海外展開で直面する模倣品被害、突然の権利侵害の警告、悪質な商標出願…そんな知的財産トラブルでお悩みの中小企業様へ朗報です。日本貿易振興機構(JETRO)が実施する「中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外侵害対策支援事業)」は、海外での知財トラブル解決にかかる費用を強力にサポートします。
令和7年度 JETRO海外侵害対策支援事業のポイント
- 補助上限額: 最大500万円
- 補助率: 対象経費の3分の2以内
- 対象事業: 海外での模倣品対策、権利侵害訴訟への対応、冒認商標の無効・取消審判など
- 対象者: 海外で知財トラブルを抱える中小企業者等
3つの支援事業で海外の知財リスクに対応
本補助金は、中小企業が直面する海外での知的財産トラブルの状況に応じて、3つの支援事業を用意しています。自社の状況に合った事業を選択して申請することが可能です。
支援事業 | 目的 | 補助上限額 |
---|---|---|
① 模倣品対策支援事業 | 海外での模倣品・海賊版の調査、摘発、警告など、攻めの対策を支援 | 400万円 |
② 防衛型侵害対策支援事業 | 海外で権利侵害の警告や訴訟を受けた際の対応など、守りの対策を支援 | 500万円 |
③ 冒認商標無効・取消係争支援事業 | 第三者に不当に先取りされた商標(冒認商標)の無効・取消を支援 | 500万円 |
① 模倣品対策支援事業の詳細
海外での模倣品被害に悩む企業を対象とした支援です。実施方法として、JETRO主導の「サポート型」と、企業主導の「セルフ型」の2種類があります。
- サポート型: JETROが調査・摘発機関を選定・契約。企業は費用の1/3を負担。
- セルフ型: 企業自身が調査・摘発機関を選定・契約。かかった費用の2/3が間接補助金として交付。
補助対象となる主な活動
- 侵害疑義品の販売・流通・製造状況の調査
- サンプル購入、鑑定、公証
- 権利侵害者への警告状送付
- 行政機関・警察等による行政・刑事摘発、取締り
- 侵害ウェブサイトの削除申請
- 税関登録および差止請求
② 防衛型侵害対策支援事業の詳細
海外の現地企業から「権利を侵害している」との警告を受けたり、訴訟を起こされたりした場合の係争費用を支援します。
補助対象となる主なケース
- 冒認出願(他社による先取り出願)が原因で係争になっている場合
- 無審査で登録された権利が並存し、係争になっている場合
- 事業を実施していない現地企業から権利行使され、係争になっている場合
③ 冒認商標無効・取消係争支援事業の詳細
いわゆる「商標ハイエナ」のように、第三者によって自社の商標が不当に海外で出願・登録されてしまった場合に、その権利を取り消すための係争活動費用を支援します。
補助対象となる主な活動
- 冒認商標に対する無効審判や取消審判の提起
- 審判等にかかる弁護士・弁理士費用、翻訳費用、手数料など
注意点:補助対象外の経費
防衛型・冒認商標支援事業において、損害賠償金や和解金、商標の買取費用は補助対象外となりますのでご注意ください。
補助対象となる中小企業の要件
本補助金の対象となるのは、中小企業基本法に定められた「中小企業者」です。業種ごとに資本金または従業員数の要件が定められています。
業種分類 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
---|---|---|
製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
【重要】「みなし大企業」は対象外です
上記の中小企業の定義を満たしていても、実質的に大企業の傘下にあると判断される「みなし大企業」は本補助金の対象外となります。発行済株式の1/2以上を単一の大企業が所有している場合や、役員総数の1/2以上を大企業の役職員が兼任している場合などが該当します。申請前に必ずご確認ください。
申請から支援までの流れ
申請を検討される事業者は、以下の流れで手続きを進めることになります。事業によって細部は異なりますが、大まかなフローは共通しています。
- 【STEP 1】JETROへの事前相談 (必須)
- 【STEP 2】申請書の作成・提出
- 【STEP 3】審査・選定、交付決定通知
- 【STEP 4】支援事業の実施
- 【STEP 5】実績報告書の提出
- 【STEP 6】補助金額の確定・精算
申請書提出前にJETROとの面談等が必須とされていますので、まずは専門家への相談から始めましょう。
まとめ:海外展開の知財リスクに備える第一歩
海外でのビジネス展開において、知的財産の保護は事業の成否を分ける重要な要素です。この補助金を活用することで、これまで費用面で躊躇していた模倣品対策や、万が一の訴訟リスクへの備えを具体的に進めることができます。海外展開を成功させるため、ぜひ本事業の活用をご検討ください。