令和6年能登半島地震の教訓:災害に強い情報通信インフラの重要性
2024年1月に発生した令和6年能登半島地震では、大規模な停電や伝送路の断絶により、携帯電話やケーブルテレビといった情報通信インフラに甚大な被害が出ました。土砂崩れによるケーブル網の損壊や、中継局の機能停止は、被災地への情報伝達を困難にし、災害時における情報ライフラインの脆弱性を改めて浮き彫りにしました。
このような教訓を踏まえ、総務省は災害時でも確実かつ安定的な情報伝達を確保するため、ケーブルテレビネットワークの強靱化を支援する補助事業を強化・統合しています。本記事では、2025年度(令和7年度)概算要求で示された最新の「ケーブルテレビネットワークの耐災害性強化事業」について、その全貌を徹底解説します。
この事業の重要ポイント
- 事業統合による利便性向上: 従来の「光化事業」と「ネットワーク整備事業」が統合され、ワンストップで申請可能に。
- 支援内容の拡充: 従来の光化・複線化に加え、非常用電源設備の単独整備も対象となり、より柔軟な災害対策が可能に。
- 能登半島地震対応: 被災地域の迅速な復旧を支援するため、補助率を最大2/3に引き上げる特例措置を設置。
事業の全体像:4つの支援メニューを解説
「ケーブルテレビネットワークの耐災害性強化事業」は、地域のニーズに応じて選択できるよう、主に以下の4つの支援メニューで構成されています。
① ケーブルテレビ光化等整備支援事業
災害に弱い同軸ケーブルで整備されているエリアを、断線しにくく大容量通信が可能な光ファイバーケーブルへ更新するための整備を支援します。これにより、平常時のサービス向上はもちろん、災害時の情報伝達の安定化が期待できます。
② ケーブルテレビ複線化等整備支援事業
土砂崩れや道路の寸断が想定される箇所で、伝送路を2ルート化(複線化)したり、無線化したりすることで、ネットワークの冗長性を確保します。また、障害発生時に迅速な対応を可能にするための遠隔監視制御機能や、停電対策としての非常用電源設備の整備も支援対象です。
③ 通常災害復旧枠
台風や豪雨などの自然災害によって被害を受けたケーブルテレビ関連設備の復旧工事を支援します。補助率は原則1/2です。
④ 令和6年能登半島地震に係る災害復旧枠
能登半島地震で被災した地域のケーブルテレビ設備の復旧を強力に後押しするための特別枠です。補助率が2/3に引き上げられるほか、過去に総務省予算で整備した設備以外の復旧や、応急仮設住宅へのケーブル敷設も対象となるなど、手厚い支援が特徴です。
補助金の詳細:対象者・補助率・対象経費
本事業の基本的な情報を以下の表にまとめました。申請を検討される際の参考にしてください。
項目 | 内容 |
---|---|
補助対象者 | 市町村、市町村の連携主体、第三セクター (これらの者から施設の譲渡等を受ける承継事業者を含む) |
補助対象経費 | 光ファイバケーブル、送受信設備、アンテナ、伝送路設備、無線設備、遠隔監視制御設備、非常用電源設備、及び関連する工事費など |
補助率 | 【光化・複線化等】 ・市町村等:1/2 ・第三セクター等:1/3 【通常災害復旧】 ・1/2 【能登半島地震復旧】 ・2/3(特例措置) |
対象地域 | 全国の市町村(特に条件不利地域などが想定されますが、詳細は公募要領をご確認ください) |
申請から交付までの流れ【5ステップ】
事業の申請は、概ね以下のステップで進みます。公募期間は限られているため、早めの準備が重要です。
- 1公募情報の確認総務省のウェブサイトで公開される公募要領を確認し、事業内容、スケジュール、提出書類を把握します。
- 2事業計画の策定・書類準備整備計画書や経費の見積書など、申請に必要な書類を作成します。地域の課題や整備の必要性を明確にすることが重要です。
- 3申請管轄の総合通信局へ、指定された方法で申請書類を提出します。
- 4審査・交付決定外部有識者による評価を経て、補助金の交付先が決定されます。
- 5事業実施・実績報告交付決定後、計画に沿って事業を実施し、完了後に実績報告書を提出します。
採択に向けたポイントと過去の事例
採択のための重要ポイント
採択審査では、事業計画の具体性や実現可能性が重視されます。特に、整備するケーブルテレビが地域の防災計画に明確に位置付けられていることは重要な要件の一つです。また、なぜその整備が必要なのか、整備によってどのような効果(リスク軽減、住民への安定した情報提供など)が見込めるのかを、客観的なデータを用いて説明することが求められます。
採択事例:萩市(山口県)
萩市では、サブセンター間の伝送路を新たに構築し、全ての総合情報センター間の完全複線化を実現しました。これにより、万が一の伝送路断が発生しても、迂回ルートで情報サービスを継続できるようになり、災害時の安定供給リスクが大幅に軽減されました。(補助額:37,368千円)
まとめ:災害に強い地域社会の実現に向けて
「ケーブルテレビネットワークの耐災害性強化事業」は、激甚化・頻発化する自然災害に備え、地域の情報ライフラインを守るための重要な支援策です。ネットワークの光化や複線化は、有事の際の安定した情報伝達を確保するだけでなく、平時における高速大容量通信サービスの提供にも繋がり、地域全体のデジタル化を促進します。関係する市町村やケーブルテレビ事業者の皆様は、ぜひ本事業の活用をご検討ください。
【お問い合わせ先】
総務省 情報流通行政局 放送技術課
または、お近くの総合通信局までお問い合わせください。