2050年の脱炭素社会実現に向け、ビルの省エネルギー化は喫緊の課題です。この記事では、経済産業省が主導する「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業」について、対象者、補助額、申請方法などをプロの視点から分かりやすく解説します。大規模建築物の新築や改修を計画している事業者様は必見です。
ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業とは?
「ZEB実証事業」は、快適な室内環境を保ちながら、建物のエネルギー消費量を大幅に削減し、最終的にゼロにすることを目指す「ZEB(ゼブ)」の実現・普及を目的とした補助金制度です。特に、ZEB化の難易度が高いとされる民間の大規模建築物(新築10,000㎡以上、既存2,000㎡以上)を対象に、先進技術の導入を支援し、その設計ノウハウや運用実績を社会に広く共有することを目指しています。
事業の背景と目的
政府は「第6次エネルギー基本計画」において、「2030年度以降に新築される建築物についてZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」という目標を掲げています。本事業は、この目標達成に向けた重要な施策の一つであり、大規模建築物におけるZEB化のモデルケースを創出することで、脱炭素社会への移行を加速させることを目的としています。
補助対象事業の概要
本事業の具体的な補助対象や補助率について、以下の表にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
対象建築物 | 民間の大規模建築物 ・新築:延べ面積10,000㎡以上 ・既存建築物の改修:延べ面積2,000㎡以上 |
補助対象経費 | ZEBの実現に不可欠な、省エネ性能の高い設備(空調、換気、照明、給湯等)、BEMS、再生可能エネルギー設備等の導入にかかる設計費、設備費、工事費など。 |
補助率 | 補助対象経費の3分の2以内 |
補助上限額 | 最大 5億円/件 |
⚠️ 注意:補助対象外となる建築物
本事業は環境省の連携事業であり、以下の建築物は本事業の補助対象外となるためご注意ください。
・地方公共団体の建築物(地方独立行政法人、公営企業を含む)
・環境省が実施する別事業の対象要件を満たす建築物(延べ面積2,000㎡未満の業務用建築物など)
申請スケジュールと流れ
公募は例年、複数回に分けて実施される傾向があります。次回の公募に備え、過去の実績から大まかなスケジュールと申請の流れを把握しておきましょう。
公募期間の例(令和5年度実績)
- 一次公募:2023年5月8日~2023年6月5日
- 二次公募:2023年7月31日~2023年8月28日
※最新の公募情報は必ず公式サイトでご確認ください。
申請から交付までの5ステップ
- Step 1: GビズIDの取得
申請は電子申請システム「jGrants」で行うため、「GビズIDプライムアカウント」が必須です。取得には2週間程度かかる場合があるため、早めに手続きを行いましょう。 - Step 2: ZEBプランナーとの連携と事業計画策定
ZEBの設計・コンサルティングを行う専門家「ZEBプランナー」との連携が重要です。共同で事業計画を策定し、申請書類を作成します。 - Step 3: jGrantsでの電子申請
公募期間内に、jGrantsを通じて公募要領で定められた全ての申請書類を提出します。 - Step 4: 審査・交付決定
学識経験者等で構成される審査委員会による厳正な審査が行われます。エネルギー削減率だけでなく、費用対効果や先進技術の導入計画なども評価されます。 - Step 5: 事業開始
交付決定後、補助事業を開始できます。事業完了後は実績報告が必要です。
まとめと公式サイト情報
「ZEB実証事業」は、大規模建築物の脱炭素化を強力に後押しする、非常に価値の高い補助金です。補助額が大きい分、計画策定や書類作成には専門的な知識が求められるため、ZEBプランナーとの早期連携が成功のカギとなります。
次回の公募に向けて、今から情報収集と準備を始めましょう。最新情報や公募要領の詳細は、必ず執行団体の公式サイトをご確認ください。
お問い合わせ・公式サイト
一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) ZEB事務局
電話番号: 03-5565-4063
(受付時間:平日10:00~12:00、13:00~17:00)