海外で自社のブランドやロゴが、悪意のある第三者によって勝手に商標出願(冒認出願)されてしまう被害が増加しています。このような事態は、海外での事業展開に深刻な影響を及ぼしかねません。この問題に対処するため、日本貿易振興機構(JETRO)は「中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金(冒認商標無効・取消係争支援事業)」を実施しています。
本記事では、この補助金の概要から対象者、申請方法、注意点までを専門家の視点で分かりやすく解説します。海外での商標トラブルでお困りの方は、ぜひご活用ください。
この補助金のポイント
- 海外での冒認商標の取消にかかる費用を支援
- 補助上限額は最大500万円
- 補助率は対象経費の3分の2以内
- 弁護士・弁理士費用も対象
- 全国の中小企業が申請可能
補助金の概要
本補助金は、海外で第三者に冒認出願された商標を無効・取消するための異議申立や審判請求にかかる費用の一部を補助し、中小企業の海外における知的財産権の保護と事業活動の円滑化を支援することを目的としています。
項目 | 内容 |
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補助金名 | 中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金(中小企業等海外侵害対策支援事業)【冒認商標無効・取消係争支援】 |
実施機関 | 日本貿易振興機構(JETRO) |
補助上限額 | 500万円 |
補助率 | 2/3以内 |
公募期間(予定) | 2025年4月21日頃~(例年10月末頃までを想定。詳細は公式サイトで要確認) |
補助対象となる事業者(応募資格)
本補助金の対象となるのは、以下の要件を満たす事業者です。
- 中小企業基本法に定める中小企業者、またはそのグループ(構成員の2/3以上が中小企業者であること)。ただし、みなし大企業は除きます。
- 「地域団体商標」に関する係争については、商工会議所、商工会、NPO法人等も対象となります。
- 取り消そうとする冒認商標と同一または類似の商標権を日本国で保有していること。
⚠️ 注意点:みなし大企業について
以下のいずれかに該当する企業は「みなし大企業」とされ、補助対象外となります。
1. 発行済株式の総数又は出資価格の総額の1/2以上を同一の大企業が所有している
2. 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2/3以上を複数の大企業が所有している
3. 大企業の役員又は職員を兼ねている者が、役員総数の1/2以上を占めている
補助対象となる経費
補助の対象となるのは、海外での冒認商標を無効化・取消するために直接必要となる以下の経費です。
対象となる経費 | 対象とならない経費 |
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申請手続きの流れ
申請は以下のステップで進みます。特に、申請前のJETROとの面談が必須となっている点にご注意ください。
- 1事前相談・面談JETROの担当者と面談し、事業内容や係争状況について相談します。これは申請の必須要件です。
- 2申請書類の準備公募要領に基づき、申請書や登記簿謄本、決算書、日本での商標権の証明資料、冒認出願の証拠資料などを準備します。
- 3申請・書類提出準備した申請書および添付書類を、指定のメールアドレス宛に電子メールで送付します。
- 4審査・交付決定JETROおよび特許庁による審査が行われ、採択されると交付決定通知が届きます。
- 5事業実施・実績報告交付決定後、係争活動を開始します。事業期間終了後、実績報告書と経費の証拠書類を提出します。
- 6補助金額の確定・支払い実績報告の内容が審査され、補助金額が確定した後、指定の口座に補助金が振り込まれます。
まとめ
JETROの「冒認商標無効・取消係争支援事業」は、海外での商標トラブルに直面する中小企業にとって非常に心強い制度です。最大500万円という手厚い支援を活用し、自社の貴重な知的財産を守りましょう。
申請には専門的な知識や周到な準備が求められます。まずは公募要領を熟読し、JETROの担当窓口へ早めに相談することをお勧めします。
お問い合わせ先
ジェトロ 知的財産課
〒107-6006 東京都港区赤坂1-12-32アーク森ビル6F
Tel:03-3582-5198
E-mail:SHINGAI@jetro.go.jp