はじめに：なぜ知的財産の助成金・補助金が重要なのか？

新しい技術やデザイン、ブランド名などの「知的財産」は、企業の競争力の源泉です。しかし、特許や商標などを権利化するには、出願費用や登録料、専門家への依頼費用など、決して安くないコストがかかります。特に、事業のグローバル化が進む現代において、海外での権利取得の重要性は増す一方です。

コストを理由に出願を躊躇した結果、高度な技術が流出したり、海外で他社にブランドを先に登録されて事業活動が制限されたりするケースは後を絶ちません。このような事態を避け、中小企業の競争力を強化するために、国や地方自治体は様々な支援制度を用意しています。この記事では、知的財産に関する助成金・補助金・減免制度を網羅的に解説します。

知的財産に関する支援制度の4つの分類

知的財産に関する支援制度は、目的や実施主体によって大きく4つに分類できます。手数料の減免制度は要件を満たせばいつでも申請可能ですが、補助金・助成金は公募期間が定められているため、常に最新情報の確認が必要です。

1. 特許庁手数料の減免制度：審査請求料や特許料（登録料）が軽減・免除されます。
2. 外国出願の補助金：海外の特許庁への出願費用、代理人費用、翻訳費用などが補助されます。
3. 海外での侵害対策の支援金：海外での模倣品対策や、権利侵害訴訟の費用などが補助されます。
4. 地方自治体の補助金：市区町村などが地元の産業振興のために、権利取得費用を助成します。

制度①：特許庁手数料の減免制度

特許庁に直接申請することで、審査請求料と特許料（1年目から10年目まで）が軽減または免除される制度です。対象者は中小企業や個人事業主、大学などで、大企業は対象外です。企業の業種、従業員数、資本金などによって軽減率が異なります。

制度②：外国出願費用を支援する補助金

海外へ特許、実用新案、意匠、商標の出願を予定している中小企業等を対象とした支援です。従来、特許庁が都道府県の中小企業支援センター等を通じて実施していましたが、令和7年度からはINPIT（工業所有権情報・研修館）に移管され、より使いやすくリニューアルされます。

INPIT外国出願補助金（令和7年度～）

海外での権利化に必要な費用（外国特許庁への手数料、現地代理人費用、翻訳費用など）の最大1/2が補助されます。年度をまたぐ事業実施が可能になるなど、支援の幅が拡大される点が大きな特徴です。

制度③：海外での模倣品・侵害対策を支援する補助金

海外で模倣品被害や権利侵害のトラブルに巻き込まれた中小企業を支援する制度です。主にジェトロ（日本貿易振興機構）が窓口となり、対策にかかる費用の一部（費用の2/3～1/2程度）が助成されます。

主な支援事業（令和6年度実績）

• 模倣品対策支援：海外での侵害調査、警告状作成、行政摘発などの費用を助成。
• 冒認商標無効・取消係争支援：第三者に悪意で先取りされた商標を取り消すための異議申立や審判請求の費用を助成。
• 防衛型侵害対策支援：海外企業から警告や訴訟を受けた際の対抗措置にかかる費用を助成。

制度④：【地域別】自治体等が実施する知的財産関連の補助金一覧

お住まいの地域や事業所のある地方自治体でも、独自の補助金制度を実施している場合があります。国の制度と併用できる場合もあるため、ぜひチェックしてみてください。

※上記は一部抜粋です。お住まいの地域の商工会議所や自治体のウェブサイトもご確認ください。

まとめ

知的財産に関する助成金・補助金は、中小企業の成長とグローバル展開を力強く後押しする重要な制度です。国の制度から身近な自治体の制度まで、活用できるものは多岐にわたります。しかし、多くの補助金は公募期間が短く、申請書類の準備も複雑なため、常にアンテナを張っておくことが成功の鍵となります。

どの制度が自社に最適かわからない、申請手続きが不安だという方は、INPITの各都道府県の知財総合支援窓口や、弁理士などの専門家に相談することをおすすめします。