この記事のポイント
- 経済産業省が主導する、大規模な太陽光発電導入を支援する補助金
- オフサイトPPAモデルを想定し、発電事業者、需要家、小売電気事業者の3者連携が基本
- 太陽光発電設備だけでなく、併設する蓄電池も補助対象となる
- 予算規模が大きく上限額がないため、大規模案件に最適
経済産業省が推進する「需要家主導型太陽光発電導入支援事業」は、カーボンニュートラル達成に向けた切り札ともいえる重要な補助金です。特に、自社だけでは大規模な再エネ設備を導入できない企業(需要家)が、発電事業者と連携してクリーンな電力を長期的に確保する「オフサイトコーポレートPPA」モデルの活用を強力に後押しします。
この記事では、令和6年度までの公募情報を基に、本事業の目的から複雑な申請要件、補助対象経費、そして採択を勝ち取るための審査ポイントまで、専門家の視点で徹底的に解説します。来年度以降の事業計画の参考に、ぜひ最後までご覧ください。
需要家主導型太陽光発電導入支援事業とは?
本事業は、再生可能エネルギーの導入拡大と自立化を目的とし、需要家が主体となって発電事業者等と連携して太陽光発電設備を導入する取り組みを支援するものです。大きく分けて2つの事業で構成されています。
本補助金の2つの柱
- 需要家主導型太陽光発電導入促進事業
FIT/FIP制度を利用せず、新たに設置した太陽光発電所の電気を特定の需要家に長期供給する事業(オフサイトPPA等)を支援します。 - 再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業
FIP認定を受けた再エネ発電所に蓄電池を併設する事業を支援し、電力の安定化と最大限の活用を目指します。
補助金 概要テーブル
補助金名 | 需要家主導型太陽光発電導入支援事業 |
---|---|
実施機関 | 経済産業省(執行団体:一般社団法人太陽光発電協会 JPEA) |
予算額(参考) | 令和6年度本予算:158億円 令和5年度補正予算:160億円 |
補助対象事業者 | 発電事業者(民間団体、地方公共団体・企業など) |
補助率 | 【太陽光】1/3〜2/3 【蓄電池】1/3〜1/2 ※事業形態や公募回により変動 |
補助上限額 | なし |
公募期間(参考) | 令和6年度の公募は終了しました。最新情報は公式サイトをご確認ください。 |
補助対象事業の主要要件
本補助金は要件が非常に細かく設定されています。ここでは特に重要なポイントを抜粋して解説します。申請前には必ず最新の公募要領をご確認ください。
① 需要家主導型太陽光発電導入促進事業
- 制度: 非FIT・非FIPの設備であること。自己託送は対象外。
- 規模: 合計出力2MW以上30MW未満(ACベース)。複数地点の合算も可能。
- 単価: 太陽光発電設備の単価が23.9万円/kW(ACベース)未満であること。
- 契約: 8年以上にわたり、発電量の7割以上を需要家に供給する契約を締結すること。
- 系統接続: 申請時に高圧・特高圧は「接続検討申込」、低圧は「系統連系申込」が完了していること。
- その他: リース・レンタルは対象外。「事業計画策定ガイドライン」等を遵守すること。
② 再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業
- 制度: FIP認定を受けた再エネ設備に併設する蓄電池が対象。
- 単価: 蓄電池の単価が12万円/kWh以下であること。
- 容量: 蓄電池の容量が1,000kWh以上であること(または接続される設備の出力に応じた規定あり)。
- 協力義務: 電力需給ひっ迫警報・注意報発出時に、蓄電池を利用した電力供給を行うこと。
補助対象経費
補助対象となる経費は、設備の導入に直接必要な費用です。対象外となる経費も明確に定められているため注意が必要です。
経費区分 | 主な内容 |
---|---|
設計費 | 設備等の設計に要する経費 |
設備購入費 | 太陽電池モジュール、パワコン、架台、蓄電池システム、受配電設備など |
土地造成費 | 設備設置に必要な土地造成費(交付決定後の着手が条件) |
工事費 | 基礎工事、設置工事、電気工事など |
接続費 | 電力系統への接続に伴う工事費負担金 |
⚠️ 補助対象外となる経費の例
- 需要地の敷地内や屋根に設置するオンサイト型の設備
- 中古品、リース・レンタルによる設備
- 交付決定前に契約・発注した経費
- 既存設備の撤去・処分費、土地の購入・賃借料、公道走行車両など
申請の流れ
申請は、デジタル庁が運営する電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」を利用して行います。事前に「gBizIDプライム」アカウントの取得が必須となりますので、余裕を持った準備が必要です。
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1
gBizIDの準備
申請には「gBizIDプライム」アカウントが必須です。発行には1週間程度かかる場合があるため、早めに取得手続きを行いましょう。
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2
申請書類の作成
公式サイトから最新の公募要領と申請様式をダウンロードし、事業計画書や経費明細書などを作成します。記載内容が審査に大きく影響するため、不備のないよう慎重に作成します。
-
3
jGrantsで電子申請
作成した書類をjGrantsシステムにアップロードし、必要事項を入力して申請を完了させます。郵送や持参での申請は受け付けられません。
審査のポイントと採択に向けた対策
本事業は年々申請数が増加し、競争が激化しています。要件を満たすのはもちろんのこと、審査で高く評価される「加点項目」をいかに積み上げるかが採択の鍵となります。
主な審査・加点項目
- 価格競争力: 設備単価が低いほど高く評価されます。
- 事業の安定性: 発電量の買取率(自家消費率)の高さや、買取期間の長さが重視されます。
- 事業規模: 設備一ヶ所あたりの平均出力や蓄電容量の大きさが評価されます。
- 事業の迅速性: 運転開始日が早い計画が有利です。
- 地域連携: 同一市町村内の複数需要家に供給する事業など、地域貢献性も評価対象です。
- その他: 中小企業への電力供給割合、サプライチェーン内での連携、脱炭素先行地域での事業なども加点対象となります。
まとめ
「需要家主導型太陽光発電導入支援事業」は、大規模な再生可能エネルギー導入を目指す事業者にとって非常に魅力的な補助金です。しかし、その要件は複雑で、申請準備には高度な専門知識と周到な計画が求められます。
特に、発電事業者・需要家・小売電気事業者の3者間での契約内容や、コスト効率の高い事業計画の策定が採択を左右します。本補助金の活用を検討される場合は、制度を熟知した専門家へ相談し、万全の体制で申請に臨むことをお勧めします。
お問い合わせ・公式サイト
需要家主導型太陽光・蓄電池導入支援事務局
電話: 03-4590-7681
受付時間 9:30-12:00 / 13:00-17:00 (土日、祝日は除く)