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ひとり親家庭で子育てと仕事を両立する中で、「急な病気で動けない」「残業で子どものお迎えに間に合わない」「就職活動に集中したいけど、家事が…」といった悩みを抱えていませんか?頼れる人が近くにいなくて、一人で抱え込んでしまうことも少なくないでしょう。そんな時に心強い味方となるのが、国が推進し、各自治体が実施する「ひとり親家庭等日常生活支援事業」です。この制度を活用すれば、専門の家庭生活支援員(ヘルパー)がご自宅などに派遣され、家事や育児を一時的にサポートしてくれます。所得に応じては無料で利用できる場合もあり、経済的な負担を抑えながら「いざという時」を乗り越えるための重要なセーフティネットです。この記事では、制度の詳しい内容から対象者、利用料金、申請方法まで、あなたが今すぐ行動に移せるように分かりやすく徹底解説します。
ひとり親家庭等日常生活支援事業とは?
まずは、この制度がどのようなものなのか、基本的な概要から見ていきましょう。
制度の目的と概要
この事業は、ひとり親家庭や寡婦の方が、仕事と子育ての両立や自立促進の過程で直面する一時的な困難を乗り越えられるよう支援することを目的としています。
- 正式名称: ひとり親家庭等日常生活支援事業
- 実施組織: こども家庭庁が制度を所管し、実際の事業は各都道府県や市区町村が実施しています。
- 目的・背景: ひとり親家庭が、修学や技能習得、病気、冠婚葬祭、残業などの理由で一時的に生活援助や保育サービスが必要になった場合に、家庭生活支援員(ヘルパー)を派遣し、家庭生活の安定を図ることを目的としています。
重要ポイント:この事業は全国的な制度ですが、実施しているかどうか、また支援内容の詳細は自治体によって異なります。利用を検討する際は、必ずお住まいの市区町村の担当窓口に確認することが最初のステップです。
どんな人が利用できるの?(対象者)
この事業の対象となるのは、主に以下のいずれかに該当する方です。
- 母子家庭・父子家庭: 20歳未満の児童を扶養している、配偶者のいない女性または男性。死別、離婚、未婚の母・父などが含まれます。
- 寡婦: かつて母子家庭の母であった方で、子どもが成人した後も配偶者がいない状態の方。
- 離婚調停中の方など: 自治体によっては、離婚前から支援が必要な方(例:離婚調停中で配偶者と別居している方)も対象となる場合があります。
これらの家庭が、以下のような「派遣事由」に該当する場合にサービスを利用できます。
- 自立促進に必要な事由: 資格取得のための通学、就職活動など。
- 社会的な事由: 親自身の病気、出産、家族の看護、事故、災害、冠婚葬祭、出張、残業、学校等の公的行事への参加など。
- 生活環境の激変: 離婚等により、日常生活を営むのに大きな支障が生じている場合。
どんな支援を受けられるの?
提供されるサービスは、大きく「生活援助」と「子育て支援」の2種類に分けられます。
支援内容の具体例
- 生活援助(利用者の自宅で実施):
- 食事の世話(簡単な調理や後片付け)
- 住居の掃除、整理整頓
- 身の回りの世話
- 生活必需品等の買い物
- 医療機関等との連絡
- 子育て支援(支援員の居宅や児童館などで実施):
- 乳幼児の保育(授乳、おむつ交換、沐浴介助など)
- 児童の生活指導
- 保育園や学童などへの送迎(※送迎のみの利用は不可の場合が多い)
お手伝いできること・できないこと
この事業は、あくまで日常生活の範囲内での一時的なサポートです。どこまでお願いできるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
| サービス内容 | お手伝いできること(例) | お手伝いできないこと(例) |
|---|---|---|
| 子育て支援 | 乳幼児の保育、食事の世話、身の回りの世話、保育園等への送迎 | 感染症にかかっている子の世話、習い事への送迎、学習指導 |
| 生活援助 | 簡単な食事の準備・後片付け、部屋の掃除、洗濯、生活必需品の買い物 | 大掃除(換気扇や網戸)、庭の手入れ、ペットの世話、来客対応 |
気になる利用料金は?所得に応じて無料になることも
この事業の大きな魅力は、非常に低額な料金で利用できる点です。料金体系は自治体によって異なりますが、多くの自治体で所得に応じた階層が設定されています。
自治体による料金体系の例(大阪市の場合)
| 利用世帯の区分 | 子育て支援(1時間あたり) | 生活援助(1時間あたり) |
|---|---|---|
| A 生活保護世帯 | 0円 | 0円 |
| B 市民税非課税世帯 | 0円 | 0円 |
| C 児童扶養手当支給水準の世帯 | 70円 | 150円 |
| D 上記以外の世帯 | 150円 | 300円 |
上記は一例です。横浜市や滋賀県のように、所得に関わらず利用料が無料の自治体もあります。ご自身の負担額については、必ずお住まいの自治体にご確認ください。
どうすれば利用できる?申請から利用までの5ステップ
利用するためには、事前の登録が必要です。急に必要になってもすぐには使えないため、あらかじめ手続きの流れを把握しておきましょう。ここでは一般的な流れを解説します。
- お住まいの市区町村窓口で相談・事前登録申請: まずは、お住まいの市区町村のひとり親支援担当課(子育て支援課、こども家庭課など)に連絡し、事業について相談します。そこで「利用者登録」のための申請書を提出します。
- 必要書類の提出: 申請書とあわせて、本人確認書類や所得を証明する書類などを提出します。
- 自治体による審査・利用決定(証明書発行): 提出された書類をもとに自治体が審査を行い、対象者であると認められると「利用決定通知書」や「利用証明書」などが発行されます。
- 派遣事業者への登録・連絡: 自治体から委託を受けた派遣事業者(社会福祉協議会、NPO法人など)に連絡し、利用者として登録します。
- 支援の依頼とサービス利用開始: 実際に支援が必要になった際に、派遣事業者に連絡し、日時や内容を調整してヘルパーを派遣してもらいます。
申請に必要な書類一覧(一般的な例)
自治体により異なりますが、一般的に以下の書類が必要となります。
- 利用者登録申請書(各自治体の様式)
- マイナンバーカードの写し(または通知カード+運転免許証などの本人確認書類)
- 世帯全員の住民票の写し
- 児童扶養手当証書の写し、または戸籍全部事項証明書(ひとり親であることを証明するため)
- 所得課税証明書(所得を確認するため)
- その他、自治体が必要と認める書類(例:離婚調停中であることを証明する書類など)
よくある質問(FAQ)
Q1. 自分の住んでいる自治体で実施しているか、どうすればわかりますか?
A1. お住まいの市区町村のウェブサイトで「ひとり親家庭等日常生活支援事業」と検索するか、子育て支援や福祉担当の課に直接電話で問い合わせるのが最も確実です。
Q2. 保育園や学校への送迎だけでもお願いできますか?
A2. 多くの自治体では、送迎の前後に保育や生活援助を伴うことが利用の条件となっており、「送迎のみ」の利用は対象外となることが多いです。詳細は自治体にご確認ください。
Q3. 仕事の残業で、毎週決まった曜日に利用したいのですが可能ですか?
A3. 自治体によりますが、小学生以下のお子さんがいる家庭の残業を理由とした場合に限り、定期的な利用を認めている場合があります。ただし、あくまで一時的な支援が原則のため、利用期間や時間には上限(例:月10日、年間240時間までなど)が設けられています。
Q4. 利用できる期間に上限はありますか?
A4. はい、一時的な支援という事業の性質上、多くの自治体で「原則6ヶ月まで」といった期間の上限が定められています。長期的な支援が必要な場合は、他の福祉サービスを検討する必要があります。
Q5. 登録さえすれば、いつでも必ずヘルパーさんに来てもらえますか?
A5. 必ずしもそうとは限りません。派遣事業者に登録しているヘルパーさんの人数やスケジュール、また自治体の予算には限りがあります。そのため、ご希望の日時に添えない場合もあります。特に急な依頼は調整が難しいことがあるため、利用の可能性が少しでもあれば、早めに相談・依頼することが重要です。
まとめ:ひとりで抱え込まず、公的なサポートを上手に活用しよう
「ひとり親家庭等日常生活支援事業」は、ひとり親家庭が直面する「ちょっと助けてほしい」という場面で、具体的な手助けをしてくれる非常に価値のある制度です。経済的な負担も少なく、安心して利用できるのが大きなメリットです。
子育てや仕事で忙しい毎日、すべてを一人で完璧にこなす必要はありません。困ったときには、こうした公的なサポートを上手に活用して、心と身体の負担を軽くしましょう。
まずは、お住まいの市区町村の窓口に「ひとり親家庭等日常生活支援事業について聞きたい」と電話で問い合わせてみることから始めてみてください。