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重度の障害をお持ちの方の生活を経済的に支える制度として、「特別障害者手当」と「特別障害給付金」があります。この2つの制度は名前が似ているため混同されがちですが、その目的や対象者は全く異なります。特に、過去に国民年金に加入していなかったために障害年金を受け取れない方にとっては、「特別障害給付金」が重要なセーフティネットとなります。この記事では、それぞれの制度の違いを明確にし、対象者、支給額、申請方法、そして受給のポイントまで、どこよりも分かりやすく徹底的に解説します。ご自身やご家族が対象になるか、ぜひ最後までご確認ください。
2つの制度の概要 – あなたはどちらの対象?
まずは、「特別障害者手当」と「特別障害給付金」がそれぞれどのような制度なのか、基本的な違いを理解しましょう。どちらの制度に該当する可能性があるか、大まかな当たりをつけることができます。
特別障害者手当とは? – 在宅の重度障害者向けの手当
特別障害者手当は、精神または身体に著しく重度の障害があるため、日常生活において常時特別な介護を必要とする20歳以上の方を対象とした国の手当です。この制度の目的は、重度の障害によって生じる精神的・経済的な負担を軽減することにあります。原則として、病院に3ヶ月以上入院している方や、施設に入所している方は対象外となります。
特別障害給付金とは? – 年金未加入だった方向けの救済制度
特別障害給付金は、国民年金への加入が任意だった時代に未加入であったために、障害基礎年金などを受けられない方を救済するための福祉的な給付金です。具体的には、過去に学生であった方や、会社員などの配偶者であった方が主な対象となります。障害年金制度とは異なる、独自の制度として創設されました。
一目でわかる!2つの制度の比較表
2つの制度の主な違いを以下の表にまとめました。
| 項目 | 特別障害者手当 | 特別障害給付金 |
|---|---|---|
| 目的 | 重度障害者の負担軽減 | 無年金障害者の救済 |
| 根拠法 | 特別児童扶養手当等の支給に関する法律 | 特別障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律 |
| 主な対象者 | 在宅で常時介護が必要な20歳以上の重度障害者 | 国民年金任意加入期間に未加入だった障害者(元学生・被扶養配偶者など) |
| 実施組織 | 国(市区町村が窓口) | 日本年金機構(市区町村が窓口) |
| 所得制限 | 本人、配偶者、扶養義務者にあり | 本人のみ(一部支給停止あり) |
支給額はいくら? – 最新の金額をチェック
受給できる金額は、生活設計において非常に重要です。それぞれの制度の支給額と支給時期を確認しましょう。
特別障害者手当の支給額
特別障害者手当の支給額は、障害の等級に関わらず一律です。
- 月額:27,980円(令和5年4月現在)
- 支給時期:原則として毎年2月、5月、8月、11月に、それぞれの前月分までがまとめて支給されます。
特別障害給付金の支給額
特別障害給付金の支給額は、障害の程度(障害基礎年金の等級に相当)によって異なります。金額は物価の変動に応じて毎年度改定されます。
| 障害等級 | 月額(令和6年度) | 月額(令和7年度見込み) |
|---|---|---|
| 1級 相当 | 55,350円 | 56,850円 |
| 2級 相当 | 44,280円 | 45,480円 |
支給時期は、原則として毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の年6回、それぞれの前月分までがまとめて支給されます。
対象者と受給条件 – 自分が当てはまるか確認しよう
ここでは、それぞれの制度の対象となる方の具体的な条件を詳しく見ていきます。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
特別障害者手当の対象者・条件
- 年齢:20歳以上であること。
- 居住地:日本国内に住所があり、在宅で生活していること。
- 障害の状態:精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活で常時特別な介護を必要とする状態であること。(目安:身体障害者手帳1・2級程度の障害が重複している、または同等の疾病・精神障害がある状態)
- 除外条件:病院や診療所に継続して3ヶ月を超えて入院していないこと。また、障害者支援施設などに入所していないこと。
- 所得制限:受給者本人、その配偶者、または生計を維持する扶養義務者(同居の親族など)の前年の所得が一定額を超える場合は支給されません。
特別障害給付金の対象者・条件
以下のいずれかに該当し、当時国民年金に任意加入していなかった期間中に障害の原因となった病気やケガの初診日がある方が対象です。
- 元学生の方:平成3年3月31日以前に、国民年金任意加入対象であった学生の方。
- 元被扶養配偶者の方:昭和61年3月31日以前に、厚生年金や共済組合の加入者に扶養されていた配偶者の方。
重要ポイント:
・現在、障害基礎年金1級または2級に相当する障害の状態にあることが必要です。
・原則として、65歳に達する日の前日までに障害状態に該当している必要があります。
・障害基礎年金や障害厚生年金など、他の公的年金の障害給付を受けられる方は対象外です。
・受給者本人の前年の所得が一定額を超える場合、給付金の全額または半額が支給停止となります。(扶養義務者の所得は問われません)
申請方法と必要書類 – ステップバイステップ解説
どちらの制度も、申請をしなければ受給することはできません。ここでは、申請から受給開始までの流れと、必要な書類について解説します。
特別障害者手当の申請フロー
Step1: 窓口で相談・書類の入手
お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で相談し、申請に必要な書類一式を受け取ります。
Step2: 必要書類の準備
医師に診断書の作成を依頼するなど、以下の書類を準備します。自治体によって異なる場合があるため、必ず事前に確認してください。
- 特別障害者手当認定請求書
- 特別障害者手当認定診断書(所定の様式)
- 所得状況届
- 戸籍謄本または抄本
- 受給者本人名義の預金通帳の写し
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳(お持ちの場合)
- 年金証書など年金の受給額がわかる書類
- マイナンバーが確認できる書類、本人確認書類
Step3: 申請書の提出
すべての書類が揃ったら、市区町村の窓口に提出します。
Step4: 審査・認定
提出された書類をもとに、自治体が審査を行います。審査期間は1〜2ヶ月程度が目安です。
Step5: 受給開始
認定されると、申請した月の翌月分から手当が支給されます。
特別障害給付金の申請フロー
Step1: 窓口で相談・書類の入手
お住まいの市区町村の年金担当窓口、または年金事務所で相談し、請求に必要な書類を受け取ります。
Step2: 必要書類の準備
必要書類は多岐にわたるため、計画的に準備を進めましょう。
- 特別障害給付金請求書
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 障害の原因となった傷病にかかる診断書
- 病歴・就労状況等申立書
- 受診状況等証明書(初診の病院と診断書作成の病院が違う場合)
- 戸籍謄本
- 住民票
- 所得状況届
- (元学生の場合)在学証明書など
- (元被扶養配偶者の場合)配偶者の年金加入期間がわかる書類など
Step3: 請求書の提出
市区町村の窓口に請求書を提出します。書類が全て揃っていなくても、まず請求書を提出することが重要です。支給が決定した場合、請求書を提出した月の翌月分から支給されるためです。
Step4: 審査・認定
書類は日本年金機構に送付され、専門的な審査が行われます。審査には数ヶ月かかることもあります。
Step5: 受給開始
認定されると、支給決定通知書が届き、その後給付金の支払いが開始されます。
受給のための重要ポイントと注意点
申請をスムーズに進め、確実に受給するために知っておきたいポイントをまとめました。
ポイント1:「初診日」の証明が最重要(特別障害給付金)
特別障害給付金の審査では、「障害の原因となった病気やケガで、初めて医師の診療を受けた日(初診日)」が、国民年金の任意加入期間中にあることを証明する必要があります。カルテが破棄されているなど証明が難しい場合もありますが、当時の状況を証明できる参考資料などを諦めずに探すことが重要です。
ポイント2:診断書の記載内容が審査を左右する
どちらの制度も、提出された診断書の内容に基づいて障害の程度が審査されます。医師に診断書を依頼する際は、日常生活にどのような支障が出ているかを具体的に伝え、制度の要件に沿った正確な内容を記載してもらうことが不可欠です。
ポイント3:毎年「現況届」の提出が必要(特別障害者手当)
特別障害者手当を受給している方は、毎年8月に「現況届」を提出する必要があります。これは、引き続き受給資格があるかを確認するための手続きです。この届出を忘れると手当の支給が差し止められる可能性があるため、必ず期限内に提出しましょう。
よくある質問(FAQ)
- Q1: 障害者手帳がないと申請できませんか?
- A1: 障害者手帳の有無は必須要件ではありません。手帳を持っていなくても、医師の診断書によって制度の定める障害の状態にあると認められれば、申請・受給が可能です。
- Q2: 施設に入所したり、長期入院した場合はどうなりますか?
- A2: 特別障害者手当は、障害者支援施設などに入所した場合や、病院に3ヶ月を超えて入院した場合は受給資格がなくなります。特別障害給付金には、このような施設入所や入院による支給制限はありません。
- Q3: 申請から受給までどれくらいかかりますか?
- A3: 特別障害者手当は1〜2ヶ月程度が目安です。特別障害給付金は、日本年金機構での審査となり、初診日の確認などに時間がかかるケースも多いため、3ヶ月以上、場合によっては半年以上かかることもあります。
- Q4: 他の年金(老齢年金など)をもらっていても受給できますか?
- A4: 特別障害者手当は、公的年金を受給していても、他の要件を満たせば受給できます。特別障害給付金は、老齢年金など他の年金を受給している場合、その年金額に応じて給付額が調整(減額)されることがあります。
- Q5: 65歳を過ぎてしまいましたが、もう申請できませんか?
- A5: 特別障害給付金は、原則65歳になる前に請求が必要ですが、過去に遡って障害状態を証明できる場合など、経過措置として65歳以降でも請求が認められるケースがあります。諦めずに一度窓口で相談してみることをお勧めします。
まとめ:自分に合った制度を正しく理解し、申請しましょう
今回は、「特別障害者手当」と「特別障害給付金」という2つの重要な制度について解説しました。改めてポイントを整理します。
- 特別障害者手当:在宅で常時介護が必要な20歳以上の重度障害者のための手当。
- 特別障害給付金:国民年金に未加入だったために障害年金を受けられない方のための救済的な給付金。
どちらの制度も、対象となる方の生活を支えるための大切なセーフティネットです。ご自身やご家族が「もしかしたら対象かもしれない」と感じたら、まずは一人で悩まず、お住まいの市区町村の担当窓口や年金事務所に相談することから始めてみましょう。専門の職員が、あなたの状況に合わせたアドバイスをしてくれます。
【相談窓口】
・特別障害者手当について:お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口
・特別障害給付金について:お住まいの市区町村の年金担当窓口、または、お近くの年金事務所