省エネルギー設備の導入は、コスト削減や環境貢献に繋がる重要な経営課題ですが、その初期投資は決して小さくありません。そんな企業の悩みに応えるのが、経済産業省が実施する「省エネルギー設備投資利子補給金」です。この制度は、省エネ設備導入のために金融機関から受ける融資の利子を、国が最大1.0%、最長10年間にわたって補給してくれる強力な支援策です。
本記事では、この利子補給金制度の概要から対象設備、申請方法、注意点まで、専門家が分かりやすく徹底解説します。設備投資の負担を大幅に軽減し、企業の競争力を高めるチャンスを掴みましょう。
省エネルギー設備投資利子補給金とは?制度概要
まずは、制度の全体像を把握しましょう。主要なポイントを以下の表にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
制度名 | 省エネルギー設備投資利子補給金 |
実施機関 | 経済産業省 資源エネルギー庁(執行団体:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)) |
対象者 | 国内で事業を営む法人・個人事業主 |
支援内容 | 指定金融機関から受ける融資に対する利子補給 |
利子補給率 | 最大1.0% |
利子補給期間 | 最長10年間 |
対象融資額 | 1事業あたり上限100億円 |
公募期間(参考) | 例年複数回実施。最新情報は公式サイトで要確認。(令和7年度 4次公募:2025年10月3日~11月10日) |
この制度を活用する3つのメリット
- 金利負担の大幅軽減: 最大1.0%の利子補給により、実質的な借入金利が下がり、資金繰りが楽になります。
- 投資回収期間の短縮: 支払利息が減ることで、設備投資の回収期間が短縮され、次の戦略的投資へ繋げやすくなります。
- 企業の環境価値向上: 省エネ設備導入は、企業の環境配慮姿勢をアピールする絶好の機会となり、企業イメージや信頼性の向上に貢献します。
対象となる事業者と設備
対象事業者の要件
この制度は、指定金融機関から融資を受けて、以下のいずれかの事業を行う国内の法人または個人事業主が対象です。
- エネルギー消費効率が高い省エネ設備を新設・増設する事業
- 省エネ設備の新設・増設により、事業所全体のエネルギー消費原単位が1%以上改善される事業
- データセンターのクラウド化やEMS導入などによる省エネ事業
※注意:既存設備の更新(入れ替え)は対象外となり、あくまで新設・増設が対象です。
対象設備の具体例
利子補給の対象となるのは、エネルギー消費効率が高い省エネ設備です。具体的には、国の「トップランナー制度」の基準を満たす設備が代表的です。
トップランナー制度対象機器(一部抜粋)
- 高効率空調(エアコンディショナー)
- 業務用給湯器(ガス・石油温水機器)
- ヒートポンプ給湯器
- 高効率照明器具(LEDなど)
- 変圧器(トップランナー変圧器)
- 交流電動機(高効率モーター)
- ショーケース
- 複層ガラス・サッシ
上記以外にも、一世代前のモデルと比較してエネルギー消費効率が向上している設備も対象となる場合があります。詳細はSIIのハンドブック等でご確認ください。
申請から交付までの流れ
申請は事業者単独ではなく、指定金融機関と共同で進める必要があります。大まかな流れは以下の通りです。
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1
指定金融機関への相談まずは、融資を検討している指定金融機関に利子補給金制度の利用について相談します。
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2
融資計画書の共同作成事業者と金融機関が共同で、事業内容や導入設備、省エネ効果などを記載した「融資計画書」を作成します。
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3
金融機関による提出作成した融資計画書は、指定金融機関が取りまとめて執行団体(SII)へ提出します。
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4
審査・交付方針決定SIIにて審査が行われ、要件を満たしていれば「交付方針決定通知書」が発行されます。
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5
融資契約・事業開始交付方針決定後、金融機関と正式な融資契約を締結し、設備の発注・導入事業を開始します。
申請前に知っておくべき重要注意点
⚠️ 注意事項
- 国の他の補助金との併用不可: この利子補給金は、国が財源の他の補助金・助成金との併用はできません。自治体の補助金でも、国庫が財源の場合は対象外となるため、事前に必ず確認が必要です。
- 契約・発注のタイミング: 原則として、交付方針決定の通知前に設備を契約・発注することはできません。フライング発注は絶対におやめください。
- 予算の上限: 公募期間中であっても、申請額が予算上限に達した場合は早期に受付が終了する可能性があります。早めの準備と申請が重要です。
まとめ:計画的な設備投資で未来を拓く
「省エネルギー設備投資利子補給金」は、企業の省エネ化を金融面から強力に後押しする制度です。金利負担を軽減することで、最新の省エネ設備導入のハードルを下げ、長期的なコスト削減と企業の環境価値向上を実現します。
申請には指定金融機関との連携が不可欠です。まずは取引のある金融機関に相談し、自社の設備投資計画が対象になるか確認することから始めましょう。公募情報は随時更新されるため、公式サイトを定期的にチェックすることをお勧めします。