IoTやAI、ドローンといった先端技術を活用して、自社の保安業務を高度化・効率化したいとお考えの中小・中堅企業様は必見です。経済産業省が主導する「スマート保安実証支援事業費補助金」は、まさにそのような取り組みを強力に後押しするための制度です。本記事では、2025年度(令和7年度)の公募実績をもとに、この補助金の概要、対象者、申請の流れ、そして採択に向けたポイントまで、専門家が徹底的に解説します。
この記事のポイント
- スマート保安実証支援事業費補助金の目的と概要がわかる
- 補助上限額や補助率、対象となる事業者の条件がわかる
- 具体的な活用事例や申請の流れがわかる
- 来年度以降の申請に向けた準備のポイントがわかる
スマート保安実証支援事業費補助金とは?
補助金の目的と概要
スマート保安実証支援事業費補助金は、IoT、AI、ドローンなどの新たなテクノロジーを活用し、産業保安分野における安全性と効率性の向上を目指す取り組みを支援する制度です。特に、中小企業や中堅企業が抱える保安業務の課題を解決し、将来にわたって持続可能な保安レベルを構築することを目的としています。具体的には、新たな技術を導入した保安業務の実証にかかる費用の一部を国が補助することで、事業者の負担を軽減し、スマート保安の普及を促進します。
【重要】2025年度(令和7年度)の公募は終了しました
本記事で紹介する公募期間や日程は2025年度の実績です。既に受付は終了していますが、来年度以降の公募に向けた情報収集や事業計画の準備にぜひお役立てください。
補助金の詳細(2025年度実績)
2025年度の公募内容を基に、補助金の具体的な内容を見ていきましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
補助上限額 | 5,000万円 |
補助率 | 中小企業・地方公共団体: 2/3以内 中堅企業: 1/2以内 |
補助対象事業者 | 中小企業、中堅企業、地方公共団体(水力発電所を設置する者に限る) |
公募期間(実績) | 一次:2025年6月20日~7月14日 二次:2025年8月4日~8月19日 |
実施機関 | 経済産業省(事務局:株式会社日本能率協会コンサルティング) |
補助対象となる事業テーマ例
どのような事業が対象となるのか、これまでの採択テーマ例を参考に見てみましょう。
- 運転データを活用した設備・機器劣化のAI予兆診断システム構築
- 外観点検業務におけるドローンを活用した点検システムの構築
- ロボットを活用したスマート保守システムの開発・実証
- IoTセンサーデータと運転データの融合によるAI運転支援システムの構築
- 3D画像を使った現場点検システムの構築
これらはあくまで一例です。自社の課題解決に繋がり、業界のモデルケースとなりうる先進的な取り組みであれば、幅広く対象となる可能性があります。
申請資格と要件
対象となる事業者
補助対象となるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 日本国内に登記し活動実績のある中小企業・中堅企業、または地方公共団体(水力発電所を設置する者に限る)であること。
- 補助事業を遂行できる財務状況であること、または具体的な資金調達計画があること。
- 予算決算及び会計令第70条及び第71条の規定に該当しないこと。
- 経済産業省から補助金交付等停止措置又は指名停止措置が講じられていないこと。
よくある質問:対象者について
Q. AI/IoT技術を開発・提供するベンダー企業も応募できますか?
A. はい、可能です。ただし、ベンダー企業自身が中小企業または中堅企業の要件を満たす必要があります。
Q. 保安業務の委託を受ける事業者も応募できますか?
A. はい、保安業務受託事業者(中小企業、中堅企業に限る)の申請も可能です。
申請から交付までの流れ
申請は、国の補助金申請システム「Jグランツ」を利用したオンライン申請が基本となります。大まかな流れは以下の通りです。
- 1GビズIDプライムの取得
Jグランツでの申請には「GビズIDプライム」アカウントが必須です。取得には数週間かかる場合があるため、早めに準備しましょう。 - 2公募要領の確認・申請書類の準備
公式サイトから公募要領や申請様式をダウンロードし、事業計画書などを作成します。 - 3Jグランツでの電子申請
公募期間内に、Jグランツ上で必要事項を入力し、作成した申請書類をアップロードして提出します。 - 4審査・交付決定
事務局による審査が行われ、採択されると交付決定通知が届きます。 - 5事業の実施
交付決定日以降に、設備の契約や発注、支払いを行います。 - 6実績報告・検査
事業完了後、実績報告書を提出します。その後、事務局による完了検査が行われます。 - 7補助金の支払い
検査完了後、補助金額が確定し、指定の口座に振り込まれます。
採択されるための重要ポイントと注意点
⚠️ 申請時の最重要注意点
- 交付決定前の発注は絶対NG! 交付決定通知を受け取る前に契約・発注した経費は、すべて補助対象外となります。
- 相見積もりは原則3社から! 導入する機器や委託する業務については、経済合理性を示すために原則として3社以上の見積もりが必要です。
- 消費税は補助対象外! 申請する経費は、消費税を除いた金額で計上する必要があります。
この補助金は、単に設備を導入するだけでなく、「技術実証」が目的です。そのため、事業計画書では以下の点を明確にすることが採択の鍵となります。
- 先進性とモデル性:自社の取り組みが、業界全体にとって参考となる先進的なモデルであることを示す。
- 課題解決への貢献度:導入する技術が、自社のどのような保安課題を、どのように解決するのかを具体的に説明する。
- 定量的効果:「保安員の点検時間を〇〇%削減」「異常検知率が〇〇%向上」など、導入効果を具体的な数値で示す。
- 実現可能な計画:事業の実施体制やスケジュールが現実的であり、計画通りに遂行できることを示す。
まとめ
「スマート保安実証支援事業費補助金」は、最大5,000万円、補助率最大2/3という非常に手厚い支援が受けられる魅力的な制度です。IoTやAIを活用した保安業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を検討している企業にとって、大きなチャンスと言えるでしょう。
2025年度の公募は終了しましたが、例年実施される可能性が高い補助金です。来年度の公募開始に乗り遅れないよう、今から情報収集を開始し、自社の課題整理や導入したい技術の検討、事業計画の骨子作成などを進めておくことを強くお勧めします。
お問い合わせ先
「スマート保安実証支援事業費補助金」事務局
(株式会社日本能率協会コンサルティング内)
メールアドレス: smart_hoan@jmac.co.jp
※お問い合わせの際は、企業名・部署名・電話番号・担当者名を記載してください。
※最新の情報は必ず公式サイトをご確認ください。