- 展示会等出展費:国内外の展示会への出展料
- 旅費:販路開拓のための交通費・宿泊費
- 開発費:新商品の試作品開発
- 資料購入費:事業に関連する書籍等の購入
- 借料:機器・設備のリース・レンタル料
- 設備処分費:スペース確保のための設備処分費用
- 委託・外注費:店舗改装やデザイン依頼など
申請から入金までの流れ
申請プロセスは計画的に進めることが重要です。
- 申請の準備:公募要領を確認し、経営計画書・補助事業計画書を作成。
- 商工会/商工会議所へ相談:作成した書類を持参し、「事業支援計画書」の作成を依頼。
- 申請手続き:必要書類を揃え、電子申請(Jグランツ)または郵送で提出。
- 審査・採択:事務局による審査後、採択結果が通知されます。
- 交付決定:「交付決定通知書」を受領後、事業を開始できます。
- 補助事業の実施:計画に沿って経費の支払い等を行います。
- 実績報告:事業完了後、実績報告書と証拠書類を提出。
- 確定検査・金額確定:事務局の検査後、補助金額が確定します。
- 補助金の請求・入金:確定した金額を請求し、後日入金されます。
- 事業効果報告:事業完了から1年後に効果を報告します。
申請前の重要チェックポイント
⚠️ 商工会 vs 商工会議所 あなたの管轄はどっち?
申請先を間違えると不採択となります。事業所の所在地がどちらの管轄か、必ず事前に確認してください。主に市部が商工会議所、町村部が商工会の管轄ですが、例外も多いため、不明な場合は電話で確認しましょう。
注意:悪質なコンサルタントや不正受給
「申請を代行する」と称して高額な成功報酬を請求する業者や、虚偽の申請による不正受給には絶対に関わらないでください。この補助金は事業者自身が計画を作成することが前提です。不正が発覚した場合、補助金の返還や罰則が科せられます。
まとめ
小規模事業者持続化補助金は、事業の成長や再建を目指す事業者にとって強力な味方です。災害支援枠は被災された事業者の復興を後押しし、一般型は新たな挑戦をサポートします。公募要領をよく読み、地域の商工会・商工会議所に相談しながら、計画的に申請準備を進めましょう。