中小企業の海外展開を後押し!「外国出願支援事業補助金」とは?
海外への事業展開を目指す中小企業にとって、特許や商標などの知的財産権を現地で確保することは成功の鍵を握ります。しかし、外国への出願には高額な費用がかかるのが実情です。そこで活用したいのが、特許庁が主導する「中小企業等海外出願支援事業費補助金(海外出願支援事業)」です。この記事では、2025年度(令和7年度)の公募情報を基に、制度の概要から申請のポイントまで、専門家が分かりやすく徹底解説します。
この補助金の3つの重要ポイント
- 1.費用の半額を補助:外国特許庁への手数料や現地・国内代理人費用、翻訳費用など、対象経費の1/2が補助されます。
- 2.最大300万円の大型支援:1企業あたりの補助上限額は最大300万円。特許なら150万円、実用新案・意匠・商標なら60万円まで支援が受けられます。
- 3.全国の中小企業が対象:日本全国の中小企業、スタートアップ、個人事業主などが対象で、各都道府県の支援機関が申請窓口となっています。
補助金の詳細:対象者・経費・金額
補助対象者(申請できる方)
以下の要件をすべて満たす、日本国内に主たる事業所を有する中小企業者等が対象です。
- 中小企業、個人事業主、大学、研究機関など。
- 応募時点で、日本国特許庁に特許・実用新案・意匠・商標のいずれかを出願済みであること。
- 外国での権利取得後、その権利を活用した事業展開を計画していること。
- 外国出願に必要な資金能力および資金計画を有していること。
補助率と補助上限額
補助率と上限額は以下の通りです。見積書の金額が基準となる点にご注意ください。
項目 | 内容 |
---|---|
補助率 | 補助対象経費の 1/2 以内 |
補助上限額 (出願手続) |
1法人あたり合計 300万円 以内 |
特許出願:150万円 / 件 | |
実用新案・意匠・商標登録出願:60万円 / 件 | |
冒認出願(商標の抜け駆け出願)対策:30万円 / 件 | |
補助上限額 (中間応答等) |
1手続きあたり 50万円(1法人あたりの上限なし) |
補助対象経費
以下の経費が補助の対象となります。消費税は対象外です。
- 外国特許庁への納付手数料(出願料、審査請求料など)
- 現地代理人費用
- 国内代理人費用
- 翻訳費用
申請スケジュールと流れ
2025年度(令和7年度)公募期間(予定)
公募は複数回に分けて実施される予定です。期間は申請窓口となる各地域実施機関によって異なるため、必ず所在地の機関にご確認ください。
種別 | INPIT本部 応募受付期間(目安) |
---|---|
出願手続の補助金(第1回) | 2025年5月12日 ~ 6月2日頃 |
出願手続の補助金(第2回) | 2025年9月上旬 ~ 9月下旬頃 |
中間応答等の補助金 | 2025年7月頃 ~ 2026年1月末頃 |
申請から受給までのステップ
- 事前準備:弁理士等の専門家へ相談し、外国出願費用の見積書を取得します。
- 申請:所在地の地域実施機関(都道府県の産業振興センター等)へ申請書類を提出します。
- 審査・交付決定:審査が行われ、採択されると「交付決定通知書」が届きます。
- 事業実施:交付決定通知後に、代理人へ正式に発注し、出願手続きを進めます。
- 実績報告:出願と支払いを完了させた後、期限内に実績報告書と証憑書類を提出します。
- 補助金受給:報告書の内容が確定された後、補助金が振り込まれます。
⚠️ 申請における最重要注意点
1. 交付決定前の着手はNG!
補助金の対象となるのは、「交付決定通知書」を受け取った後に発注・契約した経費のみです。それ以前に支払った費用は対象外となるため、絶対にフライングしないようにしましょう。
2. 優先権主張期限に注意!
パリ条約に基づく優先権を主張して外国出願する場合、日本出願から1年(意匠・商標は6ヶ月)以内に出願する必要があります。補助金の採択通知は申請から約2ヶ月後になるため、優先権期限が迫っている案件は特に早めの準備・申請が不可欠です。スケジュールを逆算して、余裕を持った計画を立てましょう。
全国の申請窓口(地域実施機関)の例
本事業は、全国の都道府県等に設置された「地域実施機関」が申請窓口となります。以下は過去の実施機関の一例です。最新の情報は必ずINPITまたは各機関の公式サイトでご確認ください。
- 関東地方: (公財)神奈川産業振興センター, 東京都知的財産総合センター, (公財)千葉県産業振興センター, (公財)埼玉県産業振興公社 など
- 近畿地方: (公財)京都産業21, (公財)大阪産業局, (公財)新産業創造研究機構(兵庫県) など
- 東海地方: (公財)あいち産業振興機構, (公財)静岡県産業振興財団, (公財)岐阜県産業経済振興センター など
- 九州地方: (公財)福岡県中小企業振興センター, (一社)長崎県発明協会 など
- 北海道・東北地方: (公財)北海道中小企業総合支援センター, (公財)みやぎ産業振興機構 など
上記以外にも、全国の市区町村で独自の知的財産権取得支援補助金が用意されている場合があります。貴社の所在地に合わせてご確認ください。
まとめ:専門家と連携し、戦略的な海外知財戦略を
中小企業等海外出願支援事業補助金は、海外展開を目指す企業にとって非常に強力な支援制度です。しかし、申請には専門的な知識や煩雑な手続きが伴います。特に、どの国で、どのような権利を取得すべきかという戦略立案は、事業の成否を左右する重要な要素です。
外国出願に強い特許事務所や弁理士は、本補助金の活用経験も豊富です。最適な出願戦略の立案から、各国の代理人との連携、費用見積もりの作成、そして補助金申請のサポートまで、一貫して支援してくれます。
この機会に専門家への相談も視野に入れ、補助金を最大限に活用し、貴社のグローバルな事業展開を加速させてみてはいかがでしょうか。