この記事のポイント
- 最大5,000万円の助成金で、地域の新規事業の初期投資を支援
- 地域資源の活用や地域課題の解決に貢献する事業が対象
- デジタル、脱炭素、女性・若者活躍に関連する事業は補助率が最大3/4に優遇
- 利用には地域金融機関からの融資と、市町村との事前連携が必須
- 事業継続率94%と高く、自治体・金融機関の伴走支援が手厚い
ローカル10,000プロジェクト(地域経済循環創造事業交付金)とは?
ローカル10,000プロジェクト(正式名称:地域経済循環創造事業交付金)とは、地域が抱える課題を解決し、地域経済の活性化を目指す事業者を支援するための国の制度です。総務省が管轄しており、地域の民間事業者が地域金融機関から融資を受けて新しい事業を始める際の初期投資費用(施設整備や機械装置の導入など)に対して、国と市町村が助成金を交付します。
この制度の最大の特徴は、単なる資金提供に留まらず、「産官学金労言」の連携を重視している点です。地域の金融機関や地方公共団体が事業計画段階から伴走支援を行うことで、事業の成功確率を高め、持続可能な地域経済の循環を創り出すことを目的としています。
制度の概要をチェック!対象事業や助成額
制度の具体的な内容を詳しく見ていきましょう。自社の事業が対象になるか、どれくらいの支援が受けられるのかを確認してください。
対象となる事業の5つの要件
ローカル10,000プロジェクトの対象となるには、以下の5つの要件を満たす事業である必要があります。
- 地域密着型:地域の資源(農産物、観光資源、伝統技術など)を活用する事業であること。
- 地域課題への対応:人口減少、高齢化、産業の衰退、環境問題など、その地域が抱える公共的な課題の解決に貢献する事業であること。
- 地域金融機関等からの資金調達:地域の金融機関からの融資や、地域活性化ファンドからの出資などを受けること。
- 新規性:創業、第二創業、あるいは既存事業者が新たに取り組む新規事業であること。
- モデル性:他の地域のモデルとなるような先進的・持続可能な取り組みであること。
助成額と補助率
助成額は、地域金融機関からの融資額と公費(助成額)の比率によって変動します。大規模な事業にも対応可能です。
| 融資額と公費の比率 | 助成上限額 |
|---|---|
| 2.0倍以上の場合 | 5,000万円 |
| 1.5倍以上 2.0倍未満の場合 | 3,500万円 |
| 1.0倍以上 1.5倍未満の場合 | 2,500万円 |
補助率は原則として対象経費の1/2ですが、以下の重点支援分野に該当する場合や、条件不利地域で事業を行う場合には、補助率が優遇されます。
- 【補助率3/4】生産性向上に資するデジタル技術の活用に関連する事業
- 【補助率3/4】脱炭素に資する地域再エネの活用等に関連する事業
- 【補助率3/4】地域の女性や若者の活躍に関連する事業(新規)
- 【補助率2/3~3/4】過疎地域などの条件不利地域での事業
対象となる経費
助成の対象となるのは、事業の立ち上げに必要な初期投資費用です。運転資金は対象外となるため注意が必要です。
- 施設整備・改修費:店舗や工場の新築、改修工事費用
- 機械装置費:事業に必要な機械や設備の購入費用
- 備品費:事業用の器具や備品の購入費用
申請前に必ず確認!重要なポイントと注意点
ローカル10,000プロジェクトの活用を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
最重要:金融機関・自治体との事前相談
この制度は、国に申請書類を提出する前に、地域の金融機関や事業を実施する市町村と十分な事前調整・連携を行うことが絶対条件です。事業計画の構想段階から積極的に相談し、協力体制を築くことが採択への第一歩となります。
制度改正による変更点(令和6年度補正予算以降)
近年、制度がより使いやすくなるよう改正が行われています。
- 重点支援項目の追加:「地域の女性や若者の活躍に関連する事業」が追加され、補助率が3/4に優遇されます。
- 実施期間の拡大:事業の実施期間が、これまでの単年度から最大2年まで拡大されました。
- 事前着手の柔軟化:「やむを得ない事情」がある場合、交付決定前の事業着手(発注など)が可能になりました。
- リース活用の弾力化:対象経費の一部をリースで調達する場合、そのリース額を融資相当額とみなすことが可能になりました(ただし金融機関からの融資は必須)。
どんな事業が採択されている?具体的な採択事例
実際にどのような事業が採択されているのか、総務省が公表している事例をいくつかご紹介します。自社の事業計画の参考にしてください。
【デジタル技術活用】農業DX(長野県佐久市)
最新のICT設備を導入したハウスでいちご狩り事業を開始。温度や日照時間などを24時間体制で環境制御し、生産性を劇的に向上。同時に、自社開発の農業スキルシェアサービスも改修し、農業技術の継承や後継者育成にも貢献しています。
【脱炭素】循環型醸造事業(長野県佐久市)
工場跡を再活用し、エネルギー源に地元産の間伐材(薪)を利用する「どぶろく」の醸造所を開設。山林保全から良質な米生産へと繋がる環境循環の仕組みを構築し、空き店舗を活用したレストランも開業することで雇用創出にも繋げています。
【女性・若者活躍】子育て中の女性向け就労支援(鹿児島県出水市)
商店街の金融機関跡地を活用し、事業所内保育施設を併設したコワーキングスペースを整備。子育て中の女性がテレワークでWEBライティングのスキルアップと仕事ができる環境を提供し、人口流出の抑制と商店街の活性化を図っています。
他の補助金との違いは?
ローカル10,000プロジェクトは、他の有名な補助金とどう違うのでしょうか。特徴を比較してみましょう。
| 制度名 | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| ローカル10,000 | 地域課題解決型の新規事業支援 | 金融機関・自治体との連携が必須。初期投資(ハード)が中心。 |
| ものづくり補助金 | 革新的な製品・サービス開発 | 設備投資が必須。生産性向上が要件。 |
| 事業再構築補助金 | 思い切った事業再構築 | 新市場進出や業態転換など大規模な変革が対象。建物費も対象。 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者の販路開拓 | 広報費や展示会出展費などソフト経費が中心。上限額は比較的低い。 |
まとめ
ローカル10,000プロジェクトは、地域に根ざした新しい事業を立ち上げたい事業者にとって、非常に強力な支援制度です。最大5,000万円という大きな助成額に加え、自治体や金融機関からの手厚いサポートを受けられる点が大きな魅力です。
ただし、その分、事業計画の質や地域への貢献度、関係機関との連携が厳しく審査されます。この制度の活用を検討される方は、まずは事業を計画している地域の市町村役場の担当課や、取引のある地域金融機関に相談することから始めてみてください。あなたのアイデアが、地域を元気にする大きな一歩となるかもしれません。