ビルの新築や大規模改修を計画中の事業者様へ。建物のエネルギー消費量を大幅に削減し、脱炭素社会に貢献する「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の実現を強力に後押しする補助金制度があるのをご存知ですか?本記事では、経済産業省や環境省が推進する「ZEB実証事業」について、その概要から対象設備、補助率、申請のポイントまでプロが徹底的に解説します。
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)実証事業とは?
ZEB実証事業とは、業務用ビル等において、年間の一次エネルギー消費量を大幅に削減し、再生可能エネルギーの導入と合わせてエネルギー収支をゼロにすることを目指す「ZEB(ゼブ)」の実現を支援する補助金制度です。経済産業省と環境省がそれぞれ管轄し、ビルの新築や既存ビルの改修にかかる費用の一部を補助することで、省エネ性能の高い建物の普及を促進することを目的としています。
💡 ZEBの達成レベルについて
ZEBは、省エネ性能の達成度に応じて、以下の4段階に定義されています。
- 『ZEB』: 省エネ(50%以上)+創エネでエネルギー消費量を100%以上削減
- Nearly ZEB: 省エネ(50%以上)+創エネでエネルギー消費量を75%以上削減
- ZEB Ready: 省エネのみでエネルギー消費量を50%以上削減
- ZEB Oriented: 延床面積10,000㎡以上の建物で、省エネ(用途により30%~40%以上)+未評価技術の導入
補助金の額や要件は、どのレベルを目指すかによって異なります。
補助金の概要(令和4・5年度事業参考)
ZEB関連の補助金は、主に経済産業省と環境省から公募されています。管轄省庁によって対象となる建物の規模や要件が異なるため、注意が必要です。ここでは、過去の公募情報を参考に概要をまとめます。
1. 経済産業省「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル実証事業」
主に大規模な建築物を対象としています。執行団体は一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)です。
項目 | 内容 |
---|---|
対象建築物 | ・新築:延べ面積10,000㎡以上 ・既存:延べ面積2,000㎡以上 |
対象者 | 建築主(所有者)、ESCO事業者、リース事業者など |
補助率 | 補助対象経費の2/3以内 |
補助上限額 | 最大 5億円/年(複数年度事業は全体で10億円) |
対象経費 | 設計費、設備費、工事費 |
2. 環境省「建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業」
中小規模の建築物を主な対象とし、地方公共団体の施設も広くカバーしています。執行団体は一般社団法人静岡県環境資源協会です。
項目 | 内容 |
---|---|
対象建築物 | ・新築:延べ面積10,000㎡未満 ・既存:延べ面積2,000㎡未満 ・地方公共団体所有の建物:面積要件なし |
対象者 | 民間企業、個人事業主、地方公共団体、学校法人、医療法人など |
補助率 | ZEB達成度により1/2~2/3 |
補助上限額 | 最大 5億円(建物の規模により変動) |
対象経費 | 設備費、工事費、事務費など |
申請から交付までの流れ
ZEB補助金の申請は専門的な知識を要するため、計画的に進めることが重要です。一般的なフローは以下の通りです。
- 事業計画の策定とZEBプランナーへの相談: ZEBの設計・コンサルティングを支援する専門家「ZEBプランナー」と連携し、事業計画を具体化します。
- 公募期間の確認と申請準備: 執行団体のウェブサイトで公募期間を確認します。電子申請に必要な「GビズIDプライムアカウント」の取得には時間がかかるため、早めに手続きを行いましょう。
- 交付申請: 公募要領に従い、申請書類を作成し、jGrants(電子申請システム)等で申請します。
- 審査・採択: 審査委員会による厳正な審査が行われ、採択事業者が決定されます。
- 交付決定・事業開始: 交付決定通知を受けた後、補助事業を開始できます。
- 事業完了・実績報告: 事業完了後、実績報告書を提出します。
- 補助金額の確定・支払い: 報告書の内容が審査され、補助金額が確定・支払われます。
⚠️ 申請時の重要ポイント
- ZEBプランナーの関与: 申請には、SIIに登録された「ZEBプランナー」の関与が必須となる場合が多いです。早めに相談先を見つけましょう。
- ZEBリーディング・オーナー登録: 事業終了時までに、ZEBの普及に貢献する先進的な建築物のオーナーとして「ZEBリーディング・オーナー」への登録が求められます。
- 公募要領の熟読: 年度や省庁によって要件が細かく異なります。必ず最新の公募要領を隅々まで確認してください。
まとめと今後の動向
ZEB実証事業は、初期投資が大きいビルの省エネ化・脱炭素化を強力に推進するための非常に有効な制度です。申請には専門的な計画や書類作成が必要ですが、最大で数億円規模の補助を受けられる大きなメリットがあります。
令和4年度や5年度の公募は既に終了していますが、脱炭素化の流れは加速しており、今後も同様の補助金事業が継続される可能性は非常に高いです。特に、令和7年度の事業についても予告が出始めています。ビルの新築・改修を検討している事業者は、今のうちから情報収集を開始し、ZEBプランナーに相談するなど、準備を進めておくことを強くお勧めします。