「24時間、片時も目が離せない」「自分の時間が全くない」…医療的ケアを必要とするお子様を育てるご家族は、絶え間ない緊張と大きな身体的・精神的負担を抱えていらっしゃることでしょう。そんなご家族の心と体を少しでも休めていただくため、江戸川区では「医療的ケア児養育者支援事業」を実施しています。この事業は、区が委託した病院でお子様を一時的にお預かりする、いわゆるレスパイトケア(休息)のための制度です。この記事では、江戸川区の医療的ケア児養育者支援事業について、対象者や利用方法、申請のポイントまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。この制度を活用し、ご家族が安心して休息を取れる時間を確保するための一助となれば幸いです。

江戸川区 医療的ケア児養育者支援事業とは?

制度の目的と背景

医学の進歩に伴い、日常的に人工呼吸器や経管栄養などの医療的ケアを必要とするお子様(医療的ケア児)は年々増加しています。厚生労働省の調査によれば、その数は全国で2万人近くにのぼると推計されており、そのケアは主に家族が担っているのが現状です。24時間体制でのケアは、ご家族にとって計り知れない負担となります。実際に、令和元年度の調査では、多くのご家族が「ひと時も離れられない」「自分の時間がない」といった悩みを抱えていることが明らかになっています。
江戸川区の「医療的ケア児養育者支援事業」は、こうした背景を踏まえ、お子様の健康を守ると同時に、介護を行うご家族の負担を軽減することを目的としています。ご家族が休息を取ることで心身のリフレッシュを図り、再び笑顔でお子様と向き合えるよう支援する、非常に重要な制度です。

ポイント:この事業は、単なる預かりサービスではありません。看護師などが常駐する病院で、入院と同様の環境でお子様を安全にお預かりすることで、ご家族が安心して自分のための時間を確保できるようにするものです。

事業の概要

本事業の概要を以下の表にまとめました。

項目 内容
正式名称 医療的ケア児養育者支援事業
実施組織 江戸川区(福祉部 障害者福祉課 権利擁護係)
事業内容 区と委託契約した東京都内の病院が、医療的ケア児を一時的にお預かりします(レスパイトケア)。その他、医療的ケアの知識・技術習得のための訓練や相談も受けられます。
利用日数 年間利用上限:14日
1回あたりの最大利用日数:6泊7日
利用者負担 食事代等の経費、および診療に関する経費は利用者負担となります。

対象者・利用条件

本事業を利用するには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。ただし、要件を満たしていても、お子様の健康状態や病院の受け入れ状況によっては利用できない場合もありますので、まずはご相談ください。

  • 要件1:江戸川区民であり、年齢が15歳未満であること
  • 要件2:身体状況が寝たきりであること
  • 要件3:下記のいずれかの医療的ケアを必要とすること

対象となる医療的ケアの詳細

以下のいずれかのケアを日常的に必要とするお子様が対象です。

  • ア. 人工呼吸器管理(カフマシン、NIPPV、CPAP等を含む)
  • イ. 気管内挿管又は気管切開
  • ウ. 鼻咽頭エアウェイ
  • エ. 酸素吸入
  • オ. 1日につき6回以上の頻回の吸引
  • カ. 1日につき6回以上又は継続したネブライザーの使用
  • キ. 中心静脈栄養(IVH)
  • ク. 経管栄養(経鼻・胃ろう含む)
  • ケ. 腸ろう・腸管栄養
  • コ. 継続する透析(腹膜灌流を含む)
  • サ. 1日につき3回以上の定期導尿(人工膀胱を含む)
  • シ. 人工肛門

申請方法とご利用の流れ

ご利用までの流れは、大きく分けて5つのステップになります。スムーズに進めるためにも、全体の流れを把握しておきましょう。

Step 1:事前相談(電話)

まずは、江戸川区の担当窓口に電話で相談します。この段階で、お子様の状況や利用希望時期などを伝えます。

  • 受付期間:利用したい月の3か月前の1日から受付開始(1日が閉庁日の場合は翌開庁日)
  • 連絡先:江戸川区福祉部障害者福祉課権利擁護係(電話:03-5662-1993)

Step 2:申請書類の提出

相談後、必要な書類を準備して提出します。申請方法は、郵送、窓口持参、電子申請(ぴったりサービス)から選べます。

【重要】必要書類リスト
– 医療的ケア児養育者支援事業申請書
– 診療情報提供書(江戸川区宛)※かかりつけ医に作成を依頼
– 本人状況票

書類は江戸川区の公式サイトからダウンロードできます。記入例も用意されているので、参考にしながら正確に記入しましょう。

Step 3:利用決定

書類審査後、利用が決定すると自宅に「江戸川区医療的ケア児養育者支援事業利用決定通知書」が郵送されます。

Step 4:病院への受診予約と事前準備

決定通知書が届いたら、記載されている方法に従って、ご自身で病院へ受診の予約をします。予約後、再度かかりつけ医に「診療情報提供書(病院宛)」の作成を依頼し、事前に病院へ送付する必要があります。

初めて利用する方は、安全にお預かりするために事前の受診が必須です。2回目以降でも、お子様の状況によっては受診が必要になる場合があります。

スムーズに利用するためのポイント

この事業を円滑に利用するためには、いくつかのポイントがあります。

  • かかりつけ医との密な連携:申請時と利用決定後の2回、「診療情報提供書」の作成をかかりつけ医にお願いする必要があります。事業の利用を検討していることを事前に医師に伝え、協力を得られるようにしておきましょう。
  • 早めの相談と計画:利用したい時期が決まっている場合、3か月前から受付が開始されるため、早めに計画を立てて相談することが重要です。特に連休や夏休みなどは希望が集中する可能性があります。
  • 正確な情報提供:「本人状況票」には、お子様の普段の様子やケアの方法、注意すべき点などをできるだけ詳しく記入してください。正確な情報が、病院側での安全なケアにつながります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 江戸川区に引っ越してきたばかりでも利用できますか?

A1. はい、申請時点で江戸川区にお住まい(住民登録がある)であれば対象となります。

Q2. 利用料金はどのくらいかかりますか?

A2. 病院での預かりサービス自体の利用料はかかりませんが、利用中の食事代やおむつ代などの実費、および治療や検査などを行った場合の医療費(健康保険の自己負担分)は利用者負担となります。具体的な金額は病院やお子様の状況によって異なります。

Q3. 緊急の場合、すぐに預かってもらえますか?

A3. この事業は事前申請と病院との調整が必要なため、緊急時の即日利用は難しいです。冠婚葬祭やご家族の入院など、予定が分かっている場合は、なるべく早くご相談ください。

Q4. 預かり先の病院は選べますか?

A4. 預かり先は、江戸川区が委託契約を結んでいる東京都内の病院となります。利用決定時に病院が指定されますので、原則として利用者が選ぶことはできません。

Q5. 毎年申請が必要ですか?

A5. 利用決定は年度ごとに有効です。年度が変わって利用を希望する場合は、再度申請が必要になる可能性があります。詳しくは担当窓口にご確認ください。

まとめ:ご家族の休息のために、まずは相談から

江戸川区の「医療的ケア児養育者支援事業」は、日々奮闘されているご家族にとって、心強い味方となる制度です。専門的な知識を持つスタッフがいる病院で安心してお子様を預けられる時間は、何物にも代えがたい休息の時間となるでしょう。

本事業の重要ポイント
✔ 医療的ケア児を育てる家族の負担軽減が目的のレスパイト事業
✔ 年間最大14日間、病院で安全にお子さんを預かってもらえる
✔ 利用には事前相談と申請が必要
✔ かかりつけ医との連携がスムーズな利用の鍵

「うちの子は対象になるのかな?」「手続きが難しそう」と感じるかもしれませんが、まずは一歩踏み出して、担当窓口に電話で相談してみてください。専門の職員が丁寧に案内してくれます。ご自身の心と体の健康を保つことも、お子様にとって非常に大切なことです。この制度を上手に活用し、少しでも安らげる時間を作ってください。

お問い合わせ先

  • 部署名:江戸川区福祉部障害者福祉課権利擁護係
  • 所在地:〒132-8501 東京都江戸川区中央1丁目4番地1号
  • 電話番号:03-5662-1993